1月18日に第199回社保審・介護給付費分科会が開催され、2021年度介護報酬改定の単位数など、改定案の内容が明らかになりました。【通所介護】の介護報酬改定について、単位数や算定要件の詳細を一覧でお知らせします。
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目次
- 基本報酬
- 新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価
- 事業所規模別の報酬特例
- 区分支給限度基準額の計算方法の見直し
- 入浴介助加算の見直し
- 個別機能訓練加算の見直し
- 生活機能向上連携加算の見直し
- 介護職員等の口腔スクリーニングの実施を評価する新加算
- 口腔機能向上加算に新区分
- 栄養ケア・マネジメントの取組を強化する新加算
- サービス提供体制強化加算の見直し
- ADL維持等加算の見直し
- 科学的介護推進体制加算の新設
- 訪問介護、通院等乗降介助の見直しに伴う減算の適用
- 認知症加算の要件見直し
- 介護職員等特定処遇改善加算の見直し
- 職場環境等要件の見直し
- 介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止
基本報酬
※いずれも所要時間7時間以上8時間未満の場合
通常規模型通所介護費
要介護1:現行 648単位/月 ⇒ 改定後 655単位/月
要介護2:現行 765単位/月 ⇒ 改定後 773単位/月
要介護3:現行 887単位/月 ⇒ 改定後 896単位/月
要介護4:現行 1,008単位/月 ⇒ 改定後 1,018単位/月
要介護5:現行 1,130単位/月 ⇒ 改定後 1,142単位/月
大規模型通所介護費Ⅰ
要介護1:現行 620単位/月 ⇒ 改定後 626単位/月
要介護2:現行 733単位/月 ⇒ 改定後 740単位/月
要介護3:現行 848単位/月 ⇒ 改定後 857単位/月
要介護4:現行 965単位/月 ⇒ 改定後 975単位/月
要介護5:現行 1,081単位/月 ⇒ 改定後 1,092単位/月
大規模型通所介護費Ⅱ
要介護1:現行 598単位/月 ⇒ 改定後 604単位/月
要介護2:現行 706単位/月 ⇒ 改定後 713単位/月
要介護3:現行 818単位/月 ⇒ 改定後 826単位/月
要介護4:現行 931単位/月 ⇒ 改定後 941単位/月
要介護5:現行 1,043単位/月 ⇒ 改定後 1,054単位/月
新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価
新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として、全てのサービスについて、2021年4月~9月末までの間、基本報酬に0.1%上乗せとなります。
事業所規模別の報酬特例
感染症や災害の影響により利用者数が減少した場合に、状況に即した安定的なサービス提供を可能とする観点から、以下の見直しが実施されます。
①より小さい規模区分がある大規模型について、事業所規模別の報酬区分の決定にあたり、前年度の平均延べ利用者数ではなく、延べ利用者数の減が生じた月の実績を基礎とすることができる
②延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少している場合、3か月間(※1)基本報酬の3%の加算を行う(※2)
※1:利用者減に対応するための経営改善に時間を要するその他の特別の事情があると認められる場合は一回の延長を認める
※2:加算分は区分支給限度基準額の算定に含めない
①②いずれも、利用者減の翌月に届出、翌々月から適用。利用者数の実績が前年度平均等に戻った場合はその翌月に届出、翌々月まで適用となります。
区分支給限度基準額の計算方法の見直し
利用者の公平性の観点から、同一建物減算適用時等の区分支給限度基準額の計算方法の見直しが行われます。
・同一建物減算等の適用を受ける利用者の区分支給限度基準額の管理については、減算の適用前(同一建物に居住する者以外の者に対して行う場合)の単位数を用いる
・大規模型を利用する者の区分支給限度基準額の管理については、通通常規模型の単位数を用いる
入浴介助加算の見直し
利用者の自宅での入浴の自立を図る観点から、個別の入浴計画に基づく入浴介助を新たに評価します。
単位数
<現行>入浴介助加算:50単位/日 ⇒<改定後>入浴介助加算(Ⅰ):40単位/日
入浴介助加算(Ⅱ):55単位/日(新設)
「入浴介助加算(Ⅱ)」の算定要件等
算定要件のうち、加算Ⅰと異なる部分は以下の3点です。加算Ⅰ・Ⅱの併算定はできません。
・医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員等(以下「医師等」)が利用者の居宅を訪問し、浴室での利用者の動作及び浴室の環境を評価する。この際、利用者の居宅の浴室が、利用者自身又は家族等の介助により入浴を行うことが難しい環境にある場合は、訪問した医師等が、介護支援専門員・福祉用具専門相談員と連携し、福祉用具の貸与・購入・住宅改修等の浴室の環境整備に係る助言を行う
・利用者の居宅を訪問した医師等と連携の下で、利用者の身体の状況や訪問により把握した利用者の居宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成する
・入浴計画に基づき、個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境にて、入浴介助を行う
個別機能訓練加算の見直し
より利用者の自立支援等に資する機能訓練の提供を促進する観点から、加算区分や要件の見直しが行われます。
単位数
<現行>個別機能訓練加算(Ⅰ):46単位/日 ⇒<改定後>個別機能訓練加算(Ⅰ)イ:56単位/日
<現行>個別機能訓練加算(Ⅱ):56単位/日 ⇒<改定後>個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ:85単位/日
個別機能訓練加算(Ⅱ):20単位/月(新設)
「個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロ」算定要件等
加算(Ⅰ)イ・ロの算定要件のうち、現行から変更される部分は以下の4点です。イ・ロの併算定はできません。
・機能訓練指導員の配置
加算(Ⅰ)イ:<現行>常勤・専従1名以上配置(サービス提供時間帯を通じて配置)
⇒<改定後>専従1名以上配置(配置時間の定めなし)
加算(Ⅰ)ロ:<現行>専従1名以上配置(配置時間に定めなし)
⇒<改定後>専従1名以上配置(サービス提供時間帯を通じて配置)
※人員欠如減算・定員超過減算を算定している場合は、個別機能訓練加算を算定しない
※イは運営基準上配置を求めている機能訓練指導員により満たすこととして差し支えない。ロはイに加えて専従で1名以上配置する。
・機能訓練項目
利用者の心身の状況に応じて、身体機能及び生活機能の向上を目的とする機能訓練項目を柔軟に設定。訓練項目は複数種類準備し、その選択に当たっては利用者の生活意欲が増進されるよう利用者を援助する。
・訓練の対象者
(イ・ロともに)5人程度以下の小集団又は個別
・訓練の実施者
機能訓練指導員が直接実施(介護職員等が訓練の補助を行うことは妨げない)
「個別機能訓練加算(Ⅱ)」の算定要件等
加算Ⅰの算定要件に加えて、個別機能訓練計画等の内容を厚生労働省に提出し、フィードバックを受けていること(CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用)が求められます。加算Ⅰに上乗せして算定します。(20単位/月)
生活機能向上連携加算の見直し
ICTの活用等により、外部のリハ専門職等が事業所を訪問せずに、利用者の状態を把握・助言する場合の評価区分が新設されます。
生活機能向上連携加算(Ⅰ)…100単位/月(新設)
現行通り、外部のリハ専門職等が事業所を訪問する場合は、「生活機能向上連携加算(Ⅱ)」(200単位/月)が適用されます。単位数の変更はありません。
●留意点
・加算ⅠとⅡの併算定は不可。
・加算Ⅰは3月に1回の算定が限度
介護職員等の口腔スクリーニングの実施を評価する新加算
介護職員等による口腔スクリーニングの実施を評価する観点から、現行の「栄養スクリーニング加算」が見直され、「口腔・栄養スクリーニング加算」が新設されます。
単位数
<現行>栄養スクリーニング加算:5単位/回
⇒<改定後>
口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ):20単位/回(新設)
口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ):5単位/回(新設)
「口腔・栄養スクリーニング加算Ⅰ・Ⅱ」の算定要件等
算定要件は以下①②の2点です。このうち、加算Ⅰは①②のいずれも適合すること、加算Ⅱは①または②のどちらかに適合することが求められます。加算Ⅱは、併算定の関係で加算Ⅰが取得できない場合に限り取得可能です。
① 当該事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の口腔の健康状態について確認を行い、当該利用者の口腔の健康状態に関する情報を、当該利用者を担当する介護支援専門員に提供していること
② 当該事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の栄養状態について確認を行い、当該利用者の栄養状態に関する情報(当該利用者が低栄養状態の場合にあっては、低栄養状態の改善に必要な情報を含む)を、当該利用者を担当する介護支援専門員に提供していること
口腔機能向上加算に新区分
単位数
<現行>口腔機能向上加算:150単位/回 ⇒<改定後>口腔機能向上加算(Ⅰ)変更なし
口腔機能向上加算(Ⅱ)160単位/回(新設)
「口腔機能向上加算(Ⅱ)」の算定要件等
・利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画等の情報を厚生労働省に提出し、口腔機能向上サービスの実施に当たって、当該情報その他口腔衛生の管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること(CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用)
・加算Ⅰ・Ⅱの併算定は不可
・3月以内の期間に限り、1月に2回を限度とする
栄養ケア・マネジメントの取組を強化する新加算
管理栄養士と介護職員等の連携による栄養アセスメントの取り組みを一層強化する観点から、「栄養改善加算」の単位数の見直しと「栄養アセスメント加算」が新設されます。
単位数
<現行>栄養改善加算:150単位/回 ⇒<改定後>200単位/回
栄養アセスメント加算:50単位/月(新設)
「栄養改善加算」の追加要件
栄養改善サービスの提供に当たって、必要に応じ居宅を訪問することを新たに求める
「栄養アセスメント加算」の算定要件等
・当該事業所の従業者、または外部との連携により管理栄養士を1名以上配置していること
・利用者ごとに、管理栄養士、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して栄養アセスメントを実施し、当該利用者又は家族に対して結果を説明し、必要に応じ相談等に対応すること
・利用者ごとの栄養状態等の情報を厚生労働省に提出し、栄養管理の実施に当たって、当該情報その他栄養管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること(CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用)
・口腔・栄養スクリーニング加算Ⅰ、栄養改善加算との併算定は不可
サービス提供体制強化加算の見直し
サービスの質の向上や職員のキャリアアップを推進する観点から、新たな評価区分の新設と区分の統合が行われます。
単位数
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)…22単位/回(新設)
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)…18単位/回
サービス提供体制強化加算(Ⅲ)…6単位/回
算定要件
・加算Ⅰは、介護福祉士が70%以上、または、勤続10年以上の介護福祉士が25%以上のいずれかに該当すること
・加算Ⅱは、介護福祉士が50%以上であること
・加算Ⅲは、介護福祉士が40%以上、または、勤続7年以上の介護福祉士が30%以上のいずれかに該当すること
ADL維持等加算の見直し
単位数
<現行>ADL維持等加算(Ⅰ):3単位/月 ⇒<改定後>30単位/月
<現行>ADL維持等加算(Ⅱ):6単位/月 ⇒<改定後>60単位/月
「ADL維持等加算(Ⅰ)」の算定要件等
①利用者(当該事業所の評価対象利用期間が6月を超える者)の総数が10人以上であること
②利用者全員について、利用開始月と、当該月の翌月から起算して6月目(6月目にサービスの利用がない場合はサービスの利用があった最終月)において、Barthel Indexを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省に提出していること(CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用)
③利用開始月の翌月から起算して6月目の月に測定したADL値から利用開始月に測定したADL値を控除して得た値に、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じて一定の値を加えたADL利得(調整済ADL利得)の上位及び下位それぞれ1割の者を除く評価対象利用者のADL利得を平均して得た値が、1以上であること
「ADL維持等加算(Ⅱ)」の算定要件等
・加算Ⅰの①と②の要件を満たすこと
・評価対象利用者のADL利得を平均して得た値(加算Ⅰの③と同様に算出した値)が2以上であること
加算Ⅰ・Ⅱの併算定はできません。
科学的介護推進体制加算の新設
CHASE・VISITへのデータ提出とフィードバックの活用により、PDCAサイクルの推進とケアの質の向上を図る取り組みを推進する観点から、「科学的介護推進体制加算」が新設されます。
単位数
科学的介護推進体制加算…40単位/月(新設)
算定要件等
・入所者・利用者ごとの、ADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他の入所者の心身の状況等に係る基本的な情報を厚生労働省に提出していること
・サービスの提供に当たって、上記の情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること
なお、2021年度より、CHASE・VISITを一体的に運用するにあたって、科学的介護の理解と浸透を図る観点から、以下の統一した名称が用いられる予定です。
科学的介護情報システム「LIFE(ライフ)」
(Long-term care Information system For Evidence)
訪問介護、通院等乗降介助の見直しに伴う減算の適用
訪問介護の通院等乗降介助について、利用者の負担軽減や利便性向上の観点から、居宅が始点又は終点となる場合の目的地間の移送についても算定が可能となります。
通所介護ではこの見直しに伴い、利用者宅と事業所との間の送迎を行わない場合に減算が適用されます。
認知症加算の要件見直し
介護に関わる職員の認知症対応力を向上させていく観点から、通所介護では人員配置要件について、一部改正されます。
・算定要件の一つである、認知症ケアに関する専門研修(※1)を修了した者の配置について、認知症ケアに関する専門性の高い看護師(※2)を加算の配置要件の対象に加える。
※1:認知症ケアに関する専門研修
・認知症専門ケア加算(Ⅰ)…認知症介護実践リーダー研修
・認知症専門ケア加算(Ⅱ)…認知症介護指導者養成研修
・認知症加算…認知症介護指導者養成研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研修
※2:専門性の高い看護師
・認知症看護認定看護師
・老人看護専門看護師
・精神看護専門看護師
・精神科認定看護師
介護職員等特定処遇改善加算の見直し
小規模事業者を含め事業者がより活用しやすい仕組みとする観点から、平均の賃金改善額の配分ルールについて、以下の見直しが実施されます。
・「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」
⇒「より高くすること」に見直し
つまり、「2倍以上」という制限がなくなり、より柔軟な配分が可能となります。
職場環境等要件の見直し
処遇改善加算や特定処遇改善加算の職場環境等要件について、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、以下の取り組みがより促進されることが求められます。
・職員の新規採用や定着促進に資する取り組み
・職員のキャリアアップに資する取り組み
・両立支援・多様な働き方の推進に資する取り組み
・腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取り組み
・生産性の向上につながる取り組み
・仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取り組み
職場環境等要件に基づく取り組みの実施について、当該年度における取り組みの実施が求められます。
介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止
介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)については、上位区分の算定が進んでいることを踏まえて廃止されます。その際に、2021年3月末時点で同加算を算定している介護サービス事業所については、1年の経過措置期間が設けられます。
引用:第199回社保審・介護給付費分科会「資料1令和3年度介護報酬改定の主な事項」より