訪問看護ステーションの事業環境分析 (2)~クロスSWOT分析・アクションプラン策定編~

2022.03.01
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1.はじめに~SWOT分析は一度やって終わりじゃない~

前回から、事業戦略立案の際に使う考え方として有名なSWOT分析についてお伝えしています。

まだ前回の記事を読まれていない方は是非こちらからお読み頂き、今回の内容へと読み進めて下さい。
SWOT分析による事業所戦略作り

SWOT分析を行う上で改めて認識していただきたい事は2点です。

1点目は、SWOT分析は一度行って終わりではなく、経営状況や外部・内部環境は常に変わっていくため何度も加筆修正を重ねることが重要という事です。

完璧な物でなく粗削りでもOKなので、まずは今気になっていたり頭を悩ませていたりしている課題を書き出し、検討やディスカッションを重ねて分析の精度を上げていく事が大切です。

2点目は、SWOT分析はあくまで思考を整理するツールであるという事です。

SWOT分析をしたから戦略が出てくるのではありません。

SWOT分析で現状について理解・認識したうえで、今後の方向性や課題を抽出・整理することが大切です。

それが出来るのが「クロスSWOT分析」です。

今回はその「クロスSWOT分析」についてお伝えしていきます。

2.クロスSWOT分析とは

クロスSWOT分析とは、SWOT分析で利用した4つの項目区分である、「強み(Strength)」、「弱み(Weakness)」、「機会(Opportunity)」、「脅威(Threat)」をそれぞれ掛け合わせることで、目標の達成に向けてとるべき戦略を導き出すフレームワークです。

図にすると以下のようになります。

画像

4つの項目区分を掛け合わせて導き出す、それぞれの戦略についてお伝えしていきます。

積極的攻勢「強み機会」

『強み機会』で策定するのは、会社の強みを最大に生かし、ビジネスチャンスとなる機会を作っていく施策や戦略です。

ポイントは
・自分たちの組織の強みで取り組める事業機会の創出(伸ばす)
・良いところをさらに伸ばし、チャンスをものにする

という事です。

クロス分析の中で一番大切なので、出来るだけ多くの項目を出しておくようにしましょう。

差別化戦略「強み脅威」

『強み脅威』とは、会社の強みをうまく活用し、脅威からくる影響を最小限に抑える戦略です。

ポイントは

・自分たちの組織の強みで脅威を回避する
・脅威の中にあっても差別化することで自分たちの良さをより際立たせる

ことです。

競合とどういった事が差別化できるかを考えだしていきましょう。

弱点克服・転換「弱み機会」

『弱み機会』とは、今抱えている弱みを克服するために、機会を最大限活用して自分たちの組織のネガティブな要素をポジティブに変えていく戦略です。

ポイントは

・自分たちの組織の弱点を段階的に改善し、強みに転換していく過程を明確にする
・機会を逃さない(とらえる)

ことです。

自分たちの欠点を補填するための機会を見つけることが重要なので、介護・医療制度や政治的要因などのトレンドも含めどんな小さなチャンスとなりうる情報でも収集しましょう。

業務改善又は撤退「弱み脅威」

『弱み脅威』で導き出すのは、自社の弱みと外部環境のマイナス要素の二つが重なったときの、最悪の事態に備えるために、防衛案を考える戦略です。

ポイントは

・最悪の事態を招かない対策
・改善というよりも「最悪な事態を回避する」

ことです。

防衛案を立てておけば、早期に問題解決ができたり、最悪な事態にならないように回避しながら運営したりすることが可能となります。

SWOT分析とクロスSWOT分析の時間軸の違い

SWOT分析とクロスSWOT分析は似ているため混合してしまいがちですが、その目的は以下の通り大きく異なります。

・SWOT分析の目的
あくまで現状、課題の確認であり、「今」の事実について整理します。

・クロスSWOT分析の目的
これから進むべき方向性と解消すべき課題(経営課題)を抽出・整理し、自組織がとるべき行動を導き出していきます。

「これから」についての考えを戦略としてまとめ、アクションプランにしていきます。

画像

3. クロスSWOT分析の際の注意点

SWOT分析は事実を客観的に記載していくことが大事でしたが、クロスSWOT分析では『考えること』が大事です。

また、単なるアクションプランではなく、『何のために』という目的を意識した表現で記載することが重要です。

例)
✖『HPを更新する』、『広告を出す』
◎『地域の相談窓口としての機能を果たすために情報発信活動を強化する』
『関係機関に信頼してもらえるように、情報共有の仕方を見直す』

4. クロスSWOT分析が難しいと感じたときにチェックする2つのポイント

“複数の事実から経営課題”と“経営課題からその理由”の両方から考える

1.「何を書いてよいか分からない」となったら、いったんクロスSWOT分析表から離れて日頃考えている課題を書き出してみる

2.まずは課題と感じているものを書き出して、その理由を書き出してみる

3.その理由に該当することがクロスSWOT分析の中に入っているか確認する

4.強みと弱み、機会と脅威の捉え方を逆にして考え直してみる

考えるべきことからズレない

1.今考えているのは、自分の部門・チームの戦略(目標)であることから

ズレない(看護とリハ部門、精神訪問チーム、小児チームなど)

2.他の部門やチームのせいにして考えるのではなく、自分の部門やチームとして何をすべきかを考える

3.何から何まで戦略や目標にする必要はない。現場で対応できること、日々の業務の中で解決されることは無理に戦略にする必要はない。

5. 経営課題の表現方法・書き方のポイント

クロスSWOT分析をしていくにあたっての経営課題の表現方法・書き方のポイントを2点お伝えします。

①分かりやすいクロス分析

アクションプランではなく目的を意識した文章表現にしていきます。
また、経営課題の理由となったクロスSWOT分析の項目も一緒に記載しておくと共通理解につながります。
以下記載例をご紹介します。

画像

②経営課題の「目的」を意識して表現する理由

クロスSWOT分析をする際、アクションプランではなくなぜどうしてその施策が必要なのかを考えることが大切です。それにより、どういうアクションプランを取るべきかの幅が広がっていきます。

アクションプラン起点で考えると・・

画像 画像

6. クロスSWOT分析が出来たら施策の優先順位を決める

クロスSWOT分析に関する解説もこちらで最後です。

クロスSWOT分析を終え、アクションプランを導き出した後の流れを紹介します。

①重要度軸でアクションの優先度合いを考える

アクションプランが出来たら、その緊急度にはこだわらず重要度別に並べ替えます。 画像

②次に緊急度別でアクションプランの優先度を検討する

アクションプランを重要度別で並び替えた後、さらに緊急度を判断軸として分類します。

画像

③事業戦略や目標に位置付けるのは「重要度」軸を優先で

①、②を実践した後、「重要度」が高い項目を優先的に事業戦略・目標としていきます。

まとめ

・アクションプランの優先度合いを検討する際の注意点は「緊急度」に惑わされないこと
・大事なことは、重要度と緊急度両方から優先度を明確にすること

7. 最後に

今回は、クロスSWOT分析についてお話ししました。

事業を拡大・成長させていくためにどうしたらいいかと悩んでいる方は、この記事が自社がまず何から着手すべきか、どういう戦略を立てるべきかを考えるにあたっての足掛かりになりますと幸いです。

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