前回は、訪問看護ステーションで良く起こるスタッフ間の仲違いや雰囲気の悪さの解決のために役立つステーションの状態を診断するツール『GRPI(グリッピィ)モデル』をご紹介しました。
今回はその具体的な事例を挙げて、これをどのように活用するかについて解説していきます。以下はある訪問看護ステーションの管理者とスタッフの会話例です。ぜひその様子を頭に思い浮かべながらお読みください。訪問看護管理者の西川と看護師の田中の会話が行われています。ベテラン看護師の田中が話題のようです。
訪問看護管理者の西川が事務所の扉を開けると、入れ替わりにベテラン看護師の田中が訪問に出かけた。事務所の中では看護師の中村が真っ赤な顔をして仁王立ちしていた。パート看護師は気まずそうな表情でそそくさと退勤していった。
中村「西川さん、田中さんをどうにかしてください。普段は自分の方がベテランだからって威張ってるくせに都合の良い時だけ『自分は歳でパソコンの入力は若い人の方が早いから』って計画書の入力とか押し付けてくるんですよ。西川さんからも田中さんに注意してくださいよ。先月だって報告書が終わらなくて残業続きだって言うからいくつか代わりに入力してあげたら、内容にケチつけて文句まで言うんですよ。じゃあ、自分で最初からやってくださいって思います。私だってまだ訪問看護始めて1年で、どうやって新規の人を受け入れるかとか営業はどうするかとか、病院との連携とか色々まだ分からないことばっかりなのに」
西川「最近は利用者さんが増えてきて売上目標がようやく達成できそうなの。でもそのせいで、私も契約とかサービス担当者会議とかで、ちゃんと中村さんのフォローできてなくてごめんなさいね。田中さんも確かに事務作業は苦手だけど、最近は緊急対応もやってくれてるし訪問が忙しいって言うのはしょうがないのよ。チームなんだから、みんなでフォローしあってやっていきましょうよ」
中村「売上、売上って・・・うちの訪問看護ステーションは何をしたいんですか?それに、自分のことしか考えてないような人とはチームなんかできません」
西川「何がしたいって・・・もちろん利用者の在宅生活の継続のために訪問看護しているんじゃない。売上目標は降ってくるものだもの。私だって大変なのよ」
このケースのようなスタッフ間の仲違い、そこから来る雰囲気の悪さは、残念ながら訪問看護ステーションでは良く見かけられる問題です。では、西川は良いチームを作っていくためにどのようにアプローチしていくべきでしょうか?
(つるがやまさこ)合同会社manabico代表。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。看護師、保健師、MBA。大学病院(精神科)、訪問看護、事業会社での人事を経験後、株式会社やさしい手看護部長として訪問看護事業の拡大に寄与。看護師250人超の面談を実施し、看護師採用・看護師研修等の仕組みづくりをする。看護師が働きやすい職場環境作りの支援を目指し合同会社manabicoを立ち上げる。 【合同会社manabico HP】https://manabico.com※プロフィールは記事配信当時の情報です