厚生労働省は「介護保険最新情報vol.842」で、通所系サービスの介護報酬を上位区分で算定可能にする施策を通知しました。新型コロナウイルス感染症の影響で、通所系サービスの事業継続が困難な状況を背景に、6月1日から適用を開始しています。要件など詳細を確認しておきましょう。
今回通知された施策により、毎月決まった回数に限り、実際にサービスを提供した時間よりも、2区分上位の報酬を算定できるようになりました。例えば、2時間以上3時間未満のサービスを提供した場合、報酬としては4時間以上5時間未満のサービスを提供したものとして算定できます。
2区分上位の報酬を算定するためには、ケアマネジャーと連携の上、利用者から事前の同意を得る必要があります。
また、下記の留意点も通知されています。
・通所介護計画等とケアプランで、サービス提供回数の整合性を図ること
・区分支給限度基準額の取扱いに変更はないこと
・請求にあたって、事業所が作成する介護給付費明細書と、居宅介護支援事業所が作成する給付管理票のそれぞれに反映させること
・訪問・電話によるサービス提供については、本取扱いの対象外(サービス提供回数に訪問・電話によるサービスは含まない。)とすること
・利用者が複数の事業所を利用している場合は、各事業所において、各サービス提供回数を算定基礎として算定を行うこと
上位区分の報酬を算定できる回数については、サービス提供時間をもとに決まります。通所介護の場合は、サービス提供時間によってA群とB群に分けられ、それぞれ上限回数が異なります。
A群とB群の報酬区分を組み合わせてサービスを提供する場合は、サービス提供回数が最も多い報酬区分(回数が同じ場合は時間が長い方の報酬区分)が属する方で、月の算定上限回数を決定し、算定します。
【例:3時間以上4時間未満が3回、7時間以上8時間未満が5回の場合】
①7時間以上8時間未満が属するB群が適用
②合計回数の8回÷3=2.66…(<4回)により、3回が算定上限回数
③7時間以上8時間未満の5回のサービス提供のうち3回分を、2区分上位の9時間以上10時間未満(延長加算)の単位数で算定可能
同じ群の報酬区分を組み合わせてサービスを提供する場合は、サービス提供回数が最も多い報酬区分(回数が同じ場合は時間が長い方の報酬区分)に対して、上位区分の算定が適用されます。
【例:5時間以上6時間未満が5回、6時間以上7時間未満が3回の場合】
①B群が適用
③5時間以上6時間未満の5回のサービス提供のうち3回分を、2区分上位の7時間以上8時間未満の単位数で算定可能
通所リハビリテーションの場合は、サービス提供時間によってA群・B群・C群に分けられ、それぞれ上限回数が異なります。
A群とB群またはB群とC群の報酬区分を組み合わせてサービスを提供する場合は、通所介護と同様、サービス提供回数が最も多い報酬区分(回数が同じ場合は時間が長い方の報酬区分)が属する方で、月の算定上限回数を決定し、算定します。
同じ群の報酬区分を組み合わせてサービス提供する場合も、 サービス提供回数が最も多い報酬区分(回数が同じ場合は時間が長い方の報酬区分)に対して、上位区分の算定が適用されます。
介護保険最新情報 Vol.842(6月1日通知)
Q.令和2年6月1日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第12報)」(以下、「第12 報」という。)において示された通所系サービス事業所・短期入所系サービス事業所における介護報酬の算定の取扱いについては、都道府県等からの休業の要請を受けて休業した事業所や、利用者・職員に感染者が発生した事業所、その他の利用者数の制限や営業時間の短縮等の臨時的な営業を行っている事業所のみに適用されるのか。
A.新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応を適切に評価する観点から、上記事業所のみならず、感染防止対策を徹底してサービスを提供している全ての通所系サービス事業所・短期入所系サービス事業所を対象とすることが可能である。
Q.第12報における取扱いについては、6月サービス提供分より適用となるが、当該取扱いの適用の終了日については、現時点で未定なのか。
A.貴見のとおり。なお、当該取扱いを適用し請求する場合においても、通常の請求と同様、請求時効は2年である。
Q.第12報における取扱いを適用する際には利用者への事前の同意が必要とされているが、
① サービス提供前に同意を得る必要があるのか。
② 利用者への同意取得は、当該取扱いによる介護報酬の算定を行う事業所あるいは居宅介護支援事業所のいずれにより行うのか。
③ 利用者の同意は書面(署名捺印)により行う必要があるか。
A.
① 同意については、サービス提供前に説明を行った上で得ることが望ましいが、サービス提供前に同意を得ていない場合であっても、給付費請求前までに同意を得られれば当該取扱いを適用して差し支えない。(例えば、6月のサービス提供日が、8日・29日である場合、同月の初回サービス提供日である6月8日以前に同意を得る必要はない。)
② 当該取扱いによる介護報酬の算定を行う事業所、居宅介護支援事業所のいずれにより同意取得を行っても差し支えなく、柔軟に対応されたい。なお、当該取扱いを適用した場合でも区分支給限度額は変わらないことから、利用者への説明にあたっては、当該取扱いによる介護報酬の算定を行う事業所と居宅介護支援事業所とが連携の上、他サービスの給付状況を確認しておくこと。
③ 必ずしも書面(署名捺印)による同意確認を得る必要はなく、保険者の判断により柔軟に取り扱われたいが、説明者の氏名、説明内容、説明し同意を得た日時、同意した者の氏名について記録を残しておくこと。 また、当該取扱いを適用する場合には、居宅サービス計画(標準様式第6表、第7表等)に係るサービス内容やサービスコード等の記載の見直しが必要となるが、これらについては、サービス提供後に行っても差し支えない。
Q.第12報による特例を適用した場合、事業所規模による区分を決定するため、1月当たりの平均利用延人員数を算定するにあたっては、第12報における取扱いの適用後の区分ではなく、実際に提供したサービス時間の報酬区分に基づき行うのか。
A.貴見のとおり。
介護保険最新情報 Vol.847(6月15日通知)
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年6月3日掲載のものです。
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