2021年度介護報酬改定に向けて、全22回に渡り議論されてきた介護給付費分科会。その審議報告が、2020年12月23日に厚労省のホームページで公表されました。本記事では【介護老人保健施設】に関する「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」の内容について、加算や報酬に関わる詳細部分をまとめて整理していきます。
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(厚労省ホームページ)
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介護老人保健施設の在宅復帰・在宅療養支援機能を更に推進する観点から、以下3点の見直しが行われます。
①居宅サービス実施数に係る指標において、訪問リハビリテーションの実施を更に促進するため、訪問リハビリテーションの比重を高くする。
②リハビリテーション専門職配置割合に係る指標において、入所者の状態に応じたより多様なリハビリテーション提供体制を評価するため、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士の3職種の配置を評価する。
③基本型以上について、より入所者の状態に合ったリハビリテーションを提供するため、医師の詳細な指示に基づくリハビリテーションに関する事項を明確化する。
これらの見直しを実施するにあたり、6月の経過措置期間が設けられます。
介護老人保健施設におけるリハビリテーションマネジメントについて、自立支援・重度化防止に向けた更なる質の高い取組を促す観点から、以下の見直しが行われます。
・訪問リハビリテーション等と同様に、CHASE・VISIT へリハビリテーションのデータを提出しフィードバックを受けて PDCA サイクルを推進することを評価する新加算を創設する。
退所前連携加算について、以下2点の見直しが行われます。
➀入所前後から入所者が退所後に利用を希望する居宅介護支援事業者と連携し、退所後の介護サービスの利用方針を定め、その上で、現行の加算の要件である退所前の連携の取り組みを行った場合に、新たに評価する区分を設ける。
➁現行相当の加算区分については、新たな加算区分の取り組みを促進する観点から、単位数の見直しうを行う。
●現行の退所前連携加算
介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算の算定要件の一つである「職場環境等要件」について、介護事業者による職場環境改善の取り組みをより実効性が高いものとする観点から、以下2点の見直しが行われます。
①職場環境等要件に定める取組について、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、以下の取組がより促進されるように見直しを行う。
・ 職員の新規採用や定着促進に資する取組
・ 職員のキャリアアップに資する取組
・ 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組
・ 腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組
・ 生産性の向上につながる取組
・ 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取組
②職場環境等要件に基づく取組の実施について、過去ではなく、当該年度における取組の実施を求める。
また、介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)については、上位区分の算定が進んでいることを踏まえて廃止へ。その際に、2021年3月末時点で同加算を算定している介護サービス事業所については、1年の経過措置期間が設けられます。
事務局からは、「介護職員処遇改善加算取得促進事業」において、上位区分への引き上げを強力に進める予定です。
スキル・経験のある職員の処遇改善を目的とした介護職員等特定処遇改善加算について、「リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準の実現を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を行う」といった趣旨は維持した上で、小規模事業者を含め事業者がより活用しやすい仕組みとする観点から、以下の見直しが行われます。
・平均の賃金改善額の配分ルールについて、「その他の職種」は「その他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」とするルールは維持した上で、「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」とするルールについて、「より高くすること」とする。
つまり、「2倍以上」という制限がなくなり、より柔軟な配分が可能となります。
個室ユニット型施設について、ケアの質を維持しつつ、人材確保や職員定着を目指し、ユニットケアを推進する観点から、以下3点の見直しが実施されます。
①1ユニットの定員を、現行の「おおむね10人以下」から「原則としておおむね10人以下とし、15人を超えないもの」とする。
➁ユニットリーダーについて、原則常勤を維持しつつ、仕事と育児や介護との両立が可能となる環境整備を進め、離職防止・定着促進を図る観点から、人員配置基準や報酬算定について、両立支援への配慮に係る見直しを行う。
③ユニット型個室的多床室について、感染症やプライバシーに配慮し、個室化を進める観点から、新たに設置することを禁止する。
上記➁の人員配置基準における「両立支援への配慮」に関して、以下の4点の見直しが行われます。
・「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による育児の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、介護の短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱う。
・「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱う。
・人員配置基準や報酬算定において「常勤」での配置が求められる職員が、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合に、同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算することで、人員配置基準を満たす。
・上記の場合において、常勤職員の割合を要件とするサービス提供体制強化加算等の加算について、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した当該職員についても常勤職員の割合に含める。
認知症専門ケア加算について、各介護サービスにおける認知症対応力を向上させていく観点から、下記の見直しが行われます。
・認知症専門ケア加算の算定の要件の一つである、認知症ケアに関する専門研修を修了した者の配置について、認知症ケアに関する専門性の高い看護師(認知症看護認定看護師、老人看護専門看護師、精神看護専門看護師及び精神科認定看護師)を、加算の配置要件の対象に加える。
なお、上記の専門研修について、質を確保しつつ、eラーニングの活用等により受講しやすい環境整備を行うことも、審議報告案に盛り込まれています。
中重度者や看取りへの対応の充実を図る観点から、ターミナルケア加算について以下3点の見直しが行われます。
①看取り期における本人・家族との十分な話し合いや他の関係者との連携を一層充実させる観点から、要件において、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うことを求める。
②要件における看取りに関する協議等の参加者として、支援相談員を明記する。
③算定日数期間を超えて看取りに係るケアを行っている実態があることを踏まえ、現行の死亡日以前30日前からの算定に加えて、それ以前の一定期間の対応について、新たに評価する区分を設ける。
また、サービスの提供にあたって、「本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に対する支援に努めることを求める」という文言が明確化されました。
サービスの質の向上や職員のキャリアアップを一層推進する観点から、財政中立を念頭に、以下3点の見直しが行われます。
①介護福祉士割合や介護職員等の勤続年数が上昇・延伸していることを踏まえ、各サービス(訪問看護及び訪問リハビリテーションを除く)について、より介護福祉士の割合が高い、又は勤続年数が10年以上の介護福祉士の割合が一定以上の事業者を評価する新たな区分を設ける。
②上記に際し、同加算が質の高い介護サービスの提供を目指すものであることを踏まえ、当該区分の算定に当たり、サービスの質の向上につながる取組の一つ以上の実施を求めることとする。
③勤続年数要件について、より長い勤続年数の設定に見直すとともに、介護福祉士割合要件の下位区分、常勤職員割合要件による区分、勤続年数要件による区分を統合し、いずれかを満たすことを求める新たな区分を設定する。
入所者の状態に応じた丁寧な口腔衛生管理を充実させることを目的として、全施設系サービスにおいて口腔衛生管理体制を確保する観点から、現行の「口腔衛生管理体制加算」を廃止し、算定要件を一定程度緩和したうえで、基本サービスとして組み込まれます。
これに伴い、施設系サービスには口腔衛生管理体制を整備し、入所者ごとの状態に応じた口腔衛生の管理を行うことが求められます(経過措置期間は3年)。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。