11月26日に開かれた第194回社保審・介護給付費分科会にて、2021年度の介護報酬改定に向けた具体的な論点と対応案が示されました。本記事では、介護保険施設における食費・居住費の基準費用額に関する論点と、各サービスにおける人件費割合に関する検討の方向性についてお伝えします。
過去の分科会の議論で、介護保険施設における食事の基準費用額は、事業継続を脅かす要因の1つとの意見が上がりました。現行では食費・居住費について、利用者負担第1~第3段階の方を対象に、所得に応じた負担限度額を設定しています。この負担限度額と基準費用額との差額を介護保険から「特定入所者介護サービス費」として給付する仕組みを採用しています。
一方で、食材料費や人件費の高騰など、実態のコストが反映されていないことなどが問題視されており、現行の基準費用額の見直しの必要性が高まっています。
2019年度改定において実施した、消費税率引上げによる影響分への上乗せでは、上乗せ以降の実態を把握したうえで対応を検討する方針が示されてきました。
今回、厚労省は、2020年度介護事業経営実態調査による平均的な費用額との差の状況を踏まえ、食費・居住費の基準費用額に関して、利用者負担への影響を考慮しつつ必要な対応を検討していくという方針を提示しました。
本分科会では各サービスの人件費割合(地域差を勘案する費用の範囲)の在り方についても議題となりました。人件費割合は、介護事業経営実態調査を特別集計した人件費割合に基づき、割合の区分(70%、55%、45%)を設定しています。人件費割合が上位区分水準を超える場合には上位区分へ変更、下位区分水準を下回る場合には下位区分へ変更する仕組みになっています。
こうした人件費割合について、厚労省は財政中立を原則としつつ、引き続き継続的に把握を進める方向性を示しました。あわせて、地域差を勘案する人件費の範囲に「派遣委託費(派遣により基準の人員を確保している費用)」を含めることや、処遇改善加算・特別処遇改善加算による影響を除くこと、安定的な人件費の把握や区分移動のルール設定についても、引き続き検討を進めていきたいという方針を提示しました。
介護現場に即した報酬改定に向け、今後も方向性の検討や実態把握へ向けた取り組みの議論が進みます。
引用:第194回社保審・介護給付費分科会「その他の事項」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。