2021年度介護報酬改定に向けて、全22回に渡り議論されてきた介護給付費分科会。その審議報告が、2020年12月23日に厚労省のホームページで公表されました。本記事では【通所リハビリテーション】に関する「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」の内容について、加算や報酬に関わる詳細部分をまとめて整理していきます。
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(厚労省ホームページ)
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利用者の自宅での入浴の自立を図る観点から、現行の入浴介助加算に以下2点の見直しが行われます。
①利用者が自宅において、自身または家族等の介助によって入浴を行うことができるよう、個別の入浴計画を作成し、計画に基づき事業所において個別の入浴介助を行うことを評価する、新たな区分を設ける。
個別の入浴計画は、利用者の身体状況や医師・理学療法士・作業療法士・介護支援専門員等が訪問により把握した利用者宅の浴室の環境を踏まえて、医師との連携の下に作成すること。
②現行の入浴介助加算が非常に高い算定率であることから、新たな加算区分の取り組みを促進するため、現行加算の単位数を見直す。
感染症や災害の影響により利用者が減少した場合に、状況に即した安定的なサービス提供を可能とする観点から、以下2点の見直しが行われます。
①事業所規模別の報酬区分の決定にあたって、より小さい規模区分がある大規模型について、前年度の平均延べ利用者数ではなく、感染症や災害の影響により延べ利用者数の減が生じた月の実績を基礎とすることができる。
②感染症や災害の影響により延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から一定割合以上減少している場合、一定期間、臨時的な利用者の減少による利用者一人あたりの経費の増加に対応するための評価を行う。
※②部分は、区分支給限度基準額の算定に含めない。
なお、現下の新型コロナウイルス感染症の影響による一定割合以上の利用者減に対する適用にあたっては、「年度当初から即時的に対応を行う」ことが示されており、現行の新型コロナウイルス感染症対応の報酬特例(毎月決まった回数に限り、実際にサービスを提供した時間よりも2区分上位の報酬を算定できる特例)は今年度で廃止となります。
自立支援・重度化防止に向けた更なる質の高い取り組みを促す観点から、リハビリテーションマネジメント加算(以下、リハマネ加算)について、以下の見直しが行われます。
①報酬体系の簡素化と事務負担軽減の観点から、算定率の高いリハマネ加算(Ⅰ)、介護予防訪問・通所リハのリハマネ加算は廃止し、同加算の算定要件は基本報酬の算定要件とし、基本報酬で評価を行う。
②訪問リハにおける同加算と通所リハの同加算の評価の整合性を図る観点から、リハマネ加算Ⅱ・Ⅲの評価の見直しを行う。
また、2021年度からのCHASE・VISITの一体的な運用に伴い、以下の見直しについても審議報告に盛り込まれました。
③リハマネ加算(Ⅳ)を廃止する。
④定期的なリハビリテーション会議によるリハビリテーション計画の見直しが要件とされているリハマネ加算Ⅱ・Ⅲのそれぞれにおいて、事業所がCHASE・VISITへデータを提出しフィードバックを受けPDCAサイクルを推進することを評価する。
⑤CHASE・VISITへの利用者情報の入力負担の軽減と、よりフィードバックに適するデータを優先的に収集する観点から、リハビリテーション実施計画書の項目について、CHASE・VISITにデータ提供する場合の必須項目と任意項目を定める。
さらに、全サービスに共通して、会議や多職種連携におけるICTの活用が推進されています。リハマネ加算の算定要件の一つである「定期的な会議の開催」についても、利用者の了解を得た上で、テレビ会議等の対面を伴わない方法により開催することが可能となります。
生活行為向上リハビリテーション実施加算について、現行では生活行為向上リハビリテーションの実施開始から3月以内と、3月以上6月以内とで単位数が階段状に設定されています。
これに対し、廃用症候群や急性増悪等によって生活機能が低下した利用者に対する、適時適切なリハビリテーションの提供を一層促進する観点から、事業所の加算を取得しない理由等も踏まえ、以下3点の見直しが行われます。
①加算算定後に継続利用する場合の減算を廃止する。
②生活行為向上リハビリテーションの実施開始から3月以内と3月以上6月以内で階段状になっている単位数を単一(現行の3月以内より低く設定)にする。
③活動と参加の取組を促進する観点から、同加算の利用者の要件や取組の内容について明確化する。
介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算の算定要件の一つである「職場環境等要件」について、介護事業者による職場環境改善の取り組みをより実効性が高いものとする観点から、以下2点の見直しが実施されます。
①職場環境等要件に定める取組について、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、以下の取組がより促進されるように見直しを行う。
・ 職員の新規採用や定着促進に資する取組
・ 職員のキャリアアップに資する取組
・ 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組
・ 腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組
・ 生産性の向上につながる取組
・ 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、
職員の勤務継続に資する取組
②職場環境等要件に基づく取組の実施について、過去ではなく、当該年度における取組の実施を求める。
また、介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)については、上位区分の算定が進んでいることを踏まえて廃止へ。その際に、2021年3月末時点で同加算を算定している介護サービス事業所については、1年の経過措置期間が設けられます。
事務局からは、「介護職員処遇改善加算取得促進事業」において、上位区分への引き上げを強力に進める予定という発言もありました。
スキル・経験のある職員の処遇改善を目的とした介護職員等特定処遇改善加算について、「リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準の実現を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を行う」といった趣旨は維持した上で、小規模事業者を含め事業者がより活用しやすい仕組みとする観点から、以下の見直しが行われます。
・平均の賃金改善額の配分ルールについて、「その他の職種」は「その他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」とするルールは維持した上で、「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」とするルールについて、「より高くすること」とする。
つまり、「2倍以上」という制限がなくなり、より柔軟な配分が可能となります。
利用者の口腔機能の低下を防ぐことなどを目的に、介護職員が実施可能な口腔スクリーニングの実施を評価する新たな加算がされます。その目的及び方法等に鑑み、栄養スクリーニング加算による取組・評価と一体的に行う必要があります。
口腔機能向上加算については、CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用による更なるPDCAサイクルの推進・ケアの向上を図ることを評価する新たな区分が設けられます。
栄養改善が必要な者を的確に把握し、適切なサービスにつなげていく観点から、以下3点の見直しが行われます。
①管理栄養士と介護職員等の連携による栄養アセスメントの取組を評価する新たな加算を創設する。その際、CHASE へのデータ提出とフィードバックの活用による更なるPDCA サイクルの推進・ケアの向上を図ることを要件の一つとする。
②栄養改善加算について、栄養改善が必要な者に適切な栄養管理を行う観点から、事業所の管理栄養士が必要に応じて居宅を訪問しての栄養改善サービスの取組を行うことを求めるとともに、評価の充実を図る。
③①及び②における管理栄養士については、外部(他の介護事業所、医療機関、介護保険施設又は栄養ケア・ステーション)との連携による配置を可能とする。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。