2022(令和4)年度の診療報酬改定・訪問看護改定項目まとめ

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2022年度診療報酬改定で実施される具体的な改定項目や新点数などの概要が明らかになりました。訪問看護に関しては、機能強化型訪問看護ステーションの要件厳格化及び評価額の引き上げや、小児への在宅医療提供を進めていくための連携先の見直し・対象年齢の引き上げ、専門の研修を受けた看護師による訪問看護を評価する加算の新設などが実施されます。

※22年4月更新:【2022年(令和4年)度診療報酬改定対応】訪問看護療養費の金額一覧

※関連情報:第516回中央社会保険医療協議会 総会 資料掲載ページ

中医協が2022年度診療報酬改定案を答申。点数表や施設基準は3月上旬

これまで1年間の議論を経て、中央社会保険医療協議会2月9日に2022年度診療報酬改定案を答申しました。これを受けて国は、3月上旬に正式な点数表や施設基準を示します。

以下が、訪問看護に関する改定項目と現時点で明らかになっている内容です。

訪問看護の具体的な改定項目とその内容

【24時間対応体制加算の算定要件緩和】

訪問看護療養費の「24時間対応体制加算」(6,400円/月1回)について、2つの訪問看護ステーションが連携し、要件を満たす場合の算定対象として、新たに以下を認める。

・「業務継続計画を策定した上で自然災害等の発生に備えた地域の相互支援ネットワークに参画している訪問看護ステーション」

※自然災害等の発生に備えた地域の相互支援ネットワークとは、次のア・イ・ウを全て満たすこと。
都道府県、市町村又は医療関係団体等が主催する事業であること。
自然災害や感染症等の発生により業務継続が困難な事態を想定して整備された事業であること。
都道府県、市町村又は医療関係団体等が当該事業の調整等を行う事務局を設置し、当該事業に参画する訪問看護ステーション等の連絡先を管理していること。

【訪問看護ステーションへのBCP策定義務化】

運営基準(省令)を改正し、指定訪問看護事業者に対し、感染症や災害が発生した場合に業務継続・早期の業務再開に向けた計画の策定などを以下の通り義務付ける。※2年間の経過措置期間あり

(業務継続計画の策定等)
指定訪問看護事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問看護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 指定訪問看護事業者は、看護師等に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 指定訪問看護事業者は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。

※介護保険法の規定に基づく省令では、2021年度介護報酬改定に伴い同様の対応が行われています。今回は、健康保険法の規定に基づく省令の改正です。

【機能強化型訪問看護療養費の算定要件厳格化・評価額の上乗せ】

(1)機能強化型訪問看護療養費1と2を算定する訪問看護ステーションの施設基準に「地域の保険医療機関、訪問看護ステーション又は住民等に対する研修や相談への対応について実績があること」を規定する。
※2022年3月31日時点で「1」か「2」いずれかの算定を届け出ている場合は、2022年9月30日までの経過措置期間を設ける。

(2)機能強化型訪問看護療養費1と2の評価を見直す。
・機能強化型訪問看護療養費1 現行12,530円→改定後12,830円
・機能強化型訪問看護療養費2 現行9,500円→改定後9,800円

(3)機能強化型訪問看護管理療養費1から3までの施設基準に、「在宅看護等に係る専門の研修を受けた看護師が配置されていることが望ましい」と新たに規定する。

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【画像1】機能強化型訪問看護ステーションの主な要件等(赤字が22年度改定での追加・変更点)

【訪問看護情報提供療養費の対象者及び情報提供先等の拡大】

(1)訪問看護情報提供療養費のうち、利用者の居住地がある市区町村か都道府県に情報提供した際に算定できる「訪問看護情報提供療養費1」(1,500円/利用者1人につき月1回)の情報提供先として、新たに以下を認める。
・特定相談支援事業者と障害児相談支援事業者

(2)訪問看護情報提供療養費1の算定対象者のうち「15歳未満の小児」を「18歳未満の小児」に引き上げる。

(3)「訪問看護情報提供療養費2」(1,500円/利用者1人につき各年度ごとに1回)の情報提供先を幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校等に高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校とする(高校や特別支援学校の高等部などを追加する)。

(4)訪問看護情報提供療養費2を算定している利用者に対する医療的ケアの実施方法等を変更した月は、当該月に1回だけ、同加算を新たに算定可能とする。

(5)訪問看護情報提供療養費2の算定対象者の年齢を15歳から18歳に引き上げる

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【画像2】訪問看護情報提供療養費の算定要件・算定区分など(赤字が22年度改定での追加・変更点)

【訪問看護指示書の記載欄の見直し】

2021年度介護報酬改定で、理学療法士等が訪問看護の一環として実施するリハビリテーションの時間・実施頻度等を訪問看護指示書に記載することとされたことを踏まえ、医療保険制度でも同様の対応を行うこととし、訪問看護指示書に記載欄を設ける。

【訪問看護基本療養費(I)ハ・(II)ハの算定要件の緩和(特定行研修修了者の追加)】

訪問看護基本療養費(I)ハ及び(II)のハの算定要件となる「褥瘡ケアに係る専門の研修を受けた看護師」の研修の範囲について、以下を追加する。
・学校、病院その他、厚生労働大臣が指定する機関において行われる特定行為区分に係る特定行為研修のうち、創傷管理関連の研修
※ 在宅患者訪問看護・指導料の3・同一建物居住者訪問看護・指導料の3でも同様の変更を実施

【専門管理加算の新設(専門の研修を受けた看護師が実施する訪問看護の評価)】

専門管理加算(各区分とも2,500円、月内の算定可能回数は1回)を新設する。

【算定要件】
厚生労働大臣が定める基準を満たしているものとして届け出た訪問看護ステーションで、緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア、人工膀胱ケアのいずれかに係る専門の研修を受けた看護師または特定行為研修を修了した看護師が、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行う

【算定区分】

緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が計画的な管理を行った場合(悪性腫瘍の鎮痛療法若しくは化学療法を行っている利用者、真皮を越える褥瘡の状態にある利用者(医科点数表の区分番号C013に掲げる在宅患者訪問褥瘡管理指導料を算定する場合にあっては真皮までの状態の利用者)又は人工肛門若しくは人工膀胱を造設している者で管理が困難な利用者に対して行った場合に限る。)


特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行った場合(医科点数表の区分番号C007の注3又は区分番号I012-2の注3に規定する手順書加算を算定する利用者に対して行った場合に限る。)

【施設基準】
次のいずれかに該当すること。

緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が配置されていること。


保健師助産師看護師法第三十七条の二第二項第五号に規定する指定研修機関において、同項第一号に規定する特定行為のうち訪問看護において専門の管理を必要とするものに係る研修を修了した看護師が配置されていること。

※ 在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料でも同様の加算を新設。

【訪問看護指示料への手順書加算を新設】(特定行為の手順書交付への評価)

医療機関が算定する訪問看護指示料に手順書加算を新設する(150点、6カ月に1度に限り算定)

【算定要件】
・患者の診療を担う保険医療機関の保険医が、診療に基づき、特定行為の必要性を認め、患者の同意を得て、患者が選定する訪問看護ステーション等の看護師(特定行為研修修了者)に、手順書を交付する。

・訪問看護指示料の手順書加算の対象となる特定行為の範囲は、以下のアからキまでのもの。
気管カニューレの交換
胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
膀胱ろうカテーテルの交換
褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
創傷に対する陰圧閉鎖療法
持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
脱水症状に対する輸液による補正
※ 精神科訪問看護指示料にも同様の加算を設ける。

*参考情報:保健師助産師看護師法第37条の2第2項第1号に規定する特定行為及び同項第4号に規定する特定行為研修に関する省令等について(厚労省ウェブサイト)

【訪問看護ターミナルケア療養費の算定要件緩和】

訪問看護ターミナルケア療養費1( 25,000円、看取り介護加算等を算定していない利用者)と訪問看護ターミナルケア療養費2( 10,000円、看取り介護加算等を算定している利用者)の各算定要件にある、利用者の「死亡日及び死亡日前14日以内に、2回以上指定訪問看護を実施」の「指定訪問看護」の範囲に以下を追加する。

・退院支援指導加算の算定に係る療養上必要な指導を実施している場合

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【画像3】訪問看護ターミナルケア療養費の対象者と主な要件(第500中央社会保険医療協議会・総会資料を抜粋したものを編集部で一部加工)

【複数名訪問看護加算の要件緩和】

訪問看護基本療養費(I)(II)の複数名訪問看護加算の区分ハ・ニの対象範囲について、看護補助者との同行訪問に加え、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士のいずれか(=「その他職員」)との同行も対象とする。

※この改正によって、看護職員(保健師、助産師、看護師、准看護師)とその他職員の同行訪問も週3日まで算定が可能になる

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【画像4】現行の複数名訪問看護加算の枠組みの変更点(※同一建物内の利用者の人数に応じた評価区分については後述)

【退院支援指導加算の評価の在り方の見直し(長時間の指導を行った場合の評価を新設)】

訪問看護管理療養費の退院支援指導加算(6,000円)について、長時間にわたる療養上必要な指導を行ったときの評価を新設する(8,400 円、対象者は長時間訪問看護加算と同様)。

【同一建物居住者に対する訪問看護に係る評価区分の統合】

訪問看護基本療養費の難病等複数回訪問加算や複数名訪問看護加算など、同一建物内の利用者の人数に応じた評価区分を設けている加算について、同じ金額の評価区分を統合する。
(※画像4参照)

※同一建物居住者訪問看護・指導料の「難病等複数回訪問加算」、精神科訪問看護基本療養費及び精神科訪問看護・指導料の「精神科複数回訪問加算」、同一建物居住者訪問看護・指導料の「複数名訪問看護・指導加算」、精神科訪問看護基本療養費の「複数名精神科訪問看護加算」、精神科訪問看護・指導料の「複数名精神科訪問看護・指導加算」でも同様の対応を実施

【遠隔死亡診断補助加算の新設】

ICT を活用した在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が、医師が行う死亡診断等を補助した場合の評価として、訪問看護ターミナルケア療養費に遠隔死亡診断補助加算(1,500円)を新設する。

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