2024年度から義務化のBCP 事業所の取り組み状況は

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2024年度から義務化される業務継続計画(以下・BCP)の策定について、各介護サービス事業所では、どれくらい対応が進んでいるのでしょうか。介護労働安定センターがこのほど公表した調査結果によると、緊急時の連絡先や日ごろからの話し合いの機会の確保については7割が取り組んでいることがわかりました。

一方で、自然災害が発生した場合の職員の参集基準など、多くの事業所が必要性を感じながらも、策定が進んでいない対策もあるようです。

感染症と自然災害の対応のそれぞれの取り組み状況を調査から整理していきます。

感染症対策としてのBCP策定状況

介護労働安定センターは毎年、介護事業所における労働実態や職場環境について調査しています。21年度は、感染症と自然災害発生時それぞれに対する業務継続計画の策定状況や策定の支援情報の活用状況などの項目を加えて分析しました。

8割の事業所が緊急時意思決定者を既定

調査結果によると、感染症のまん延が発生した場合でも、業務を継続するために、平常時から実施している取り組み(複数回答)として、「緊急連絡先(事業所内、関係行政、関係団体)を定めている」が78.7%で最も高く、「感染症のまん延時の対応についての話し合いの機会を持つ」が70.1%で2番目に高いことが分かりました。

「平時における研修・訓練の実施」は56.5%で、約4割の事業所は実施できていません。研修や訓練の定期的な実施が完全義務化されるのは24年度からですので、その前に計画の策定やそれに伴った体制構築を進めている事業所が多いようです。

感染症平常時
(介護労働安定センター令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要についてより引用)

策定が進んでいない取り組みをサービス系統別で見ていきます。訪問系サービスでは「必要な物資(利用者と従業員の水3リットル 食料3日分、等)を確保している」を策定している割合が30.5%と一番低くなっています。

施設系(通所型)サービスでは「最新の知見を踏まえた、計画定め事の定期的な見直し」が35.5%と低く、居宅介護支援も同じく18.8%となっています。

策定率が低い取り組み(平常時)
サービス系統 取り組み内容 策定している事業所
訪問系 必要な物資(利用者と従業員の水3リットル 食料3日分、等)を確保している

30.5%

最新の知見を踏まえた、計画定め事の定期的な見直し

31.7%

施設系(通所型) 最新の知見を踏まえた、計画定め事の定期的な見直し

35.5%

必要な物資(利用者と従業員の水3リットル 食料3日分、等)を確保している

39.3%

居宅介護支援 最新の知見を踏まえた、計画定め事の定期的な見直し

18.8%

必要な物資(利用者と従業員の水3リットル 食料3日分、等)を確保している

19.3%


(介護労働安定センター 「事業所における介護労働実態調査 結果報告書」より作成)

緊急時に必要な職員を確保しているのは3割未満

感染症のまん延が発生した場合の、緊急時対応の備えについては、「感染想定(シナリオ)をつくり、必要な職員を確保している」が28.6%と低く、ここにも人手不足の影響が見て取れます。

感染症緊急時
(介護労働安定センター令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要についてより引用)

準備が進んでいない取り組みをサービス系統別で見ていきます。どのサービスでも「感染想定(シナリオ)を作って必要な職員の確保を計画している」が一番低く、訪問系サービスは25.3%、施設系(通所型)サービスは27.9%、居宅介護支援は13.8%となっています。

策定率が低い取り組み(緊急時)
サービス系統 取り組み内容 策定している事業所
訪問系 感染想定(シナリオ)を作って必要な職員の確保を計画している 25.3%
限られた職員数でサービスを提供するための業務の優先順位を整理している 42.9%
施設系(通所型) 感染想定(シナリオ)を作って必要な職員の確保を計画している 27.9%
限られた職員数でサービスを提供するための業務の優先順位を整理している 39%
居宅介護支援 感染想定(シナリオ)を作って必要な職員の確保を計画している 13.8%
限られた職員数でサービスを提供するための業務の優先順位を整理している 23.8%

(介護労働安定センター 「事業所における介護労働実態調査 結果報告書」より作成)

自然災害における業務継続に向けたBCP策定状況

8割の事業所が研修や訓練を実施または検討

自然災害の発生に対応するために、平常時に実施している取り組み(複数回答)としては、感染症対策と同じく「緊急連絡先(事業所内、関係行政、関係団体)を定めている」が最多の76.7%となりました。

また、「自然災害時の対応について話し合う機会」は策定を検討中も含めると85.2%、「平時における研修、訓練の実施」は策定を検討中も含めると83.1%となっており、これらの取り組みに対する意識の高さが伺えます。24年度に向けて、残りの約2割の事業所にも対応が求められます。

自然災害 平常時
(介護労働安定センター令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要についてより引用)

備えが進んでいない取り組みを、サービス系統別で見ていきます。施設系(通所型)では「ライフラインが被災した時の対応や代替策を定めている」が一番低く、35.2%です。

訪問系と居宅介護支援では「必要な物資(利用者と従業員の水3リットル 食料3日分、等)を確保している」が一番低く、それぞれ訪問系では27.6%、居宅介護支援では16.1%となっています。

策定率が低い取り組み(平常時)
サービス系統 取り組み内容 策定している事業所
訪問系 必要な物資(利用者と従業員の水3リットル 食料3日分、等)を確保している 27.6%
ライフラインが被災した時の対応や代替策を定めている 28.4%
施設系(通所型) ライフラインが被災した時の対応や代替策を定めている 35.2%
最新の知見を踏まえた、計画定め事の定期的な見直し 37.6%
居宅介護支援 必要な物資(利用者と従業員の水;3L 食料3日分、等)を確保している 16.1%
最新の知見を踏まえた、計画定め事の定期的な見直し 16.70%

(介護労働安定センター 「事業所における介護労働実態調査」より作成)

災害時に利用者の命を守る最低限の業務整理は4割未満

自然災害が発生した場合の緊急時対応については、「災害時に利用者の命を守る最低限の業務を整理している」が39.6%です。策定を検討中を含めると74%となり、多くの事業所が取り組もうとする意識を持っていますが、実際に策定まで至っている事業所の割合は低いことが分かります。

同じく、「職員を守る態勢を定めている」や「職員の参集基準を決めている」についても、策定を検討中を含めると7割を越えますが、策定まで至っている事業所の割合は4割にとどまってます。

自然災害 緊急時
(介護労働安定センター令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要についてより引用)

策定が進んでいない取り組みをサービス系統別で見ていきます。どのサービスでも「被災時(インフラ停止、職員不足など)の状況下でも利用者の生命を維持するための最低限の業務(優先業務)を整理している」が一番低く、訪問系サービスは34.4%、施設系(通所型)サービスは40.2%、居宅介護支援は20.7%となっています。

策定率が低い取り組み(緊急時)
サービス系統 取り組み内容 策定している事業所
訪問系 被災時(インフラ停止、職員不足など)の状況下でも利用者の生命を維持するための最低限の業務(優先業務)を整理している 34.4%
職員の参集基準を定めている 35.5%
施設系(通所型) 被災時(インフラ停止、職員不足など)の状況下でも利用者の生命を維持するための最低限の業務(優先業務)を整理している 40.2%
職員を守るための体制を定めている 42.5%
居宅介護支援 被災時(インフラ停止、職員不足など)の状況下でも利用者の生命を維持するための最低限の業務(優先業務)を整理している 20.7%
職員の参集基準を定めている 23.4%

(介護労働安定センター 「事業所における介護労働実態調査」より作成)

BCP策定の支援情報の活用状況

BCPの策定を支援するため、国もさまざまなサポートを行っています。そのうちの一つとして、厚生労働省のホームページに、 「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」という研修動画サイトがあります。こちらのホームページについて、「活用している」が9.0%、「閲覧したことがある」が27.2%、「知っているが閲覧したことはない」が32.3%、「知らなかった」が27.4%となっています。

サービス系型別で見ると、居住系サービス以外の全てのサービスで「知っているが閲覧したことはない」が最も高くなっています。

24年4月に間に合うよう、今のうちからBCPの策定を進めてみるのも良いかもしれません。介護経営ドットコムでも引き続きBCPに関する情報発信を続けていきます。

BCP策定支援情報の活用状況
(介護労働安定センター令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要についてより引用)

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