2024年度介護報酬改定項目を示す社会保障審議会・介護給付費分科会の審議報告が12月19日にまとまりました。
今回の改定では、介護現場におけるICT機器などの活用を推進する施策が幅広いサービスで導入されます。とりわけ、最後まで反対意見が多かったのが、特定施設における人員配置基準の「特例的緩和」です。結果として要件の緩和を受けるにはかなり複雑な要件を満たす必要があります。厚生労働省の担当課長は、審議報告のとりまとめ作業に入る前の段階で、この施策の意義について説明していました。
実際に確定した要件と厚労省の考え方についてご紹介します。
特定施設の人員配置基準の特例的緩和が認められる条件とは
テクノロジー等の活用(見守り機器やインカム、記録用のICTツール)などを導入する特定施設の「人員配置基準の緩和」については、これまでの分科会で複数の委員から「慎重に判断すべき」との意見が出ていました。これまで示されてきた実証データが不十分であったことなどがその理由です。
そうした意見を受けて厚労省は、「介護サービスの質の確保」「職員の負担軽減」への取り組みが認められる指定特定施設にのみ限定的に緩和を認めることを強調し、詳細な要件を明示していました。
まず、19日に公表された「審議報告」で示された改定内容を整理します。
人員基準に関する見直しの詳細な内容
人員配置基準の特例的な柔軟化は、生産性の向上に先進的に取り組む特定施設に限って認められるものです。具体的には、以下の条件を満たす指定特定施設のみ、施設に配置する看護職員及び介護職員の配置すべき人数が常勤換算で「3:0.9」以上に緩和が認められます。
- 利用者の安全・介護サービスの質の確保、職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会(24年度改定で短期入所系サービス、居住系サービス、多機能系サービス、施設系サービスを対象に義務化される項目。3年間の経過措置あり)を開催し、生産性向上の取組みに必要な安全対策について検討している。
- 「業務の効率化、質の向上、職員の負担の軽減に資する機器(※)」全てを導入するとともに、業務の明確化や見直し、役割分担(いわゆる介護助手の活用等)を行うなど、介護サービスの質の確保、及び職員の負担軽減に対する取り組みを実施している。
※)①見守り機器、②インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器、③介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る)
※)①はすべての居室に設置、②はすべての介護職員が使用すること。
これらの条件に加え、基準緩和を受けるには、以下の要件を踏まえて都道府県に届け出が必要です。
(ア)
人員配置基準の合計数について、常勤換算で「3:0.9」以上とする。基準の適用には、(イ)の試行結果として指定権者(都道府県)に届け出た人員配置を限度とする。
(イ)
- 人員配置基準の柔軟化の申請には、テクノロジーの活用や職員間の適切な役割分担の取り組み等を少なくとも「3カ月以上」試行する(試行期間中は通常の人員配置基準を遵守)。
- 実際にケア等を行う多職種の職員が参画する委員会にて、安全対策や介護サービスの質の確保、職員の負担軽減が行われていることをデータ等で確認する。
- 当該データを指定権者に提出する。
(ウ)
安全対策として、以下を実施する。
- 職員に対する勤務・雇用条件への配慮(十分な休憩時間の確保等)
- 緊急時の体制整備(近隣在住職員を中心とした緊急参集要員の確保等)
- 機器の不具合の定期チェックの実施(メーカーとの連携を含む)
- 職員に対する必要な研修
- 訪室が必要な利用者に対し個別の訪室実施
(エ)
「介護サービスの質の確保」について、以下の試行前後の変化を比較して確認する。
- 介護職員の総業務時間に占める利用者のケアに当てる時間の割合が増加していること
- 利用者の満足度等に係る指標(※)において、この取り組みによる悪化が見られないこと
※)「WHO-5」等で利用者のQOLの変化を測定することを想定
また、「職員の負担軽減」についても同様に、以下の試行前後の変化を比較確認する。
- 総業務時間と超過勤務時間が短縮していること
- 介護職員の心理的負担等に係る指標(※)において、著しい悪化が見られないこと
※)「SRS-18」等で職員の心理的身体的変化を測定することを想定
(オ)
- 柔軟化された人員配置基準の適用後、一定期間(1年を超えない範囲を想定)ごとに(エ)の事項について、指定権者に状況報告を行う。
- 届け出た人員配置より少ない人員配置を行う場合には、改めて試行を行い、必要な届出をする。
- 過去一定の期間の間(2年から3年程度を想定)に行政指導等を受けている場合は、当該指導等に係る事項について改善している旨を指定権者に届け出る。
厚労省は施策に理解を求め「スピード感」と「実施後の検証実施」を強調
今回の改正を「審議報告」に盛り込むにあたり、厚労省の峰村浩司高齢者支援課長は以下のように説明し、理解を求めています。
(「なぜ一部の施設の業務効率化が改善したという実証結果だけで人員配置の柔軟化に踏み切るのか」という指摘も受けている中、)現在の介護現場が置かれている状況や、将来予測される社会情勢の変化を考えれば、こうした状況に挑戦する企業の努力の芽を育てていくべきと考えています。
また、全ての施設ですぐに成果を出すことが難しいことを踏まえると、一定のスピード感も必要と考えています。
一部の企業、一部の施設であっても、質を落とさずに効率化を図り、多くの介護需要に対応しようとする取り組みを評価することについては、将来の介護サービスの安定的な確保に責任を負う立場から、必要な取り組みと考えています。
その一方で、これまでにない取り組みであるため、慎重に判断すべきというご意見も、大変ごもっともと考えます。国としても、特例的な柔軟化を行う施設のデータを確認したり、実地で状況を把握したりするなど、今後の取り組みの検証をしっかり行っていきます。