2022年度の診療報酬改定に向けた議論では、在宅医療に関する改定項目の方向性が示されつつあります。訪問看護事業所や介護事業者としては、高齢者の日常診療を担っている医療機関とも、これまで以上の連携が必要になる可能性があることを押さえておきましょう。また、医療と介護の連携では、入退院のタイミングだけでなく、外来から在宅への移行の際の連携も新たな論点として着目されています。近年の施策を簡単に振り返りつつ、最新の動向を紹介します。
近年の医療政策の流れを見ると、社会保障費の膨張を押さえ、人口減に即した医療提供体制を構築していくために病床の再編や縮小が進められています。入院患者の受け入れ先が減る分、在宅医療の担い手や高い医療的ニーズにも応え得る介護施設・高齢者住宅、在宅系サービス事業所、訪問看護事業所などの役割が増していくことになります。
厚生労働省はこうした前提に立ち、関連する法律などの改正や都道府県の計画の整備などを進めてきました。
【画像】第490回中央社会保険医療協議会総会(2021年10月13日)資料より抜粋(以下・同様)
在宅医療に関する施策では、2018年度診療報酬改定で、複数の医療機関からの訪問診療が認められました。在宅で療養する患者の増加に伴い、多様化するニーズへ応じるための対応です。
また、同改定では、在宅医療を積極的に行う在宅療養支援診療所(24時間の往診体制や看取りの実績報告などの要件を満たす診療所。以下・在支診)や病院(在宅療養支援病院)以外にも、高齢者などの日常診療を担っているかかりつけ医が、在宅医療へ参入・協力しやすくなるように、訪問診療を行った場合の報酬評価が上乗せされました。この際、かかりつけ医が単独で24時間体制を構築するのが難しい場合でも、外部との連携によって訪問診療が行われるよう、加算も創設されています(「継続診療加算」)。
これらの施策は、一部の診療所に訪問診療の負担を集中させるのでなく、在宅ニーズを面で支える仕組みを整備しようという試みです。
背景に、24時間往診に応じる体制を整備するという高いハードルゆえに、在支診の届出数が十分に伸びてこなかったという事情があります。
2022年度診療報酬改定に向けた議論が進む中央社会保険医療協議会では、継続診療加算を算定するための要件を緩和することが厚労省によって提案されました。在宅医療の質を保ちながらも、裾野を広げようとする方向性は、今改定でも踏襲されそうです。
しかし、上の資料の通り、同加算も十分に普及しているとはいえません。
その理由について厚労省は、外部との連携の上であっても、「24時間の連絡・往診体制」を構築するという要件のハードルがまだまだ高いことにあると受け止めています。
そこで今回提案されたのが、24時間の連絡・往診体制を構築するという要件の緩和です。今後の検討では、要件緩和の具体的な内容について、議論することになりそうです。
高齢者が在宅へ移行していく流れに関しては、外来を担当する医師と在宅医の連携の在り方も検討されました。
患者が在宅医療に移行して主治医が交代する場合、医師・医療機関同士の連携がとれているかどうかで患者の状態や療養環境に影響を及ぼします。
連携が必要な項目としては、「介護保険主治医意見書」や「ケアマネジャーとの連携」、「地域包括支援センターとの」連携が示されています。
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