前回に引き続き、「令和2年度介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター2021年8月23日公表)の結果を参照しながら、介護の人材問題について考えます。今回は、どうしたら採用がうまくいくのか、データをもとに検討していきます。
*参考:介護労働安定センターウェブサイト
まず、介護事業所の人材の充足状況を確認します。図1は人材不足を感じている事業所(大いに不足+不足+やや不足の計)の割合を経年で見たものです。この2年はやや減少している傾向がみてとれます。
とはいえ、訪問介護員80.1%、介護職員66.2%と多くの事業所が人材不足を感じている状況は変わりません。
不足している理由としては「採用が困難である」が86.6%(全体平均)となっており、深刻な採用難の問題を抱えていることがわかります。
それもそのはず、有効求人倍率が訪問介護員5.12倍、介護職5.16倍なのですから(全国社会福祉協議会・中央福祉人材センター・バンク,2021)、需給ギャップの大きさによるものであることは火を見るより明らかです。
こうした採用難の状況においても、実はうまく人材確保ができている事業所もあります。表1は、過去1年間に採用した人材についての評価です。これをみると、人数・質どちらも充足していない事業所が20.2%と最も多くなっていますが、人数・質ともに確保できている事業所も17.1%と2割近くあります。
人材確保がうまくいっている事業所とそうではない事業所の違いはどこにあるのでしょうか?
まず主な属性別に1年間の人材確保状況を見てみましょう。表2をご覧ください。「人数は確保、質には不満」および「人数・質ともに不満」の群では、サービス系列別には施設系(入所型)と居住系で、事業所規模別にみると規模が大きいほどその割合が大きくなっています。
茨城キリスト教大学経営学部准教授。博士(政策学)、MBA(経営管理修士)。人事労務系シンクタンク等を経て現職。公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査検討委員会」委員。著書に『福祉サービスの組織と経営』(共著)中央法規出版(2021年)、『介護人材マネジメントの理論と実践』(単著)法政大学出版局(2020年)など。