11月5日に開かれた第191回社保審・介護給付費分科会にて、認知症への対応力を強化する観点から3つの論点に沿って議論が展開されました。特に認知症専門ケア加算に関しては、対象や資格要件を拡大する方向案が示され、前向きな意見も多く聞かれました。
現行の認知症専門ケア加算は、施設系サービス、グループホーム、短期入所系サービス(2018年改定で追加)が対象となっています。本加算の算定に関して厚労省は「より専門的な介護が提供できるようになった」というポジティブな声とともに「専門研修を修了した者の確保が困難」との調査結果を提示。あわせて、在宅の中重度の要介護者を含めた認知症への対応力を向上させる観点から、訪問系サービスも認知症専門ケア加算の対象とする方向案を示しました。
加えて、認知症ケアの質と人材確保の課題に対し、e-ラーニングの活用等による受講しやすい環境整備の実施を検討。さらに、現行の算定要件「認知症介護指導者養成研修の修了者の配置」を満たす資格要件に、専門性の高い看護師(認知症看護認定看護師、老人看護専門看護師、精神看護専門看護師)を加える検討案が提示されました。
以上の各方向案に対し、本分科会では前向きな意見が多く聞かれたため、今後は提示された方向案に沿って検討が進められる見込みです。
認知症の人の行動・心理症状(BPSD)の予防や対応についても議題となり、緊急時の宿泊ニーズへの対応環境を一層推進する観点から、看多機・小多機を認知症行動・心理症状緊急対応加算の対象とする検討案が示されました。これに関しても、日本看護協会の岡島さおり氏をはじめ、多くの専門家が賛同意見を述べています。
厚労省は、介護職員の6.1%は無資格者であるとの調査資料を提示したうえで、介護に関わるすべての人の認知症対応力を向上させる観点から、「無資格者」の認知症介護基礎研修の受講を義務化する方向案を示しました。
その際、より受講しやすく学習効果の高い研修のあり方として、当該研修すべてをeラーニング化することや、一定の経過措置を設けるなどの具体的な提案が各委員から示されました。
これについて、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究所教授の堀田聰子氏は、「研修を受けることが、認知症のある方とのかかわりや職場で発揮される能力という意味でどれだけアウトカムが上がっているのか、認知症のある方の視点を含めてどのような効果をもたらしているのかを検証していくべき」と提言しました。
引用:第191回社保審・介護給付費分科会「地域包括ケアシステムの推進(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年11月10日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。