2021年度介護報酬改定でLIFE関連加算が創設されなかったサービスで、今後LIFEの活用を通じたPDCAサイクルを推進していくための方法を検討するために実施されたモデル調査の結果がまとまっています。
LIFEの導入によるサービス向上について、訪問介護事業所は70%が「(質の向上に寄与すると)思う・やや思う」と回答したのに対し、訪問看護事業所では33%に留まるなど、サービス種別によって受け止め方が分かれました。また、居宅介護支援事業所では、活用イメージが比較的クリアであるようです。
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2021年(令和3年)度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査結果は、3月17日の社会保障審議会・介護給付費分科会で取りまとめられました。
このうち本稿では、訪問系サービスや居宅介護支援事業所においてLIFEを活用したPDCAサイクルを推進するために実施されたモデル事業の結果を紹介します。
この調査によって示された具体的なユースケースやLIFE導入における課題等について検証した結果が、24年度介護報酬改定に向けた議論の基礎資料となります。
調査対象は以下の通り。21年度改定ではLIFE関連加算の対象にならなかった訪問系サービスおよび居宅介護支援事業所に限定して、アンケートを実施しています。
【画像】第209回社会保障審議会介護給付費分科会(22年3月17日開催)資料1-2より(以下同様)
訪問介護事業所・訪問看護事業所ではまず、科学的介護推進体制加算(通所系・居住系サービス)の項目に沿った評価を実施したうえで、LIFEへデータ入力を実施。
その後、調査研究班が入力データを集計したうえで、事業所フィードバック票と利用者フィードバック票を提供し、各事業所で実際にフィードバック票を活用するまでの一連の流れを実施しています。
居宅介護支援事業所については、各事業所が担当している利用者にサービス提供をしている居宅サービス事業所がLIFEに入力したデータを集計の上、訪問系サービス同様に居宅介護支援事業所でフィードバック票を提供・活用する流れを調査しました。
フィードバック票によるケアの見直し状況についての結果をみていきましょう。
利用者へのアセスメントの課題として「アセスメントに手間がかかる」と回答した事業所が、訪問介護事業所で8件(80%)、訪問看護事業所で7件(78%)と、いずれも最多でした。
【画像】(上):訪問介護事業所、(下):訪問看護事業所
さらに、フィードバック表を活用してケアの見直しをしたかどうかでは、見直しをした事業所の割合が訪問介護で30%に留まり、訪問看護では実施事業所が「なし」となりました。
ケアの見直しの実施有無については同様の傾向を示した両サービス事業所ですが、ケアの見直しを実施しなかった理由としては、訪問介護事業所が「見方が分からない」「見直す必要性は感じたが、見直し方が分からない」との回答が上位を占めたのに対し、訪問看護事業所では「見直しの必要性を感じなかった」との回答が最多となり、若干の違いが読み取れました。
居宅介護支援事業所における調査結果からは、LIFEの活用によってケアマネジメントの展開に役立つと考えられる点として、「利用者の状態や課題を把握しやすくなる」との回答が80%で最多となりました。
実際の変化としては、「目標達成に向けた居宅サービス事業所職員の意識が変わった」との回答が最多であり、23%を占める結果となりました。
訪問系サービスでは厳しい見方があったフィードバック票の活用についても、居宅サービス事業所で「活用できると思わない」との回答はなく、ポジティブな回答が高い割合となりました。
一方で、具体的な課題としては、3〜4割の介護支援専門員が「活用するイメージがわかない」「フィードバック票の見方が分からない」と、フィードバック票の活用方法に関する課題を指摘しています。訪問系サービスでも同様の回答が多く、現場に即した活用方法の共有が課題といえそうです。
3月17日に実施された介護給付費分科会では、多くの委員からLIFE活用や調査結果に関する意見が寄せられました。今後のLIFE活用に期待する声が多数聞かれた中、導入支援や現場レベルでの浸透、事務負担の増加を危惧する声もありました。
このモデル事業に関して、日本医師会常任理事の江澤和彦氏は「今回の調査時点ではまだまだ本来のフィードバックができていない状況。調査中のフィードバックではなかなかPDCAが回しにくい状況だったのでは。走りながら考え、本来のフィードバックへ近づけていく中で、次年度以降の調査結果を注視していくべき」と意見を述べています。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。