法人としての介護・福祉人材の確保・育成・定着への取組方策の整理と事例

2021.07.02
2021.07.02
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全国社会福祉協議会(以下、全社協)はこのほど、「地域を支える福祉人材確保・育成・定着のための取組方策2021」を公表しました(以下、「取組方策2021」)。2016年から毎年報告しているもので、近年の福祉分野における人材確保をめぐる動向・課題を踏まえ、

▽多様な人材が活躍できる福祉現場の実現
▽福祉人材育成の体制整備
▽働きやすく、働き続けられる職場づくり

といった目標や取り組みの方針を地域単位や法人単位(福祉施設・事業所)でまとめています。
このうち、法人として、人材の確保・育成・定着にどのように取り組んでいくのか取組方策を整理し、積極的に活動を展開している事例を紹介します。

目次
    法人における人材確保・育成・定着への取り組み方針
    法人による実践事例紹介:静岡県 社会福祉法人美芳会のケース

    法人における人材確保・育成・定着への取り組み方針

    質の高い福祉サービスの提供には優れた人材の確保が不可欠であり、キャリアアップ支援やワーク・ライフ・バランスの推進など前向きな取り組みが重要です。「取組方策2021」から法人が取り組みべき方向性として示されている具体的な取り組み方針を抜粋してご紹介します。

    人材確保の取り組み方針(1):多様な人材の受け入れ

    労働人口の減少やコロナ禍による失業者の増加など、社会環境の変化に迅速かつ柔軟に対応するためには、多様な人材の受け入れ体制の構築が重要です。
    「取組方策2021」では、とくに外国人介護人材の受け入れは、人材確保の側面のみならず、地域における多文化共生をすすめるうえでも有意義な取り組みとして紹介されています。

    さらに、ひとり親や児童養護施設の退所児童をはじめとする福祉施設・事業所利用者、家庭の事情等により短時間勤務の希望者、コロナ失業等による様々な経験を有する人材の雇用が、今後の積極的な検討事項として明記されました。

    人材確保の取り組み方針(2):ウィズコロナ時代における採用活動の変化への対応

    コロナ禍で各業種の働き方が大きく変化し、在宅勤務の推進やWEB会議の活用などが一気に浸透しました。採用活動にも大きな変化が見られ、オンライン説明会やオンライン面接の導入は当たり前のものになりました。SNS等を活用した採用活動は、学生人材の確保にはもはや不可欠です。

    福祉人材の確保や育成、他業種への人材流出を防ぐためにも、こうした採用プロセスの積極的な導入は重要度の高い検討事項です。その中で、福祉現場の姿を伝えるために、WEB活用の中で代替案を検討するなど、リアルな情報提供に取り組むことが求められます。

    *「地域を支える福祉人材確保・育成・定着のための取組方策2021」より抜粋

    人材育成の取り組み方針:キャリアパスの構築・職員への研修機会の提供

    職員が自ら将来を思い描けるよう、自法人におけるキャリアパス(昇任・昇格の基準や求められる技術など)の構築や、個々の状況を踏まえた適切な研修機会の提供も、重要な取り組です。法人内で実施される研修のみならず、外部研修への派遣や参加推奨を実施し、職員が参加しやすいよう業務調整や研修費用の助成なども重要な要素として示されました。

    ITインフラを整え、オンラインセミナーの受講環境を整備していくことなども有効な方策といえるでしょう。

    人材定着の取り組み方針:職員それぞれの状況に応じた柔軟な働き方の実現

    結婚、出産、育児、介護、キャリアアップのための就学など、職員それぞれの状況や希望に応じた柔軟な働き方を実現するために、労働時間や休暇・休業制度の見直し、退職後の再雇用制度の導入なども取り組むべき事例として示されました。

    この点は国も認識を深めており、2021年度介護報酬改定では人員配置基準や報酬算定の際に求められる「常勤」の考え方を柔軟化するといった対応がとられています。

    また、「職員の心身の健康と安全の確保」も重要な取り組み事項です。ハラスメント防止策の推進や職員のリフレッシュに資する余暇活動への支援、福利厚生制度の充実など、職員が安心して働き続けられる環境を整える取り組みが求められます。

    法人による実践事例紹介:静岡県 社会福祉法人美芳会のケース

    好事例となる法人の具体的な実践内容が「取組方策2021」に掲載されています。その取り組み内容や成果について、一部をご紹介します。

    コロナ流行に伴うオンライン採用への移行と工夫・成果について

    新型コロナウイルスに伴う環境変化にあわせた採用環境を整備するため、美芳会ではオンラインを活用した取り組みを積極的にすすめています。

    ▽2020年3月よりすべての採用面接をWEB実施に変更
    ▽WEB面接用システムツール「Microsoft Team」を利用
    ▽外部とのテレビ会議にも活用

    こうした取り組みの結果、2020年3月からの面接の問い合わせ状況・採用状況ともに、前年と比べてもほぼ横ばいをキープ。就職フェアなどの対面イベントの中止に見舞われたものの、前年と同じ実績の維持につながりました。

    さらに、WEB面接の実施にあたっては、

    (1)法人の雰囲気が伝わるようHPに専用ページを設置
    (2)採用スケジュールや進捗状況を法人内で見える化する仕組みの整備

    に重きを置いた取り組みを実施しています。

    福祉現場の人材確保が大きな課題となったコロナ禍において、一定の成果が上がった実例といえます。

    今回公表された「取組方策2021」では、本記事にて紹介したポイント以外にも福祉人材の確保・育成・定着に向けた包括的な取り組み事項や実践事例が記載されています。自法人での取り組みの検討材料としてみてください。

    関連資料:「地域を支える福祉人材確保・育成・定着のための取組方策2021」

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