前回は訪問看護ステーションの管理者や経営者にとって最も大切な仕事の一つであるリテンション(人材維持・確保)を行うために、現場の管理者の方に扱いやすい理論としてハーズバーグの二要因理論をご紹介しました。今回は具体的な事例を用いて、この理論を活用してどのようにスタッフのモチベーションを上げていけばよいか解説していきます。
今回取り上げるのは、売上が急増したタイミングでスタッフの退職や退職意向の表明が相次いだ「訪問看護ステーションあさひが丘」の事例です。そんな時、事業所の新任管理者として着任することになったのが本ケースの主人公である山代さんです。
以下の記録は、本社スタッフが当時のあさひが丘のメンバー1人1人に行ったヒアリングの抜粋です。山代さんは管理者として、このヒアリング記録からどのように事業所を立て直すかを考えています。もしも自分が山代さんの立場であったのなら、どのように行動するだろうかと考えながら読んでみてください。
常勤の高見(立ち上げ時からのメンバー)の話 「うちは即日受け入れや土日休日対応もしているので、ドクターやケアマネからもとても感謝されてます。海野(前管理者)さんは“他のステーションから断られて困っている人を助けたい”と基本的に断らない方針なので、急な土日出勤とかもあります。すごく感謝されるので私もできるだけ断らないというのは良いと思うんですけど、時々は“それは断ってよ〜”と思うこともあります。私が受け持ちの利用者さんは責任持ってケアします」
パートの高橋(立ち上げ時からのメンバー。すでに退職)の話 「訪問看護の仕事は、今まで得てきた知識や経験を総動員するのが大変な部分もありますがとてもやりがいがあります。海野さんのケアについてのアドバイスは素早く的確でとても助かったのですが、ケア以外のところは全くこちらの話を聞いてくれません。知らないうちにシフトが変わっていたり。子どもが学校を不登校気味のためサポートしたいので辞めます」
(つるがやまさこ)合同会社manabico代表。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。看護師、保健師、MBA。大学病院(精神科)、訪問看護、事業会社での人事を経験後、株式会社やさしい手看護部長として訪問看護事業の拡大に寄与。看護師250人超の面談を実施し、看護師採用・看護師研修等の仕組みづくりをする。看護師が働きやすい職場環境作りの支援を目指し合同会社manabicoを立ち上げる。 【合同会社manabico HP】https://manabico.com※プロフィールは記事配信当時の情報です