厚生労働省による、改定初年度の「介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」(令和3年度調査)では、文書負担の軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減も対象として取り上げます。電子化などによる文書の作成や保管を通じた事業所の間接業務の削減は、介護保険制度の設計に関わる専門家にとっても課題意識が強い部分です。調査方針について検討する委員会では、国として構築していくべき業務効率化のシステムの将来像ついても意見が交わされました。
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2021年度介護報酬改定では、ICT化の推進によって業務負担の軽減を進めるため、▽利用者への説明・同意の取得▽記録の保存等▽運営規程等における従業者の員数の記載▽運営規程等の重要事項の掲示-に関する見直しが行われました。ケアプランや重要事項を説明する際の利用者の同意取得について、押印の代わりにメールや電子署名の利用などを認めたり、運営規程の概要などの重要事項について、関係者がパソコンやタブレットで電子ファイル等を自由に閲覧できる状態にすることを事務所に掲示する代わりの方法として認めたりといった対応がとられています。
10月に実施される調査では、どれくらいの事業所が改定に応じた対応をとったのか、また、そうした対応によって介護現場の負担がどのように変化したのか、ICTの活用・環境整備をさらに推し進めていくためにはどのような課題があるのかといった情報が収集されます。
この調査の指揮を執る埼玉県立大大学院の川越雅弘教授は、改定の趣旨に沿った対応を事業所が行っているかどうかは、事業所の規模や法人の種別、サービスの類型、文書の種類によって、違う可能性があると推測しています。10日の委員会では、こうした要素を分析して、ICTなどの活用・業務効率化を阻む個別の課題に応じた対応策を示すことが調査の狙いであると説明しました。
また、この委員会の委員長を務める松田晋哉産業医科大教授は、文書作成や保存などの負担に関わる業務負担の実態を把握することについて、特に訪問系のサービスでは、「直接介護労務者の方たちの収入に関わってくる」点から重要性を指摘しました。
関連したデータとして、エス・エム・エスが設立した調査・研究機関・高齢社会ラボの公開情報によると、介護現場の看護・介護職員の67.8%が「利用者に対する直接的なケアを行う時間が不足している」と感じていることがわかっています(調査は2020年9-10月に実施。訪問介護、訪問看護、通所介護の208事業所から回答)。
松田教授は今後の検討事項として、オランダで確立している訪問看護の組織モデル・ビュートゾルフのように、複数・広域にわたる事業所のバックオフィス機能を一挙に担う拠点を地域に設けるといった、個別のサービスや手続きの改善にとどまらずに効率的なケアを提供するシステムづくりを根本から議論する場を設けることを求めました。
このほかに委員からは、LIFEを積極活用する事業所と文書負担軽減のために対応を行っている事業所の関連性を把握するべきとの意見も相次ぎました。これに対して川越教授は、現段階ではLIFEの導入事業所は分析に足るほど多くないという見方を示したものの、将来的にLIFEが浸透し、一人の利用者に対する、多領域のアセスメントデータが一元化されていけば、改めて大きな枠組みで業務の効率化に資する検討を行う必要があると指摘しました。
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