厚生労働省が8月末に公表した2020年度介護保険事業状況報告について、通所介護(デイサービス)や地域密着型通所介護に主眼を置くと、いずれも要支援1〜要介護2の受給者数がおよそ70.0%を占めています。また、現行の制度における2~3割負担の対象者の割合が相対的に高く、特に、地域密着型通所介護の利用者における対象者は、地域密着型サービス全体の約5割を占めることが明らかになりました。
地域密着型通所介護が創設された2016年度移行の一人当たり給付費(1カ月の平均値)を見てみると、通所介護では微増傾向で、地域密着型通所介護ではほぼ横ばいとなっています。今回公表された20年度は通所介護が8万5,000円、地域密着型通所介護では7万7,000円でした。
介護予防を含む居宅介護サービスの受給者数は、20年度累計で4,710万人となりました。このうち第1号被保険者数は4,608万人、第2号被保険者数は102万人です。 要介護(要支援)度で見ていくと、要介護1の受給者数が26.5%と最多。「軽度」(要支援1〜要介護2)の受給者数が約70.0%を占めています。
これに対し、通所介護の20年度におけるサービス受給者数は約1,328万人で、居宅介護サービス受給者数の28.2%を占めています。内訳は、要介護1の受給者数が最多の37.9%で要支援1〜要介護2の受給者数で見ると67.4%となっています。
+要介護1,2
【表】20年度累計の受給者数と軽度者、要介護1、2の受給者の内訳の比較(介護保険事業状況報告を基に編集部で算出)
介護保険制度が始まった2000年度から2020年度までの、居宅介護サービス受給者数全体の推移(1カ月平均)を見ると、要支援者に対する訪問・通所サービスが総合事業へ完全に移行することになった17年度に受給者数が一度減少しています。その後、19年度に再び増加に転じ、20年度は392万5,000人と過去最多を記録しました。
介護予防を含む地域密着型サービスの受給者数は、20年度累計で1,046万人となりました。このうち第1号被保険者数は1,032万人、第2号被保険者数は14万人です。
要介護(要支援)度で見ていくと、要介護1の受給者数が28.7%と最多。軽度(要支援1〜要介護2)の受給者が約56.5%、重度(要介護3〜要介護5)の受給者が約43.5%と、居宅介護サービスよりも重度の受給者の割合が大きくなっています。これは、地域密着型サービスには、24時間365日在宅生活を支援するサービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模多機能型居宅介護など)が含まれていることによるものと推察されます。
これに対し、地域密着型通所介護の受給者数は年間累計で約466万人です。受給者が最も多い要介護1が全体の約40.0%、要支援1〜要介護2の受給者は約330万人の71%ほどで地域密着型サービスの中では比較的軽度の利用者の受け皿となっています。
06年度から20年度までの地域密着型サービス全体の受給者数(1カ月平均)は、20年度で87万1,000人となり、前年度の88万2,000人と比べて1.2%減りました。地域密着型サービスが始まってから初めての減少となっています。
通所介護における第1号保険者の2割負担対象者の数は62万9,423人で、居宅介護(介護予防を含む)サービスの平均46万9,396人を上回りました。また、3割負担対象者の数は44万1,033人で、こちらも居宅介護サービスの平均37万5,615人を上回っています。
地域密着型通所介護における第1号保険者の2割負担対象者の数は22万8,876人で、地域密着型(介護予防を含む)サービスの平均5万4,070人を大幅に上回りました。地域密着型通所介護は、地域密着型サービス全体の2割負担対象者のうち47%を占めていることになります。
また、地域密着型通所介護における第1号保険者の3割負担対象者についても16万9,565人と、地域密着型サービス全体の平均3万6,916人を大幅に上回っています。地域密着型通所介護は、地域密着型サービス全体の3割負担対象者のうち51%を占めていることになります。
利用者負担の在り方は次期制度改正を巡る焦点の一つでもあり、この範囲は今後さらに広がっていく可能性があります。
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