これまで3回にわたり、「会社の目指す方向性や目的に合った人を採用し、その人がより活躍できるような環境を整える」ための採用について、ヒントをご紹介してきました。
今回は、採用プロセスの第三段階である「定着」について説明をしていきたいと思います。
前々回触れたように、訪問看護ステーションにおいては普通、採用した人材は入職時のオリエンテーションや引き継ぎのための同行訪問等に従事します。そのため、新入社員が既存職員と同等の稼働率になるまでには、数カ月かかります。それまでの累積収支を黒字にするためには、少なくとも半年以上はかかると考えておきましょう。
また、採用にかかるコストは費用面だけではなく、研修や同行訪問、チーム内調整等に既存人員の時間的、精神的コストも多く割かれていると言えます。せっかく丁寧に教えたのにすぐに辞めてしまったということになれば、既存職員のモチベーションに与える影響も大きく、できれば避けたいところです。
このような理由から弊社では採用プロセスの中で定着について考慮すべき期間を「最低1年」と考えています。私の個人的な感覚になりますが、採用時のアンマッチによる離職は1〜3カ月の早期に起こり、それ以降の離職については支援体制に課題があることが多い気がします。
訪問看護ステーションの看護師の有効求人倍率は2019年時点で3.1倍となっており、とても採用が難しい状況にあります。そのため、求職者に選んでもらえるように働きやすさや人間関係の良さ、教育研修の充実ややりがい等、魅力的な募集要項を出している訪問看護ステーションが目立ちます。
しかし、離職率に目を向けると、病院の看護師の平均は10%程度ですが、訪問看護師は平均15%前後ととても高くなっています。この原因は、入職後になって「思っていたのと違った」という期待と現実とのズレの大きさによって引き起こされる衝撃―リアリティショック―にあるのではないでしょうか。
(つるがやまさこ)合同会社manabico代表。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。看護師、保健師、MBA。大学病院(精神科)、訪問看護、事業会社での人事を経験後、株式会社やさしい手看護部長として訪問看護事業の拡大に寄与。看護師250人超の面談を実施し、看護師採用・看護師研修等の仕組みづくりをする。看護師が働きやすい職場環境作りの支援を目指し合同会社manabicoを立ち上げる。 【合同会社manabico HP】https://manabico.com※プロフィールは記事配信当時の情報です