訪問看護ステーションの規模拡大を「目指さない」経営に必要な3つの備え

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これまで様々な角度から訪問看護事業に関わってきた中で、たくさんの経営者さんにお話を伺ってきました。経験上、訪問看護ステーションの経営方針を大きく分けると「規模の拡大を積極的に目指すか否か」の2つがあると考えています。

今回は、それぞれの戦略に応じて経営者が実践すべきことをご紹介します。まずは、事業規模を“現状維持”する場合について取り上げます。

訪問看護ステーションの成長ステージと成長戦略を考えるタイミング

訪問看護ステーションの成長ステージには、まず【訪問看護ステーションの開設を決める】【看護職員が2.5人以上を確保し、無事開設する】までの時期があります。

次に、【単月黒字を達成して安定運営ができるようになる】。そしてその後、【損益分岐点を超えて安定して運営ができるようになった段階】で経営者は、訪問看護ステーションの規模について「現状維持をしたいのか」、「拡大したいのか」を選択していくことになります。

この選択によって、法人は全く異なった道を歩むことになります。現状維持といっても、ただ漫然と存在するのではなく、訪問看護ステーションの在り方として、積極的に小規模を維持するのであれば、規模拡大を目指す場合以上に工夫が必要になります。

ここでまず重要なことは、自身が「経営者としてどうしたいのか」を明確にすることです。事業運営が安定するまでは、無我夢中で走ってきたことと思います。しかし、もし、今、何かしらの停滞感を感じているのであれば、一旦立ち止まってみましょう。そして、自社の置かれた状況を客観視して、「自分はどうしたいのか?」「そのために何が必要なのか?」を考えてみてください。

では、「規模拡大は目指さず、現状を維持する」という選択をした場合は何をすべきでしょうか。

訪問看護ステーションの規模を“現状維持する”という選択

まず、訪問看護ステーションの規模について「現状を維持する」という選択をしたら次の3つのことを考えておく必要があります。

  1. 現状維持の定義とそのリスクの共有について
  2. 組織を維持するためにすべきこと
  3. ステーションの“終わり方”を考えておく

それでは、それぞれについて説明をしていきます。

1.”現状維持”について定義し、そのリスクを共有する

まずは、そもそも現状維持とは何を指すのかを定義し、その上で起こりうる課題等についてメンバー全員で共有しておく必要があります。例えば、現状、看護職員が3人であるステーションの“現状維持”の定義が「今いる人員で無理ない範囲で訪問をしていく」なのであれば、お給料は今以上に上がることは無いかもしれませんし、誰か一人でも休職・退職してしまったらステーションも休廃止となってしまいます。そういったリスクも含めて考えた上で、どのような組織を維持したいのかを考えていく必要があります。

2.組織を維持するためにすべきこと:外部との積極的な連携

次に、組織の現状維持のために外部と積極的に連携していくことが重要です。例えば、新しい人員を積極的に採用しないという方針であれば、ケアマネジャーからの新規依頼が増えてきた際に、自ステーションのみでは対応が難しくなる場面が出てきます。しかし、そんな依頼を断ってばかりいると次第に新しい依頼は来なくなってしまいます。そこで、自分のステーションで新規依頼を受けるのが難しい際に新規受け入れ可能な信頼できる他近隣ステーションを紹介することで、「あそこに相談すればどうにかなる」という信頼をケアマネジャーから得ることができ、たとえ自社で断っていても新規依頼の相談が減りにくくなります。

また、以前、採用について取り上げた時に、新しい職員が入るメリットは売り上げや利益拡大だけではなく組織の活性化につながることであると説明しました。組織や集団は「同質」「似た人」「共通の目標を持った人」を好む傾向があります。それに対し、新しい職員を迎え入れることは、組織に良い意味での緊張感を生み出し、閉塞感と硬直性を打ち破ってくれます。

それでは、定期的に新しい職員を受け入れない場合には、どのように閉塞感や馴れ合いを防いでいけば良いのでしょうか。このようなリスクへの対策としても、積極的な外部との連携は有効です。外部の勉強会等へ参加し、外部組織の視察をするなど、情報を積極的に取り入れましょう。そうすることによって自組織に新たな仕組みを導入したり、新しい取り組みを実践したりできます。

3.訪問看護ステーションの“終わり方”を考えておく

最後に、利用者や地域への責任として自ステーションの終わりについても考えておくことも重要です。もし既存職員だけで新しく職員を採用しないというのであれば2.5人の最低人員を下回ったら廃止するのかどうかを決め、その際に既存利用者の訪問を引き継ぎ依頼できるような関係性を他ステーションと築いておく必要があります。

まとめ

以上のように、事業規模の“現状維持”という選択をする場合でも、積極的な運営を続ける場合は決めておくことが多岐にわたり、工夫も必要になります。もちろん、当初は現状維持をしようと考えていたが、「やはりもう少し人員を増やそう」と方針変更をすることもあるでしょう。その際には、既存職員が納得できるよう説明をして理解を得なければ、反発や離職につながってしまう可能性があるため慎重に進める必要があります。

今回は訪問看護ステーションを立ち上げて安定運営が実現した後の選択肢のうち、現状維持について説明してきました。次回は規模拡大を目指す場合について説明していきます。

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