介護業界の人材マネジメントに関する研究をしている菅野雅子と申します。本コラムでは、介護労働実態調査のデータ等を参照しながら、介護人材の確保・定着・育成等のテーマについて検討していきたいと思います。
2021年8月23日に介護労働安定センターから「令和2年度介護労働実態調査」の結果が公表されました(有効回答数9,244事業所・回収率52.7%)。
*介護労働安定センターウェブサイト(トップページ)
この調査で毎年話題に上るのが「離職率」です。令和2年度調査では、2職種計(訪問介護員、介護職員)の離職率は14.9%でした。離職率は低下傾向にあり、今回は平成14年度の調査開始以来、最も低い離職率となりました。
他産業に目を向けてみますと、厚生労働省「令和元年雇用動向調査」によれば、全産業平均の離職率は15.6%(前年度14.6%)と少し上がっています。
また非正規労働の割合が多い生活関連サービス業・娯楽業は20.5%(前年度23.9%)、宿泊業・飲食サービス業は33.6%(前年度26.9%)と高い数値となっており、介護サービスの離職率の低さがよくわかります【図1】。
介護業界全体として、労働環境の整備が進み人材が定着していることが推察されます。とはいえ、全体の平均値だけ見て「上がった・下がった」と言ってもあまり意味がありません。次に、もう少し細分化してデータを見ていきたいと思います。
先に示した2職種計の離職率を、主な事業所属性と職種・雇用形態別に見ていきましょう【表1】
茨城キリスト教大学経営学部准教授。博士(政策学)、MBA(経営管理修士)。人事労務系シンクタンク等を経て現職。公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査検討委員会」委員。著書に『福祉サービスの組織と経営』(共著)中央法規出版(2021年)、『介護人材マネジメントの理論と実践』(単著)法政大学出版局(2020年)など。