介護事業所の生産性向上を進めるために、補助事業を実施するなどして、ICTやロボットといったテクノロジーの導入支援に力を入れる自治体の存在が目立つようになりました。ただ、この取り組みには地域によって温度差が見られるのも事実です。都道府県に設置されている基金の使い道などを検討する厚生労働省主催の会議では、LIFEの本格運用などを背景に、ICT化のニーズが拡大していることなどとして事業者団体からの訴えがありました。
厚労省は、10月11日の医療介護総合確保促進会議で、地域医療介護総合確保基金の各都道府県への交付額と執行状況(どのように使われたか)を報告しました。
地域医療介護総合確保基金とは、2014年の消費増税による財源を活用して都道府県の財政を支援するために創設された制度で、その名の通り、都道府県や市区町村による医療や介護の整備に関する事業に使い道が限定されています。
都道府県が事業計画を立て、それに応じて財源の3分の2が国から交付される仕組みで、議会などを通じて年度ごとの規模や使い道が決められる通常の予算と異なり、積み立てなどをして年度をまたいだ事業を進めることができます。
介護分野で認められている基金の使い道は、「介護施設等の整備に関する事業」と「介護従事者の確保に関する事業」に大別できます。
このうち、介護施設等の整備に関する事業として認められている取り組みは、地域密着型サービスの整備、介護保険施設等の修繕・耐震化、訪問看護ステーションの大規模化、介護施設等の大規模修繕の際にあわせて行う介護ロボット・ICTの導入支援、特養のユニット化の支援、介護施設等における新型コロナウイルス感染拡大防止対策支援事業などです。
一方、介護従事者の確保に関する事業には、介護就労に関する啓蒙活動、研修受講の支援、外国人人材の受け入れ体制整備、介護分野の就労に向けた支援金の貸付などが含まれています。
*2021年度の基金の対象メニューに関する厚労省通知:リンク
各事業の対象のうち、どの取り組みを実施するかは都道府県の裁量に委ねられているため、基金の使い方には都道府県の問題意識や姿勢が映し出されるといえます。
同会議では、これまでもこうした基金の使い方について振り返りや検討を重ねてきました。
10月11日の会議で厚労省が示した資料のうち、2020年度に介護分の財源として国から各都道府県に公布された金額を事業区分別に見ると、全国ベースでは介護施設等の整備に関する事業が74.1%と圧倒的な割合を占めています。
【グラフ】第15回医療介護総合確保促進会議資料(2021年10月11日)より抜粋
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