2021年度の介護報酬改定にて、自立支援の推進や寝たきり防止等の観点から、医師の関与の下で、リハビリテーションや介護等の取組を推進する「自立支援促進加算」が新設されました。算定要件や関連Q&Aなど、当該加算の算定に必要な情報を確認しておきましょう。
「自立支援促進加算」とは、介護保険施設において、入所者が尊厳を保持し、能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、支援計画に基づく必要な取組みの実施を評価する加算です。
このため、定期的に医師が全ての入所者に対する医学的評価やアセスメントを実施するとともに、医師、看護職員、介護職員、介護支援専門員その他の職種が、医学的評価、アセスメント及び支援実績に基づき、特に自立支援のための対応が必要とされた者について、生活全般において適切な介護を実施するための包括的な支援計画を策定し、個々の入所者や家族の希望に沿った特別な支援(※)を行っている場合に算定できます。
※特別な支援・尊厳の保持に資する取組・本人を尊重する個別ケア・寝たきり防止に資する取組・自立した生活を支える取組・廃用性機能障害に対する機能回復・重度化防止のための自立支援の取組など
介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院
自立支援促進加算:300単位/月
①医師が入所者ごとに、自立支援のために特に必要な医学的評価を入所時に行うとともに、少なくとも6月に一回、医学的評価の見直しを行い、自立支援に係る支援計画等の策定等に参加していること。
②①の医学的評価の結果、特に自立支援のための対応が必要であるとされた者ごとに、医師、看護師、介護職員、介護支援専門員、その他の職種の者が共同して、自立支援に係る支援計画を策定し、支援計画に従ったケアを実施していること。
③①の医学的評価に基づき、少なくとも3月に1回、入所者ごとに支援計画を見直していること。
④①の医学的評価の結果等を厚生労働省に提出し、当該情報その他自立支援促進の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。(LIFEへのデータ提出とフィードバックの活用によるPDCAサイクルの推進)
①厚労省は本加算について、入所者の尊厳の保持及び自立支援に係るケアの質の向上を図るため、多職種共同による支援計画の作成(Plan)、支援計画に基づく自立支援の促進(Do)、支援内容の評価(Check)とその結果を踏まえた支援計画の見直し(Action)といったPDCAサイクルの構築を通じて、継続的に入所者の尊厳を保持し、自立支援に係る質の管理を行った場合に加算する、としています。そのため、画一的・集団的な介護、または個別的ではあっても画一的な支援計画による取組を評価するものではありません。また、リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではないことから、個別のリハビリテーションや機能訓練を実施することのみでは、加算の対象とはなりません。
②支援計画の各項目は、原則として以下のとおり実施することが求められます。・寝たきりによる廃用性機能障害を防ぐために、離床、座位保持または立ち上がりを計画的に支援する
・食事は、本人の希望に応じ、居室外で、車椅子ではなく普通の椅子を用いる等、施設においても、本人の希望を尊重し、自宅等におけるこれまでの暮らしを維持できるようにする。食事の時間や嗜好等への対応について、画一的ではなく、個人の習慣や希望を尊重する
・排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用することとし、特に多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない
・入浴は、特別浴槽ではなく、一般浴槽での入浴とし、回数やケアの方法についても、個人の習慣や希望を尊重する
・生活全般において、入所者本人や家族と相談し、可能な限り自宅での生活と同様の暮らしを続けられるようにする
・リハビリテーション及び機能訓練の実施については、自立支援に係る評価に基づき、必要な場合は、入所者本人や家族の希望も確認して施設サービス計画の見直しを行う
これらの際、入所者やその家族の希望も確認し、支援にあたって入所者の尊厳が十分に保持されるように留意することが求められます。
Q.入浴は、特別浴槽ではなく、一般浴槽での入浴とし、回数やケアの方法についても、個人の習慣や希望を尊重することが要件となっているが、仮に入所者の状態から一般浴槽を使用困難な場合は要件を満たすことになるのか。
A.原則として一般浴槽での入浴を行う必要があるが、感染症等の特段の考慮すべき事由により、関係職種が共同して支援計画を策定する際、やむを得ず、特別浴槽での入浴が必要と判断した場合は、その旨を本人又は家族に説明した上で、実施することが必要である。
Vol.948「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和3年3月23日)」の送付について
厚労省ダウンロード資料:別紙様式7 自立支援促進に関する評価・支援計画書
利用者ごとに、下記の①~③に定める月の「翌月10日まで」に提出します。
①加算の算定を開始する月にすでにサービスを利用している、既利用者の場合は、算定を開始しようとする月
②加算の算定を開始する月の翌月以降にサービスの利用を開始した、新規利用者の場合は、サービスの利用開始した日の属する月
③ 褥瘡の発生と関係のあるリスクに係る評価を行った日の属する月(評価は少なくとも3月に1回実施する)
なお、①~③の情報を提出すべき月について、情報の提出を行えない事実が生じた場合は届出が必要です。この場合、該当期間における利用者全員について本加算の算定ができなくなります。
また、提出情報は、利用者ごとに以下の時点における情報を提出します。
①既利用者の場合は、介護記録等に基づき、既利用者ごとの利用開始時または施設入所時における評価情報、および算定開始時における情報
②新規利用者の場合は、利用開始時における情報
③褥瘡の発生リスクに係る評価を実施した場合は、評価時における情報
新規利用申請の対応について一部遅れがでていたことから、2021年4月~6月サービス提供分の算定について、「翌月10日まで」ではなく、2021年8月10日がデータ提出期限となる場合があります。以下の場合が対象となります。
・4月に算定できるよう事務連絡の期限通り新規利用申請をしていたが、はがきの発送が遅延している場合
・LIFEの導入等についてヘルプデスクへの問い合わせをしているが、回答がなく解決に至っていない場合
関連記事:LIFEへのデータ提出が8月まで猶予される条件は? 4月~6月サービス提供分が対象
Q.要件として定められた提出情報に、要件として定められた情報を「やむを得ない場合を除き、すべて提出すること」とされていれるが、「やむを得ない場合」とはどのような場合か。
A.やむを得ない場合とは、例えば、情報を提出すべき月において、当該月の中旬に評価を行う予定であったが、緊急で月初に入院することとなり、当該利用者について情報の提出ができなかった場合や、データを入力したにも関わらず、システムトラブル等により提出ができなかった場合等、利用者単位で情報の提出 ができなかった場合がある。
また、提出する情報についても、例えば、全身状態が急速に悪化した入所者について、必須項目である体重等が測定できず、一部の情報しか提出できなかった場合等であっても、事業所・施設の利用者又は入所者全員に当該加算を算定することは可能である。
ただし、情報の提出が困難であった理由について、介護記録等に明記しておく必要がある。
Q. Barthel Index(BI)のデータ提出に際して、老人保健健康増進等事業において一定の読み替え精度について検証されているICFステージングから読み替えたものを提出してもよいか。
A. BIの提出については、通常、BIを評価する場合に相当する読み替え精度が内容の妥当性を含め客観的に検証された指標について、測定者が、①BIに係る研修を受け、②BIへの読み替え規則を理解し、③読み替え精度等を踏まえ、必要に応じて、読み替えの際に、正確なBIを別途評価する、等の対応を行い提出することが必要である。
Q.加算の算定を開始しようとする場合、すでに施設に入所している入所者について、提出が必要な情報は、当該時点の情報に加え、施設入所時の情報も必須なのか。
A.既に施設に入所している入所者については、入所時の介護記録等にて評価が可能であれば、施設入所時の情報を提出していただきたいが、やむを得ず仮に提出ができない場合であっても、加算の算定ができなくなるものではない。
Vol.952 「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A Vol.3(令和3年3月26日)」の送付について
Q.LIFEに提出すべき情報は「 科学的介護情報システム(LIFE )関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について 」(令和3年3月16日老老発0316第4号)の様式例において示されているが、 利用者又は入所者の評価等に当たっては、当該様式例を必ず用いる必要があるのか。
A.同通知はあくまでもLIFEへの提出項目をお示ししたものであり、利用者又は入所者の評価等において該当加算における様式と同一のものを用いることを求めるものではない。
Vol.965 「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A Vol. 5(令和3年4月9日)」の送付について
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。