事業継続、事業の成長・拡大のためにどうやって売上を上げていくかは訪問看護事業の経営者、管理者にとって永遠のテーマではないでしょうか。
今回から、複数回にかけて「売上を上げていくためにどういった考え方をしていく必要があるのか」についてお伝えしていきます。
皆さんは売上を上げるために普段どういった取り組みをされていますか?
ほとんどの方は新規の依頼を獲得するために居宅介護支援事業所や病院に営業周りをしたり、チラシを持って行ったりすることをイメージするのではないでしょうか?
しかし、それは売上を上げるための1つの手段でしかありません。
まず自事業所がどういう売上の上げ方をすべきなのか「売上」を構成している要素全体を見ながら考え、取り組む必要があります。
では皆さんに質問です。 売上は何から構成されているでしょうか?
売上は大きく分解すると
で構成されています。
まだこれだと抽象的なのでさらに因数分解していきます。
と、売上はこの①~⑤まで分解して考えることができます。
そのため、売上を上げるためには①~⑤のどの要素を上げていく必要があるのかを検討していくことが大切です。まずは自事業所における上記の数字がどういう状況になっているかを把握しましょう!
訪問看護は介護保険を使うか、医療保険を使うかによってサービスの値段が異なります。
介護保険の場合はさらに
・職種が看護職であるか、リハビリセラピストであるか ・対象者が要支援者であるか、要介護者であるか ・サービスの提供に要した時間
によってそれぞれ異なります。
以前の記事『介護報酬・診療報酬改定とその先を見据えた訪問看護事業所運営の戦略』
の中でもお伝えしましたが、報酬改定の影響が大きいのがこの単価の部分であり、特に近年の改定では看護とセラピストで大きく単価に差が出てきています。
そこでまず皆さんに把握して頂きたいのが、
看護職員やセラピストがそれぞれどれくらいの訪問件数・時間を行っていて、また医療保険、介護保険(要支援、要介護)の方にどれくらいの割合で訪問しているのかです。
というのもその内容によって何を改善すべきかが変わるからです。
例えば、リハビリテーション特化型の訪問看護事業者から、2021年1月から2021年10月までじわじわと訪問単価が下がってきているという相談がありました。8,000円台後半だった単価が今では7,000円台後半になっています。
リハスタッフは20名弱、看護スタッフは10名弱の規模としては大きい事業所です。
その事業所からの訪問件数について割合を確認したところ、2021年1月は介護:医療=7:3だったのが10月の時点では8:2まで介護保険中心になっていました。また、介護保険の中をさらに見ていくと要支援の占める割合が1割から2割に変化していました。リハが中心の訪問かつ、介護保険の比率が増えている事で減算対象となっており単価が下がってきていたのです。
しかし、対策はどうしているかというと、居宅へのチラシ配りやあいさつ回りしか行えていませんでした。こうした状況を受け、すぐに経営陣、責任者とで会議を開き医療の訪問件数をどうやって上げていくか、会議が開かれました。
このケースでは、介護保険の新規をどんどん増やす活動していると単価は下がり続けますし、また来年の4月以降要支援の単価がさらに下がるので単価が6,000円台後半まで下がってしまう可能性も見えていました。
こういったようにただ新規を増やすのではなく、どんな新規を増やすのか、そのためにはどういう戦略を立てた方が良いのかをしっかりと現状を確認したうえで動き出すことが重要なのです。
訪問看護は件数と時間によって単価が異なります。
1件の訪問で考えても、介護保険だと30分の訪問と60分の訪問では単位が異なります。そのため自事業所の
・訪問1件の単価はどれくらいなのか ・1時間当たりの売り上げはどれくらいなのか
を把握し、年間を通して訪問回数当たり・時間当たりの単価が上がってきているのか、あるいは変わらないのか、下がってきているのかを見極める必要があります。
注意が必要なのは以下の項目です。
上記に当てはまる場合は訪問単価がどんどん下がっていくため、改善が必要になってきます。
では実際に訪問単価を上げるためにどういう取り組み、考え方が必要かというと
(1)看護は60分でケア提供する(30分訪問を減らす、あるいは30分から60分に変更) (2)セラピストは40分でケア提供する(60分だと減算になるため) (3)医療保険と介護保険の訪問件数の割合を5:5のバランスにする
です。
(1)、(2)に関しては
あくまでご利用者様、ケアマネジャーや医師の意向があるため必ずしもこちらの希望の時間で提供できるとは限りません。しかし、看護であれば60分、セラピストであれば40分の訪問を提供するためにはどうするのか、またその時間の中でどういったケアができるのかを常に考え、まずは提案していくという姿勢が大切です。
言われるままに指定された時間のケアを提供していてはいけません。
ご利用者様の意向に関しては、そもそも本人には、どういった訪問看護を受けられるかは分からないので、それぞれの感覚に頼って希望するサービス提供時間を指定されます。
また、ケアマネジャーは大抵の場合、ご利用者様が受けている介護保険サービス全体の単位数を見ながら、訪問看護をどれだけ入れることができるかという視点でサービス提供時間を指定します。
さらに医師はご利用者様やケアマネジャーの意向に沿ってサービス提供時間を指定する場合が多いです。
それぞれの立場に置かれた人がそれぞれの基準で提供時間を指定しているため、本来提供すべきケアの内容やそれにかかる時間などは二の次になっている事が多いのです。
訪問看護の現場で、「ケアプランには30分では終わりきらないケア内容が組まれている」「ご利用様は、実際はもう少し長い時間を掛けたケアを受けることを希望されている」などと感じたことがある方も多いのではないでしょうか?
こうしたギャップを解消するにはまずはこちらから、なぜサービス提供時間を60分とすべきなのか、あるいは40分とすべきなのか、その中でどういった事が出来るのかなどを伝え、提案していく事が大切です。
そこでもし30分でサービス提供をしているケースがあれば、担当看護師で再度看護内容を見直しその結果をケアマネジャー、ご利用者様にお伝えして30分から60分訪問に変更をしてもらいましょう。
(3)に関しては
先に紹介した『介護報酬・診療報酬改定とその先を見据えた訪問看護事業所運営の戦略』
に詳しく記載していますのでご覧頂けたらと思います。 また、医療の訪問件数を増やす方法については別の機会にお伝えしていきます。
まずは自事業所の状態を把握することが大切です。
やみくもに新規の依頼獲得に動くのではなく、自事業所の訪問単価が下がってきているのか、上がっているのか、もし下がっているのならなぜ下がっているのか、どうやって改善した方がいいのかなどの現状分析をしっかりして売上を上げていく戦略、対策を練っていきましょう。
のぞみ医療株式会社取締役。ビジケア株式会社経営企画担当者。看護師、保健師。平成22年大阪大学医学部附属病院でICU、精神科勤務。平成26年開業医を育てる院長のもとで、経営・会計学を学ぶ。平成29年-令和2年、ビュートゾルフ練馬富士見台に管理者として勤務、同時に数社の社外CFO、COOとして経営企画、財務を担当。令和1年ビジケア株式会社に参画。令和3年のぞみ医療株式会社取締役に就任。