新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年6月から導入された通所介護等の報酬特例では、実際にサービスを提供した時間の報酬よりも2区分上位の報酬を算定できるという内容でした(2021年3月末で廃止)。2021年度は、実際に利用者数が減少したかどうかに焦点をあてた、新たな方策がスタートしています。
対象サービスは、通所介護、通所リハ、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護。2021年の報酬特例の詳細を確認しておきましょう。
新型コロナウイルス感染症等の影響により利用者数が減少した場合に、臨時的な利用者数の減少による利用者1人あたりの経費の増加に対応し、状況に即した安定的なサービス提供を可能とする観点から、2021年度も引き続き、報酬特例が設けられています。
具体的には、サービス、事業所規模区分別の報酬区分に応じて、以下のいずれかによる評価を行います。
・基本報酬への3%の加算
・規模区分の特例(より小さい事業所規模別の報酬区分を適用することができる)
・基本報酬への3%の加算通所介護(通常規模型)、通所リハ(通常規模型)、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護
・基本報酬への3%の加算または規模区分の特例通所介護(大規模型Ⅰ、大規模型Ⅱ)、通所リハ(大規模型Ⅰ、大規模型Ⅱ)
利用延人員数の減少が生じた月の利用延人員数が、前年度の1月当たりの平均利用延人員数から5%以上減少している場合に、基本報酬に3%相当の単位数を加算して算定できます(届出の翌月から最大3か月間)。
・利用者減に対応するための経営改善に時間を要するなど、特別の事情があると認められる場合は、算定終了月の翌月から3か月以内に限り延長可能。
・延長を申請する場合も、算定基礎は加算算定の申請を行った際と同一のものとする。
・加算算定の期間内または加算延長の期間内に、月の利用延人員数が算定基礎から5%以上減少していなかった場合は、当該月の翌月をもって算定終了となる。
・加算分は区分支給限度基準額の算定に含めない。
利用延人員数の減が生じた月の利用延人員数が、より小さい事業所規模別の報酬区分の利用延人員数と同等となった場合に、より小さい事業所規模別の報酬区分を適用できます。
例えば、通所介護の大規模型Ⅱを算定する事業所の場合、利用延人員数が900人以下となった場合は大規模型Ⅰの報酬区分を、利用延人員数が750人以下となった場合は通常規模型の報酬区分を算定することができます。
・通所介護(大規模型Ⅰ、Ⅱ)、通所リハ(大規模型Ⅰ、Ⅱ)において、「3%加算」と「規模区分の特例」のいずれの特例にも適合する場合は、「規模区分の特例」が適用となる。
・特例の適用期間内に、月の利用延人員数が、より小さい事業所規模別の報酬区分の利用延人員数を超え、かつ、特例適用前の事業所規模別の報酬区分の利用延人員数まで戻った場合には、当該月の翌月をもって特例の適用は終了となる。
・2021年6月サービス提供分から適用開始(6月に適用を受けるには5月15日までに届出を行う必要あり。以後は減少月の翌月15日までに届出を行い、翌々月から適用)
通所介護、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護は、以下通知の第2の7(4)・(5)を準用、通所リハビリテーションは以下通知の第2の8(2)・(8)を準用して算定します。
「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月1日老企第36号)
具体的には、下記Excelファイルに各月の利用延人員数を入力して、計算することができます。
届出様式例・参考計算シート(厚労省ダウンロード資料)
利用延人員数が5%以上減少している場合は、減少月の翌月15日までに、都道府県等に加算算定届を提出します。届出の翌月(加算適用開始月)から3か月間、加算の算定が可能です。届出た月から算定終了月まで、毎月の利用延人員数を算出して、確認する必要があります。
加算算定終了の前月においてもなお、月の利用延人員数が5%以上減少している場合には、当該月の翌月15日までに都道府県等に加算算定の延長の届出を行うことで、翌月から3か月間、加算算定を延長できます。
加算の算定中(延長の場合含む)に利用延人員数が回復した場合は、その翌月に届出を行い、届出を行った月をもって適用終了となります。
より小さい事業所規模別の報酬区分の利用延人員数と同等となっている場合は、減少月の翌月15日までに、都道府県等に加算算定届を提出します。届出の翌月(特例適用開始月)から、より小さい事業所規模別の報酬区分で基本報酬を算定することが可能です。届出た月から算定終了月まで、毎月の利用延人員数を算出して、確認する必要があります。
「基本報酬への3%の加算」と違い、3か月間という算定期間の制限はありません。加算の算定中に利用延人員数が回復した場合は、その翌月に届出を行い、届出を行った月をもって適用終了となります。
「感染症又は災害の発生を理由とする通所介護等の介護報酬による評価 届出様式」を使用します。報酬特例適用の届出、各月の利用延人員数の確認、加算算定の延長の届出(3%加算のみ)のいずれにも共通して使用できます。(※利用延人員数の計算シートと同じExcelファイル)
感染症又は災害の発生を理由とする通所介護等の介護報酬による評価 届出様式(厚労省ダウンロード資料)
・届出様式の(1)事業所基本情報、(2)加算算定・特例適用の届出に必要事項を記入
・記入した結果、(2)の「可否」欄に「可」が表示された場合、算定届提出月の15日までに都道府県等に届出様式を提出する
・届出様式を提出した月から算定終了月まで毎月、(3)加算算定後の各月の利用延人員数の確認(3%加算の場合)、もしくは、(5)特例適用後の各月の利用延人員数の確認(規模区分の特例の場合)に必要事項を記入
・記入した結果、それぞれ「可否」欄に「否」が表示された場合は、速やかに都道府県等に届出様式を提出する
・加算算定終了の前月においてもなお、月の利用延人員数が5%以上減少しているか確認
・届出様式の(4)加算算定の延長の届出にその理由を記入し、延長届提出月の15日までに都道府県等に届出様式を提出
Q.新型コロナウイルス感染症については「3%加算」「規模区分の特例」の対象になっているが、現に感染症の影響と想定される利用延人員数の減少が一定以上生じている場合にあっては、減少の具体的な理由は問わないのか。
例:事業所の所在する地域に緊急事態宣言が発令されているか、事業所において感染者が発生したか否か等
対象となる旨を厚生労働省から事務連絡によりお知らせした感染症又は災害については、利用延人員数の減少が生じた具体的な理由は問わない。
Q.各月の利用延人員数及び前年度の1月当たりの平均利用延人員数について、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、都道府県等からの休業の要請を受けた事業所にあっては、休業要請に従って休業した期間を、留意事項通知の「正月等の特別な期間(※)」として取り扱うことはできるか。
※:一月間(暦月)、正月等の特別な期間を除いて毎日事業を実施した月における平均利用延人員数については、当該月の平均利用延人員数に七分の六を乗じた数によるものとする。
留意事項通知の「正月等の特別な期間」においては、ほとんど全ての事業所がサービス提供を行っていないものと解されるためであり、この趣旨を鑑みれば、都道府県等からの休業の要請を受け、これに従って休業した期間や、自主的に休業した期間を「正月等の特別な期間」として取り扱うことはできない。
Q.各月の利用延人員数及び前年度の1月当たりの平均利用延人員数は、認知症対応型通所介護については、留意事項通知第2の7(4)及び(5)を準用し算定することとなっているが、指定認知症対応型通所介事業者が指定介護予防認知症対応型通所介護事業者の指定をあわせて受けている場合であって両事業を一体的に実施している場合、指定介護予防認知症対応型通所介護事業所における平均利用延人員数を含むのか。
貴見のとおり。
Q.「3%加算」の加算算定延長の届出について、加算算定の延長を希望する理由を添えて届出を行うこととなっているが、どのような理由があげられている場合に加算算定延長を認めることとすればよいのか。都道府県・市町村において、届出を行った通所介護事業所等の運営状況等を鑑み、判断することとして差し支えないのか。
通所介護事業所等から、利用延人員数の減少に対応するための経営改善に時間を要すること等の理由が提示された場合においては、加算算定の延長を認めることとして差し支えない。
Q.規模区分の特例適用の届出は年度内に1度しか行うことができないのか。
・利用延人員数の減少が生じた場合においては、感染症又は災害が別事由であるか否かに関わらず、年度内に何度でも規模区分の特例適用の届出及びその適用を行うことが可能である。
・同一のサービス提供月において、3%加算の算定と規模区分の特例の適用の両方を行うことはできないが、同一年度内に3%加算の算定と規模区分の特例の適用の両方を行うことは可能である。
Q.各事業所における3%加算算定・規模区分の特例の適用に係る届出様式(例)が示されているが、届出にあたっては必ずこの様式(例)を使用させなければならないのか。都道府県や市町村において独自の様式を作成することは可能か。
・今回の取扱いについて分かりやすく伝える観点や事務手続きの簡素化を図る観点から示したものであり、できる限り届出様式(例)を活用してほしい。
・届出様式(例)に加えて通所介護事業所等からなされた届出が適正なものであるか等を判断するために必要な書類等を求めることは差し支えない。
Q.届出について、利用延人員数の減少が生じた月の翌月15日までに届出を行うこととされているが、同日までに届出がなされなかった場合、加算算定や特例の適用を行うことはできないのか。
適用はできない。なお、2021年2月の利用延人員数の減少に係る届出については、2021年4月1日までの届出を想定しているが、この届出については新型コロナウイルス感染症による利用延人員数の減少に対応するものであることから、都道府県等はこの趣旨を鑑み、届出の締切について柔軟に対応してほしい。
Q.「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第12報)」による特例を適用した場合、1月当たりの平均利用延人員数を算定するにあたっては、第12報における取扱いの適用後の報酬区分ではなく、実際に提供したサービス時間の報酬区分に基づき行うのか。
Q.新型コロナウイルス感染症の影響による他の事業所の休業やサービス縮小等に伴って、当該事業所の利用者を臨時的に受け入れた結果、利用者数が増加した事業所もある。この場合、各月の利用延人員数及び前年度1月当たりの平均利用延人員数の算定にあたり、やむを得ない理由により受け入れた利用者について、その利用者を明確に区分した上で、平均利用延人員数に含まないこととしても差し支えないか。
・差し支えない。
・なお、新型コロナウイルス感染症の影響により休業やサービス縮小等を行った事業所の利用者を臨時的に受け入れた後、当該事業所の休業やサービス縮小等が終了してもなお受け入れを行った利用者が3%加算の算定や規模区分の特例を行う事業所を利用し続けている場合、当該利用者については、平均利用延人員数に含めることとする。
・留意事項通知による事業所規模区分の算定にあたっても、同様の取扱いとする。
Q.3%加算や規模区分の特例を適用するにあたり、通所介護事業所等において利用者又はその家族への説明や同意の取得を行う必要はあるか。また、利用者又はその家族への説明や同意の取得が必要な場合、利用者又はその家族への説明を行ったことや、利用者又はその家族から同意を受けたことを記録する必要はあるか。
通所介護事業所等が利用者またはその家族への説明や同意の取得を行う必要はない。なお、介護支援専門員が居宅サービス計画の原案の内容(サービス内容、サービス単位/金額等)を利用者またはその家族に説明し同意を得ることは必要である。
Q.3%加算や規模区分の特例を適用する場合は、通所介護事業所等を利用する全ての利用者に対し適用する必要があるのか。
当該通所介護事業所等を利用する全ての利用者に対し適用することが適当である。
Q.第一号通所事業には、3%加算は設けられていないのか。
貴見のとおり。なお、通所介護事業等と第一号通所介護事業が一体的に実施されている場合にあっては、第一号通所事業の平均利用延人員数を含むものとする。
Q.3%加算算定の届出は年度内に1度しか行うことができないのか。
感染症や災害(3%加算の対象となる旨を厚生労働省から事務連絡によりお知らせしたものに限る)によって利用延人員数の減少が生じた場合にあっては、基本的に一度3%加算を算定した際とは別の感染症や災害を事由とする場合にのみ、再度3% 加算を算定することが可能である。
Q.3%加算や規模区分の特例の対象となる感染症又は災害について、これが発生した場合、対象となる旨が厚生労働省より事務連絡で示されることとなっているが、対象となった後、同感染症又は災害による3%加算や規模区分の特例が終了する場合も事務連絡により示されるのか。
・新型コロナウイルス感染症による3%加算や規模区分の特例にかかる取扱いは、今後の感染状況等を踏まえ、厚生労働省にて終期を検討することとしており、追って事務連絡によりお示しする。
・なお、災害については、これによる影響が継続する期間等は地域によって異なることも想定されることから、特例の終期については、厚生労働省から考え方をお示しする、又は基本的に都道府県・市町村にて判断する等、その在り方については引き続き検討を行った上で、お示ししていくこととする。
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図引用:第199回社保審・介護給付費分科会「資料1令和3年度介護報酬改定の主な事項」、介護保険最新情報Vol.937より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。