前回の「訪問看護ステーションで働く職員のモチベーションの変化」では、独自調査の結果に沿って、訪問看護ステーションが持続的な運営をしていくための方策について述べた。各事業所が自身の特性を理解し、職員がどのような目的をもって入社したり、就労意向を持っていたりするかを把握して、採用と定着に取り組んでいかなければならない。
今回は、従業員の定着をさらに促進するために必要な「エンゲージメント」の高め方について述べていく。
エンゲージメントとは、一言で述べると企業と従業員の「信頼関係」である。信頼関係が構築できれば、お互いの必要性が理解でき、ともに成長できて、経営にプラスの影響をもたらすという考え方である。
信頼関係が確立されれば、経営者は働きやすい職場づくりや教育体制の整備など従業員のためにできることを考え、従業員は主体的に仕事に取り組むなど組織に対する貢献の意欲を持つようになる。
では、モチベーションとエンゲージメントの違いは何だろうか?
モチベーションとは、職員が働く上での動機づけをいう。 モチベーション―従業員の姿勢や行動を促進する要因―には仕事に対する満足を生み出す「動機付け要因」と職場に対する不満を生む「衛生要因」が存在する(ハーズバーグが提唱している「二要因理論」)。
これに対し、エンゲージメントは環境的な要素に関わらず、従業員が組織に愛着を持ち、主体的な行動を実践している状態を指す。
また、まずモチベーションは自分の中の動機が生まれ、それが行動につながっていくのに対し、エンゲージメントは「事業所のために貢献する」というように、周囲に対する働きかけを意識して行動しようという意欲を指す。
企業と従業員の信頼関係に話を戻すと、両者の信頼関係は以下の2つの軸を基に構築される。
●セルフモチベーション(自発的に自らを奮い立たせる力) ●コミットメント(事業所目標と個人目標をシンクロさせ能動的に行動しようとする力)
経営者の中には、「職員に説明しているのにいうことを聞いてもらえない」といった悩みを持つ方も少なくはないのではないか。
株式会社ビジケア代表取締役。看護師。訪問看護ステーション設立に参画した自身の経験をもとに、多数の事業所運営サポートを実施。看護師の視点で現場職員への教育や収益改善のサポートを行う。全国各地で年間700人を超える訪問看護ステーションの経営者・管理者向けに講義・セミナーを実施している。