※動画内の説明では「運営指導」の22年度以前の旧称「実地指導」を使っています。
*関連情報:vol.1061介護保険施設等の指導監督について(通知)の送付について
はじめに、運営指導の対応について管理者さんの頭の中のモヤモヤを可視化してみたいと思います。
まだまだ、たくさんの「不安」や「迷い」が頭の中に浮かんでくるかと思います。
今回は、このような不安や迷いを解決する為に、運営指導での報酬請求指導について理解しておくべきポイントの説明をしていきたいと思います。
合成単位となる加算としては、「夜間・早朝・深夜の場合の訪問」と「複数名訪問加算」があげられます。ここでは、訪問看護ステーションにおける訪問実施者が保健師または看護師による場合を説明していきたいと思います。
基本報酬や加算報酬に対しては、基本的にはケアマネジャーからのサービス提供時間の依頼にあわせて、請求することになります。
したがって、ケアマネジャーから毎月届くサービス提供票からサービス提供時間を必ず確認し、サービスを提供する必要があります。時間が多くかかったからと言って、勝手に時間を変更して請求することはできません。もし、サービス提供時間が変更になった場合は、必ず担当のケアマネジャーに報告し予定を変更してもらう必要があります。
この夜間帯などに訪問することで売上は上がりますが、従業員のシフト管理や賃金の支払いなどが変則的になるため、オペレーションの仕組みについても就業規程などで明確化しておく必要があります。
老企36号4(9)には、「居宅サービス計画上又は訪問看護計画上、サービス開始時刻が加算の対象となる時間帯にある場合に、加算が算定できる」とされています。
例えば、17時40分から18時10分のサービス提供をした場合は夜間の25%加算は算定できないということになります。
複数名訪問看護加算Iについては、複数名での訪問時間が30分未満と30分以上で区分されています。
複数名訪問に対しても、夜間・早朝、深夜に訪問する場合は、このような合成単位が定められています。なお、二人目の看護師などに含まれる職種としては、保健師、看護師、准看護師又はPT、OT、STが含まれます。
看護師と同行する者が看護補助者の場合に以下の単位数を使用することになります。
看護補助者については、「訪問看護を担当する看護師等の指導の下に、食事や排せつなどの療養生活上の世話の他、居室内の環境整備、看護用品及び消耗品の整理整頓等といった看護業務の補助を行う者のことであり、資格は問わないが、秘密保持や安全等の観点から、訪問看護事業所に雇用されている必要があるものとする。」と老企36号(10)➂に説明があります。
次に、理学療法士、または作業療法士及び言語聴覚士による「夜間・早朝・深夜の場合の訪問」と「複数名訪問加算」について、説明していきたいと思います。
理学療法士などの訪問は1回の訪問時間が20分に設定されているにもかかわらず、複数名での訪問時間が30分未満と30分以上で区分されており、やや解釈に難しさを感じるかもしれません。
ここまで説明しました「夜間・早朝・深夜の場合の訪問」と「複数名訪問加算」についての詳細については、必要に応じてサービスコード表をご確認いただけたらと思います。
ここからは、こちらに上げた加算と減算について順番に説明していきたいと思います。
同一敷地内建物等の利用者又はこれ以外の同一建物の利用者が1月あたり20人以上にサービスを行う場合、所定の単位数の10%が減算されます。
同一敷地内建物等の利用者又はこれ以外の同一建物の利用者が1月あたり50人以上にサービスを行う場合、所定の単位数の15%が減算されます。
訪問看護の「費用の額の算定に関する基準」には「訪問介護と同様であるので、2(14)を参照されたい」と記載がありますので、ここでは訪問介護の基準を確認する必要があります。
老企第36号の2の(14)には、
などが示されていますので、一読し理解をしておく必要があります。
減算を受けている利用者と受けていない利用者との公平性の観点から、同一建物減算を受けている利用者の区分支給限度基準額を計算する際は、減算前の単位数を用いることとなっています。
例えば、この減算を受けない場合は30回利用できたとします。減算を受ける場合は、同じ30回の利用でも減算された低い単位数で利用することになります。利用者からすると、区分支給限度基準額の単位数が余り、通常より多く利用できる形となってしまい、不公平なサービス提供の状況になってしまいます。
この不公平なサービスの実情を解消する為、区分支給限度基準額の管理については、減算適用前の単位数を用いることとなっています。このように、同一建物減算の適用を受ける場合は、担当のケアマネジャーと情報を共有し、適切な給付管理を心掛ける必要があります。
特別地域訪問看護加算は、離島や山村地域などにある事業所が行う訪問看護を評価するための加算となっています。こちらの加算については、支給限度額管理の対象外となっています。
また、加算算定には、事業所の所在地が特別地域加算の対象地域であることを確認し、あらかじめ届出が必要になります。厚生労働大臣が定める地域については、厚労省告示第百二十号に示されています。
特別地域訪問看護加算1として、訪問1回につき所定単位数の15%を加算する形になります。
所定単位数の 15%を1月につき加算算定する形になります。この場合の所定単位数には、以下の加算は含めないことになっています。
こちらの加算も支給限度額管理の対象外となっています。
また、加算算定には対象地域であることを確認し、あらかじめ届出が必要になります。「厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(厚労省告示第83号)」第一項に定められた中山間地域等に所在する事業所で、かつ、小規模事業所であると認められた事業所は対象になります。
訪問看護小規模事業所加算1として、訪問1回につき所定単位数の10%を加算する形になります。
訪問看護小規模事業所加算2として、所定単位数の10%を1月につき加算算定する形になります。
厚生労働大臣が定める施設基準 厚生労働省告示第96号に「一月当たり延訪問回数が百回以下の訪問看護事業所であること」と示されています。
所定単位数の10%加算となっていますが、この場合の所定単位数には以下の加算は含めないこととなっています。
また、費用の額の算定に関する基準(老企第36号4の⒁)は、訪問介護の2の⒃を準用することになりますので、こちらも理解しておく必要があります。
こちらの加算も、支給限度額管理の対象外となっています。また、事前の届け出については不要です。
「厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(厚労省告示第83号)」第二項に定められた
中山間地域等に居住する利用者に対して、通常の事業の実施地域を越えてサービスを提供した場合は、5%加算の対象になります。
このことから、運営規程に定めている「通常の事業の実施地域」の範囲内であれば、「中山間地域等」に居住する利用者にサービスを提供した場合であっても、加算は算定できません。
訪問看護中山間地域等提供加算1として、訪問1回につき所定単位数の5%を加算算定する形になります。
訪問看護中山間地域等提供加算2として、所定単位数の5%を1月につき加算算定する形になります。
所定単位数の5%加算となっていますが、この場合の所定単位数には、以下の加算を含めないこととなっていますので、注意が必要です。
指定居宅サービス基準第 20条第3項には、「利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域の居宅において訪問を行う場合は、それに要した交通費の額の支払を利用者から受けることができる」とされていますが、この加算を算定する場合は、交通費の支払いを受けることはできません。
こちらの加算も、支給限度額管理の対象外となっています。また加算算定には、あらかじめ届出が必要です。
この加算が創設された背景には、「24時間の看護体制」への利用者ニーズの高まりがあり、緊急時にも対応できる体制を取っている訪問看護事業所を評価するという目的があります。
老企第36号4-(16)-①には、以下のように示されています。
また老企第36号4-(16)-➁には、以下のように示されています。
この加算を介護保険で請求した場合には、同月に定期巡回・随時対応型訪問介護看護および看護小規模多機能型居宅介護を利用した場合の各サービスにおける緊急時訪問看護加算は算定できません。また、同月に医療保険における訪問看護を利用した場合の24時間対応体制加算も算定できません。
老企第36号4-(16)-➂には、以下のように示されています。
この場合、居宅サービス計画の変更を要することになりますので、担当のケアマネジャーに報告し、予定を変更してもらう必要があります。この緊急時訪問を行った場合には、早朝・夜間、深夜の訪問看護に係る加算は算定できませんが、1月以内の2回目以降の緊急時訪問については、早朝・夜間、深夜の訪問看護に係る加算を算定することができます。
老企第36号4-(16)-④には、以下のように示されています。
このことから、他の事業所から緊急時訪問看護加算に係る訪問看護を受けていないか確認する必要があります。
こちらの加算も、支給限度額管理の対象外となっています。また、加算算定には、あらかじめ届出が必要です。
特別管理加算は、サービスの提供にあたり、特別な管理を必要とする利用者に対する計画的な管理を評価する加算です。介護保険では、単位数が以下のように設定されています。
この特別管理加算は、介護保険と医療保険の両方に存在し、同じ趣旨のものになります。
算定基準については細かく設定されていますので、必ず一読しておく必要があります。要点は以下のようになります。
厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等として、厚労省告示第九十四号の7に示されています。
厚生労働大臣が定める区分の特別管理加算(I)は、第六号イに規定する状態にある者に対して指定訪問看護を行う場合とあります。この第6号イについては、厚生労働大臣が定める基準として、以下のいずれかに該当する状態とあります。
費用の額の算定に関する基準を満たしたうえで、こちらに示された状態のいずれかに該当した場合は、特別管理加算(I)を算定することになります。
以下のいずれかに該当する状態の場合に、特別管理加算(II)を算定することになります。
ターミナルケア加算とは、ご利用者の尊厳を維持し、その人らしく最期を迎えられるような療養上の支援を行う体制を構築していることと、実際の取り組みの両面で評価する加算です。
死亡月につき、2000単位を算定することができます。
厚生労働大臣が定める施設基準としては、以下のように厚労省告示第95号に示されています。
算定に関する基準についても必ず一読し、詳細を把握しておく必要があります。
こちらの減算は、定期巡回・随時対応型 訪問介護看護事業所と連携する場合が該当になります。
訪問看護を利用しようとする者の主治医が、当該利用者が急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護を行う必要がある旨の特別の指示を行った場合に、指示の日数に応じて、1日につき97単位を所定単位数から減算するというものになります。
算定基準は、利用者が急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護を行う必要がある旨の特別指示があった場合は、交付の日から14日間を限度として医療保険の給付対象となるものであり、介護保険での訪問看護費は算定しないこととされています。
また、医療保険の給付対象となる場合には、「頻回の訪問看護が必要な理由、その期間等については、診療録に記載しなければならない」ともされています。
初回加算は、利用者が過去2月間(暦月)において、訪問看護事業所から訪問看護の提供を受けていない場合であって新たに訪問看護計画書を作成した場合に算定することになります。
過去2カ月間に当該訪問看護ステーション等が医療保険での訪問看護を提供した場合は、介護保険の訪問看護が初回であっても初回加算を算定できないことに留意する必要があります。
なお、「介護予防訪問看護を利用していた者が、要介護認定の更新に伴って一体運営の訪問看護事業所からサービス提供を受ける場合は、過去 2 月以内に介護予防訪問看護の利用がある場合でも初回加算は算定可能」と平成24年度介護報酬改定に関する関係 Q&Aの問38 にあります。こちらも、お時間のある時に一読し、理解しておく必要があります。
退院時共同指導加算は、病院、診療所または老健施設などに入院・入所する患者・入所者が
退院または退所するにあたり、訪問看護ステーションの看護師が入院先の医師・看護師と共同で指導を行った場合に算定できる加算となっています。
退院または退所後に初回の訪問看護を行った場合に、退院または退所につき1回に限り、1月に600単位を加算することになります。特別な管理を必要とする利用者については、2回算定が可能です。
ただし、初回加算を算定する場合は、退院時共同指導加算は算定しないことに留意しなければなりません。
老企第36号 4(22)➀には以下のように示されています。
こちらは業務効率化の視点から理解しておく必要があります。この際、以下のように示されているため、これらのガイドラインを理解しておく必要があります。
また老企第36号 4(22)④には、 以下のように示されています。こちらの説明についても留意しておかなければなりません。
また老企第36号 4(22)➄には以下のように示されていますので、忘れずに記載する必要があります。
こちらの加算は、訪問看護事業所の職員が訪問介護事業所と連携して利用者に係る計画作成の支援等を行った場合を評価する加算です。1月に1回に限り250単位を算定することができます。
老企第36号 4(23)①には、以下のように示されています。
老企第36号 4(23)②には、以下のように示されています。
老企第36号 4(23)③には、以下のように示されています。
老企第36号 4(23)④には、以下のように示されており、勝手に時間を増やしてはいけないことに留意する必要があります。
老企第36号 4(23)⑤には、以下のように示されています。
こちらの加算も、あらかじめ届出が必要となっています。
訪問看護体制強化加算は、訪問看護・介護予防訪問看護において、医療ニーズの高い利用者への訪問看護の提供体制を強化した場合に算定できます。訪問看護ステーションか、病院・診療所に対して設定されている加算になっています。
算定に関しては、こちらの要約表を活用していただければと思います。
老企第36号 4(24)➀から➂には、緊急時訪問看護加算と特別管理加算の算定割合の計算の方法が示されています。➃には、看護師の占める割合の計算の在り方や算定の方法が示されています。
老企第36号 4(24)⑤から⑧には、以下のように示されています。
こちらの加算も、支給限度額管理の対象外となっています。また加算算定には、あらかじめ届出が必要になります。
サービス提供体制強化加算は、サービス提供体制を特に強化して基準を満たし、届出を行った介護事業所に対して算定することができる加算です。訪問看護ステーションか、病院・診療所、また定期巡回・随時対応型と連携する場合に対して設定されている加算になっています。単位数は以下の通りです。
老企第36号3(9)➀には、以下のように研修についての記載があります。
老企第36号3(9)②には、以下のように会議開催についての記載があります。
ここでの「定期的」とは、おおむね1月に1回以上開催されている必要があることが示されています。
また、会議は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとされており、その際は以下のガイドラインを理解しておく必要があります。
また、 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項」は以下のようになっています。
老企第36号3(9)③には、「少なくとも一年以内ごとに一回、事業主の費用負担により健康診断を実施しなければならない」とされています。④には職員の割合の算出に当たっての在り方が示されており、➄には「職員の割合については、毎月記録するものとし、所定の割合を下回った場合については、直ちに届出を提出しなければならない」と示されています。また➅~⑧のことにも留意しておく必要があります。
ここまで、加算についてのお話をしてきましたが、訪問看護における加算の算定状況がわかる参考資料をここに添付させていただきました。
(令和2年8月19日社会保障審議会介護給付費分科会 資料3より引用)
こちらは2021年の報酬改定の審議の際に用いられた 資料 ですが、過去の訪問看護の加算の算定割合についてこのようになっています。
今後、地域における利用者像が中重度化していくと仮説が立てられるならば、算定率の低いターミナルケア加算や看護体制強化加算等が算定できる体制構築が求められるのかもしれません。
今回は、研修55_訪問看護事業所の運営指導(旧実地指導)対策_報酬請求指導(後編/加算と減算の理解)として、介護報酬における「加算・減算」についてのお話をさせていただきました。運営指導での「報酬請求指導」についての理解が増し、引き続き理解を深めていきたいと思っていただけたとすれば大変うれしく思います。
また、こちらの研修動画のほかに「基本報酬」に関して、 研修54_訪問看護事業所の運営指導(旧実地指導)対策_報酬請求指導(前編/介護報酬の体系と基本報酬の理解) の研修動画もご用意しております。こちらの研修動画についても、ご視聴いただくことで、訪問看護の運営指導時に把握しておくべき事柄についての理解が深まると思われますので、必要に応じてご視聴いただけましたら幸いです。
株式会社ケアモンスター 代表取締役。社会福祉士・介護支援専門員。1975年生まれ石川県出身。 整形外科(老人保健施設)や脳神経外科等に勤務し、医療ソーシャルワーカーや介護支援専門員として、組織や地域のマネジメント業務に携わりながら、医療経営を学ぶ。 その後、医療法人の理事、MS法人の取締役として、クリニックを中心とした介護事業の立ち上げや運営を行う。 2014年に、コンサル事業・セミナー事業を主に起業。現在は、今の福祉事業の概念を壊しながら、「新しい価値」と「新しい仕組み」を創造する!ということをテーマに活動中。