このコラム(連載)は、高齢者社会ラボによる『介護の質の評価に関する調査』(以下「本調査」)の結果から、私が「気になるポイント」を示しながら、介護支援専門員(以下「ケアマネジャー」)の実務に役立つ論考を行うものです。
私自身、ケアマネジャーとしての実務経験もあり、実践現場のケアマネジャーのみなさんは今も「仲間」だと思っていますから、その意味であえて「耳の痛い」話を含めてお示ししている連載です。
今回(第4回目)は、前回に引き続き、ケアマネジャーの中核的な業務と言ってもよい「アセスメント」について、その「情報収集」における課題について考えてみます。
私は、いくつかの保険者(市町村)で地域ケア個別会議のアドバイザーを務めたり、介護給付費適正化事業(「ケアプランの点検」など)の委託を受けたりすることがあります。そのため、ケアマネジャーのみなさんが作成したアセスメント表やケアプランなどに直接触れる機会が多く、事例検討としてそれらの内容について議論することがしばしばあります。
その際、気になっていることのひとつに「ケアマネジャーが利用者の口腔機能や栄養状態を見過ごしている」という点があります。口腔機能は、ケアマネジャーであれば誰しも知っている“標準23項目1)”に含まれています。また、栄養状態は、 “フレイル”に影響を及ぼす要因のひとつとして近年対策の重要性が強調されています。高齢者介護・医療の専門職が注意しておかなければならない常識的なポイントです。したがって、ケアマネジャーがアセスメントを実施する際、これら2点の情報収集をしておくことは不可欠な点と言ってよいはずです。
しかし、私が経験する事例検討では、誤嚥のある高齢者のアセスメントにおいて、口腔内の状態や口腔の機能を確認しないまま食事形態のことばかりを考えているケアマネジャーは珍しくありません。また、筋力低下をきたしている高齢者のアセスメントにおいて、栄養状態を確認しないまま筋力増強訓練のための通所サービスをケアプランに位置付けているケアマネジャーも少なくありません。
これを裏付けるかのようなデータが本調査で報告されています。
社会福祉士、介護支援専門員。1986年から社会福祉・医療分野での相談援助の実践に従事。医療ソーシャルワーカーや居宅介護支援事業所での介護支援専門員の実務経験を経て、 2005年から東洋大学で福祉専門職養成教育と介護保険制度・ケアマネジメント等の研究に従事。現在、東洋大学福祉社会デザイン学部教授。