厚生労働省は11月19日、2021年度では初開催となる第1回介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会を開催しました。新たに介護保険の対象とする福祉用具や住宅改修の種目について、前年度に継続検討となっていた5件の種目のうち、今回は「排泄予測支援機器」を新たな保険給付対象の種目への追加とするかどうかが検討されました。
一定の懸念が示されたものの、検討会としてはデータ収集を継続することを前提に、この機器の購入・在宅での利用を給付対象として認める方向で、後日意見が取りまとめられます。
本記事では新たに示されたエビデンスや構成員からの意見等を含め、検討会での結論や今後のスケジュールについて整理します。
本検討会は、介護保険の給付対象となる福祉用具や住宅改修について、利用者や保険者等の意見や要望を踏まえながら、新たな種目・種類の取り入れや拡充の是非、詳細な内容の検討を行う場です。
近年の論点としては、保険給付の対象となる福祉用具としてIT機器が検討の対象に挙げられています。人手不足が深刻な介護現場での、テクノロジーの活用を想定した動きが進んでいるといえます。
第1回となる本年度検討会では、前年2020年度検討会で継続検討となっていた5種目のうち、「排泄予測支援機器」を新たな保険給付の対象として追加することの是非について検討が進められました。エビデンス不足が指摘された前回の検討結果を受け、厚労省は追加検証に関する調査結果等、新たなエビデンスを提示。構成員からは多様な意見が寄せられました。
19日に検討対象となった「排泄予測支援機器」について、厚労省は今回、認知症対応型共同生活介護(以下、認知症グループホーム)における実証結果を新たなエビデンスデータとして提示しました。
認知症グループホームの利用者14名を対象に、7日間(トイレ誘導が可能な日中)に本機器を装着したうえで、装着前後の排泄記録を比較したデータ(排尿数、失禁数、誤報率)をまとめています。
検証結果として、機器が排泄を通知することによって失禁率が減少するなど、有効性が示されました。
【画像】令和3年度第1回介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会資料より
これについて、「介護施設のデータをもって妥当性があると示すのは早計。在宅で同じ効果が出る保証はなく、在宅でのさらなる検証が必要では」(介護老人保健施設竜間之郷の大河内二郎氏)、「示されたデータ内に『誤報率』は書かれているが、『見逃し(失報)』に関する結果は書かれていない。センサー機器を評価する場合のデータ整理時には確認するべき数値では」(産業技術総合研究所の松本吉央氏)など、得られた効果に一定の懸念を示す意見も聞かれましたが、「特に夜間の在宅介護において、こうした機器の活用によって在宅生活の継続は進めば、地域包括ケアの限界点を高めることにつながる」(一般社団法人日本介護支援専門員協会の濱田和則氏)との前向きな意見や、「購入品目である以上、在宅で使い続けられることが必要。そのためにも、お試し利用や購入後の不具合を受けた一定期間の回収対応など、条件をつける事が重要では」(横浜市総合リハビリテーションセンターの伊藤利之氏)など、今後への期待を込めた意見も聞かれました。
また、一般社団法人全国福祉用具専門相談員協会の岩元文雄氏からは「介護者であるご家族が納得して利用できるよう、導入までのプロセスについて、実際のシーンを想定したフローチャートやチェックリストを充実させてはどうか」と、現場での使用を想定した詳細部分に関しても意見が寄せられました。
構成員からの多様な意見を踏まえ、検討会としては、排泄予測支援機器を新たな保険給付の対象へ追加する方針を定め、後日取りまとめられる運びとなりました。
一方で、実際の現場で対応が求められる福祉用具専門相談員に対するサポートの充実、当該機器の適応となる利用者像や適用判断フローの明確化など、細部をより具体化させることが課題となります。
厚労省は今後のスケジュールについて、後日同検討会の意見を取りまとめるとともに、継続検討となっている他4件の種目に関しても、エビデンスを整理次第、評価検討を実施する旨を示しました。
今年度中に第2回検討会の開催が予定されており、最新の動向について今後も継続して紹介してまいります。
*関連ページ令和3年度第1回介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会に関する資料
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。