LIFEの現状のシステムには問題も多いが、活用の仕方によって利用者の見方が変わり、職員のスキル向上ひいては介護業界全体のサービスの質の底上げにつながる。今後の制度改正との関係を交えながら、実践的なLIFEの活用についてお伝えしよう。
5月30日から提供された事業所フィードバックを見ると、現在は科学的介護推進体制加算の状況だけが分析されている状況だが、今後は各区分の集計グラフが提供されて行くだろう。
しかし、服薬や誤嚥性肺炎、褥瘡などの集計においては、中間月の送信データが、直近月の集計に反映されるなどによって、あり得ない数値になっている。そのため、LIFE関連の加算の算定要件であるPDCAサイクルへの活用については、「各事業所において、可能な範囲で御活用ください」と集計条件留意事項に記された。
ただし、PDCAサイクルへの活用を行わないと、今後の運営指導において加算の返還指導を受けることになるので注意が必要だ。PDCAサイクルへの活用とは、Plan(計画の策定)Do(サービスの提供)Check(LIFEへのデータ提供)Action(検討)のプロセスを廻し続けることである。LIFEに関連する全ての加算は、このプロセスを廻し続けるプロセスを評価する加算である。
また、LIFE活用のモデル事業が訪問サービスと居宅介護支援で2021年10月から実施され、その経過が報告された。次期介護報酬改正での加算創設を念頭においたものである。
(*関連記事:訪問系・ケアマネ事業所でのLIFE活用に向けモデル事業を実施へ)
このモデル事業は、さらに実施事業所数を増やして継続されている。また、24年度以降は、LIFEと医療データベースの連携も予定されている。それに伴って、23年度より新システムの開発が始まり、24年度から稼働の予定だ。つまり、現システムでのLIFEの運用は、あと2年を切っている。
そう考えると、集計に反映されるなどで、あり得ない数値になっている問題は、新システムでは修正されるとしても、現システムでは放置される可能性が高いとも言える。LIFEを活用する場合は、それらの問題があることを認識した上での活用が求められる。
現状では、単にLIFE加算を算定するだけの介護施設、事業所も多いのが現実だ。一年以上に渡って、フィードバック票が不十分であったために、致し方ない部分があることは理解できる。しかし、長い時間介護を提供する中、利用者への新たな気づきが減り、サービスを提供する時間だけ利用者に向き合っている施設や事業所も多い。これでは利用者の“正面”しか見えてこない。
小濱介護経営事務所 代表。一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。一般社団法人介護経営研究会 専務理事。一般社団法人介護事業援護会理事。C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。