2021年度の介護報酬改定の効果や、それにまつわる課題を把握するべく厚生労働省が動き出しています。LIFE(科学的介護情報システム)の導入効果や現状の課題について把握するための調査研究では、介護事業所を対象としたアンケートが11月5日までの間に実施される予定です。そこで得られた結果は2024年度介護報酬改定の検討材料となります。
調査について最終的な検討を行った9月27日の社会保障審議会・介護給付費分科会では、LIFEにまつわり顕在化してきた課題として、データ入力にかかる負担が大きく「ほとんどの施設で時間外労働が強いられている」といった状況や実地指導への不安の訴えがありました。
2021年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査のうち、改定の目玉と受け止められているLIFEの活用については、
(1)事業所の取組状況とその効果・課題の把握(2) 訪問系サービスや居宅介護支援事業所での活用可能性の検証
の大きく2つの目的が定められています。
まず、(1)の導入効果や課題についての調査概要は以下の通りです。
【調査対象】 ・LIFE に関連した加算を算定している施設・事業所(約5,000カ所) ・2021年 9 月までに LIFEシステムへの登録がない事業所・施設(LIFE へのデータ登録が 1,000 件以上あるサービスの中から抽出。約2,500箇所)
※いずれも2021年度介護報酬改定でLIFEへのデータ提出やそのフィードバックの活用が算定要件となっているサービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、通所介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション)
【調査方法】 ・対象事業所それぞれにアンケートを実施するほか、「効果的にLIFEを活用している」事業所・施設と「LIFEの活用に介して課題を感じている」事業所・施設にそれぞれヒアリング。
また、(2)の調査概要は以下の通りです。
【調査対象】 ・訪問介護、訪問看護、居宅介護支援各事業所(約10カ所ずつ) 【調査方法】 ・モデル事業所を募集し、LIFE へのデータ登録(科学的介護推進体制加算の項目)を実施し、フィードバック票の提供と、調査検討組織による「技術的助言」等を行った上で、ケアの質の向上に向けた取り組みを実施してもらう。
※居宅介護支援事業所は、通所介護などのサービスでLIFEにデータ提出を行っている利用者を担当するケアマネジャーがいる事業所が対象
・その後アンケートやヒアリング調査で活用の具体的なユースケースや課題を把握する。
*関連記事:訪問系・ケアマネ事業所でのLIFE活用に向けモデル事業を実施へ
このほかに、(1)(2)にまたがって介護保険総合データベース(介護給付費明細書や要介護認定などの情報)やLIFEへの登録データの分析も行われ、その結果として得られた知見が公開され、介護給付費検分科会でも共有されます。
介護給付費分科会に先立って開かれた介護報酬改定検証・研究委員会の議論では、同調査で介護事業所の請求ソフトの導入やICT化の状況を把握する必要性などが指摘されていました。
こうした意見を受けて介護給付費分科会で示された調査票案は、質問項目が一部変更されています。
【画像】第203回社会保障審議会介護給付費分科会資料より調査票案の一部を抜粋(訪問系サービス事業所票)
なお、21年度改定の影響や課題の調査は、同時期に「介護医療院におけるサービス提供実態」「文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減」「福祉用具貸与価格の適正化」についても実施されます。
介護給付費分科会では、事業者を代表する委員らからLIFEの入力負担を訴える意見が目立ちました。
小泉立志委員は、自らが所属する全国老人福祉施設協議会の会員にLIFEの導入状況などを調査し、その結果で、会員の介護福祉施設等が主に下記を課題に感じていたことが判明したと報告しました。
・手入力でLIFEへの入力作業の負担が大きい
介護経営ドットコムの記事を制作・配信している編集部です。日々、介護事業所を経営する皆さんに役立つ情報を収集し、発信しています。