厚生労働省は9月4日に社会保障審議会介護給付費分科会をオンラインで開催。報酬改定に向けて、分野横断テーマとしてこれまで挙げてきた『地域包括ケアシステムの推進』『自立支援・重度化防止の推進』『介護人材の確保・介護現場の革新』『制度の安定性・持続可能性の確保』に、新型コロナウィルスの影響や昨今の災害の状況を踏まえて『感染症や災害への対応力強化』を加えて議論を進めることになりました。
【論点①】
『今般の新型コロナウイルス感染症や、昨今の自然災害における介護サービスの被災状況等も踏まえ、感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に対して必要な介護サービスが安定的・継続的に提供される体制を構築していくため、日頃からの発生時に備えた取組や発生時における業務継続に向けた取組を推進する観点から、現行の運営基準等も踏まえて、どのような方策が考えられるか。』
これに対して委員からは、「現行で運営基準に明記されていないサービス種別では、運営基準への記載を考えるべき」、「報酬で評価するなどを行わないと事業者の負担が大きくなる」、「クラスター発生時の専門家の派遣の受け入れ体制、感染防護用品の調達、応援体制など地域で対応する体制構築が必要」などの意見が出ています。
【論点②】
『各事業所において、災害や感染症が発生した場合でも業務を継続していくための業務継続計画(BCP)の策定を進めていくために、どのような方策が考えられるか。』
これに対して委員からは、「BCPの作成を推進するためには、運営基準等で努力義務等として定めることが有効」「作成済みと回答した事業所が少ない中で、費用をはじめ専門家の支援など多面的な補助が必要」などの意見が出ています。
【論点③】
『災害発生時や新型コロナウイルス感染症への対応における介護報酬の臨時的な取扱いについて、災害や感染症への対応力強化や生産性向上等の観点から、ICTの活用をはじめ、平時からの取扱いとすべきものについて、どのように考えるか。』
これに対して委員からは、「通所やショートステイの上位区分の算定は、サービスの対価ではないことから、公費での支援を検討してほしい」、「臨時的な取扱いに関しては、効果を検証して報酬改定につなげるべき」などの意見が出ています。
『地域の特性に応じながら、都市部や中山間地域等のいかんにかかわらず、各地域で質の確保された必要なサービスを確保していく観点から、地方からの提案も踏まえつつ、どのような対応が考えられるか。』
これに対して委員からは、「訪問系サービスの移動時間を勘案した報酬体系を検討してはどうか」、「過疎地においては、ロボットやICTを活用した場合の人員基準の緩和を考えるべき」、「現行のサービスごとや事業所ごとに定められている基準を抜本的に見直すことが必要」、「中山間地域でも事業者が参入でき、継続したサービスが提供できるように経営面、人材確保面での支援が必要」、「将来的な高齢者人口の減少が見込まれる状況で、一定期間の定員超過の受け入れなど、前向きに検討してほしい」などの意見が出ています。
これ以外にも、医療・介護の連携状況や認知症の対応力強化として、BPSDケアプログラムや人材育成に関しての議論も行われています。委員から様々な意見が集まる中、どの議論が制度改正や報酬改定に繋がるのでしょうか。今後も議論の動向に注目しておきましょう。
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年9月9日掲載のものです。
介護経営ドットコムの記事を制作・配信している編集部です。日々、介護事業所を経営する皆さんに役立つ情報を収集し、発信しています。