※動画内の説明では「運営指導」の22年度以前の旧称「実地指導」を使っています。
*関連情報:vol.1061介護保険施設等の指導監督について(通知)の送付について
はじめに、実地指導の対応について管理者さんの頭の中のモヤモヤを可視化してみたいと思います。
まだまだたくさんの「不安」や「迷い」が頭の中に浮かんでくるかと思います。
今回は、このような不安や迷いを解決する為に、実地指導での報酬請求指導について理解しておくべきポイントの説明をしていきたいと思います。
介護報酬の体系としては大きく分けると、以下の2つに分かれています。
また、こちらに基準省令と費用算定に関する基準などの推奨サイトのURLも記載しておきますので、必要に応じてご活用いただけましたら幸いです。
* 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生省令第三十七号)
*指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準、指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準、指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準、指定介護予防支援に要する費用の額の算定に関する基準、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について(老企第41号)
基本報酬の体系のカテゴリーは、以下の3つから構成されています。
イとロに関しては「訪問実施者」の区分があり、以下のように分けられています。
また、看護師などによるサービス提供の時間による区分は以下のようになっています。
ここでの注意点は、20分未満のサービスを提供する場合は、「週に1回以上、20分以上の保健師または看護師による訪問を行った場合」に算定が可能になることを理解しておく必要があることです。
なお、 20 分未満の訪問看護は、「訪問看護を24時間行うことができる体制を整えている事業所として緊急時訪問看護加算の届け出をしている場合」に算定可能であることを理解しておく必要があります。
次に、「基本報酬」を算定する上で、「准看護師」を配置している訪問看護ステーションの注意点について見ていきたいと思います。
注意点として、老企第36号:4(8)の①には以下のように説明されていますので、この内容について留意しておく必要があります。
居宅サービス計画上、准看護師が訪問することとされている場合に、事業所の事情により准看護師ではなく保健師又は看護師が訪問する場合については、所定単位数に100分の90を乗じて得た単位数を算定すること。
また、居宅サービス計画上、保健師又は看護師が訪問することとされている場合に、事業所の事情により保健師又は看護師ではなく准看護師が訪問する場合については、准看護師が訪問する場合の単位数(所定単位数の100分の90)を算定すること。
理学療法士などの基本単位数は、以下のように1回20分単位で設定されています。60分の場合については、3回分の訪問全てが10%減算となります。
予防給付の単位数は40分を超えると1回あたり50%の減算となり426単位と、2回の566単位よりも少ない単位数になっています。この点数の設定から、予防給付の利用者へは40分未満のサービスを提供しようとする施策の意図が見て取れるかと思います。
また、理学療法士などによる訪問は、1人の利用者につき週に6回(120分)の回数制限があることを理解しておく必要があります。
理学療法士等が行う、40分を超える場合のサービス提供についての根拠は、老企第36号に、このように記載されています。
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護は、1 日2回を超えて(3回以上)行う場合には1回につき所定単位数の100分の90に相当する単位数を算定する。
なお、当該取扱いは、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が連続して3回以上訪問看護を行った場合だけでなく、例えば午前中に2回、午後に1回行った場合も、同様である。
(例)1日の訪問看護が3回である場合の訪問看護費1回単位数×(90/100)×3回
なお、この取扱いは、「理学療法士等が連続して3回以上訪問看護を行った場合だけでなく、例えば午前中に2回、午後に1回と分けて行った場合も、同様である」と説明されてあります。
したがって、この場合は、3回の訪問の全てが10%減算となり792単位(264単位×3回)となることを理解しておく必要があります。
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が訪問看護を提供している利用者については、毎回の訪問時において記録した訪問看護記録書等を用い、適切に訪問看護事業所の看護職員及び理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士間で利用者の状況、実施した内容を共有するとともに、訪問看護計画書(以下、「計画書」という。)及び訪問看護報告書(以下、「報告書」という。)は、看護職員(准看護師を除く。)と理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が連携し作成すること。
また、主治医に提出する計画書は理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が実施した内容も一体的に記載するものとし、報告書には、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が提供した訪問看護の内容とその結果等を記載した文書を添付すること。
(老企第36号:4(4)理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士の訪問についての④より)
毎回の訪問時において記録した訪問看護記録書等を用いて、事業所の看護職員及び理学療法士等の間で利用者の状況、実施した内容を共有します。
准看護師を除く、看護職員と理学療法士等が連携し作成することとされています。また、主治医に提出する計画書は理学療法士等が実施した内容も一体的に記載するものとし、報告書には、「理学療法士等が提供した訪問看護の内容とその結果等を記載した文書を添付すること」となっています。
21年度の報酬改定からは、「理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護の詳細 別紙様式2-⑴」の書類が新設されていますので、こちらの帳票についても理解し、作成していく必要があります。
計画書及び報告書の作成にあたっては、訪問看護サービスの利用開始時及び利用者の状態の変化等に合わせ、定期的な看護職員による訪問により利用者の状態の適切な評価を行うこと。
⑥における、訪問看護サービスの利用開始時とは、
・利用者が過去2月間(暦月)において当該訪問看護事業所から訪問看護(医療保険の訪問看護を含む。)の提供を受けていない場合であって、新たに計画書を作成する場合をいう。
また、利用者の状態の変化等に合わせた定期的な訪問とは、
・主治医からの訪問看護指示書の内容が変化する場合や ・利用者の心身状態や家族等の環境の変化等の際に訪問することをいう。
(老企第36号:4(4)理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士の訪問についての⑦より)
次に、ハの定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所と連携する場合の「基本報酬」の体系について説明していきたいと思います。
この定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所と連携する場合は、今まで説明してきた基本報酬は1回あたりの計算になりますが、こちらは1月当たりの設定となっています。
この定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所との連携については、「訪問看護を24時間行うことができる体制を整えている事業所として、緊急時訪問看護加算の届け出をしていること」が要件となっていますので、こちらも理解しておく必要があります。
また、老企第36号:4の(5)の②には日割り計算のことが説明されてありますので、一読し理解しておく必要があります。要約すると以下のようになります。
これらに該当する場合は日割り計算することになりますので、詳細につきましては改めてサービスコードをご確認ください。
末期の悪性腫瘍その他厚生労働大臣が定める疾病等の取扱いについては、老企第36号4の⑹に、医療保険の給付の対象となる疾病の説明がなされています。
厚生労働大臣が定める疾病等としては、以下の疾病が挙げられています。これらに該当する場合は、医療保険の給付の対象となるものであり、介護保険での訪問看護費は算定しないとされていることも理解しておく必要があります。
【厚生労働大臣が定める疾病等(利用者等告示第4号】
多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)をいう。) 、 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群をいう。)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、 頚髄損傷及び人工呼吸器を使用している状態
また、老企第36号:4-⑺には、精神科訪問看護について、医療保険の給付対象となる説明がなされています。要約すると以下のようになります。
これらの説明も、理解しておく必要があります。
次に、介護老人保健施設、介護療養型医療施設及び介護医療院を退所・退院した日の訪問看護の取り扱いについて説明したいと思います。
これらの施設等から退所または退院した日については、基本的には、老企第36号:2の1の⑶にあるように、訪問看護費は算定できません。
しかし、21年度改定によって新たに「厚生労働大臣が定める状態にある利用者又は主治医が退所・退院した日に訪問看護が必要であると認める利用者に限り、訪問看護費を算定できることとする。なお、短期入所療養介護のサービス終了日においても同様である。」と示されていますので、この点も留意しておかなければなりません。
今回は、「訪問看護事業所の実地指導対策_報酬請求指導(前編/介護報酬の体系と基本報酬の理解)」として、介護報酬の体系や介護報酬における「基本報酬」について話を進めてきました。
実地指導での「報酬請求指導」についての理解が増し、引き続き理解を深めていきたいと思っていただけたとすれば大変嬉しく思います。
また、こちらの研修動画のほかに、「加算・減算」に関して 「研修55_訪問看護事業所の実地指導対策_報酬請求指導(後編/加算と減算の理解)」 の研修動画もご用意しております。こちらの研修動画もご視聴いただくことで、訪問看護の実地指導時に把握しておくべき事柄についての理解が深まると思われますので、必要に応じてご視聴いただけましたら幸いです。
株式会社ケアモンスター 代表取締役。社会福祉士・介護支援専門員。1975年生まれ石川県出身。 整形外科(老人保健施設)や脳神経外科等に勤務し、医療ソーシャルワーカーや介護支援専門員として、組織や地域のマネジメント業務に携わりながら、医療経営を学ぶ。 その後、医療法人の理事、MS法人の取締役として、クリニックを中心とした介護事業の立ち上げや運営を行う。 2014年に、コンサル事業・セミナー事業を主に起業。現在は、今の福祉事業の概念を壊しながら、「新しい価値」と「新しい仕組み」を創造する!ということをテーマに活動中。