こちらのページでは、事業所運営中の皆様に向けて通所介護・地域密着型通所介護の人員基準についてご紹介しています。 下記のページでは、地域密着型通所介護の開業を検討している皆様に向けて、地域密着型通所介護の人員基準について詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。 リンク:地域密着型通所介護(デイサービス)の人員基準とは?【2021年度法改正対応】
通所介護(デイサービス)の人員基準は、事業所の運営を続けていくにあたって最低限確保しなければならない、職員の職種や人数の基準です。介護保険法・省令などによって規定されています。
「月の途中でいきなり従業員がやめてしまってどのような対応をとればいいか分からない」、「一時的に人員基準違反の状態になってしまった場合はどうなるの?」、「常に人手不足で、いつ人員基準に違反するか分からない」。
このような疑問や不安をお持ちの通所介護の経営者、管理者も多いのではないでしょうか。
そのような方々に向けて、この記事では、通所介護の人員基準の内容と人員基準に違反した場合のリスク、人材確保の取り組みなどについて解説します。
通所介護・地域密着型通所介護の人員基準とは、事業所が適切な介護サービスを提供するために、最低限配置しなくてはならない職種、資格、人数などの基準です。通所介護は「指定居宅サービス等の人員、設備及び運営の基準」に、地域密着型通所介護は「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」に定められています。
通所介護・地域密着型通所介護の運営基準には、事業所が適切な介護サービスを提供するために、提供するサービスの内容や提供方法、必要な書類や記録、取り組みなどが規定されています。
通所介護・地域密着型通所介護の運営基準については、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご覧いただけると幸いです。
通所介護・地域密着型通所介護の設備基準には、食堂や機能訓練室などの最低限設置しなくてはならない設備や備品などについて定められています。
通所介護・地域密着型通所介護の設備基準については、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご覧いただけると幸いです。
ここからは、デイサービスの人員基準について、職種ごとに配置人数と資格要件を詳しく見ていきます。
管理者は、原則常勤専従で1人を配置する必要があります。
ただし、管理業務に支障がない場合は、通所介護の他の職務を兼務すること、または同一敷地内や道路を隔てて隣接している他の事業所の職務を兼務することができます。
生活相談員は、勤務延べ時間数を、事業所のサービス提供時間数で割った数が1以上となるように配置する必要があります。
勤務延べ時間数とは、サービス提供時間内に勤務する時間数を指します。労働基準法に定められる確保すべき休憩時間やサービス担当者会議・地域ケア会議に出席するための時間などは、勤務延べ時間数に含めることができます。
また、配置にあたっては、生活相談員または介護職員のうち1人以上を常勤で配置しなければなりません。
【生活相談員の資格要件】
また、上記の資格以外にも都道府県によって上記と同等以上の能力を有すると認められる資格が定められています。
例えば東京都では「介護支援専門員」、「実務経験が通算で1年以上の介護福祉士」等が生活相談員の資格要件として認められています。
看護職員は、通所介護の単位ごとに1人以上を配置する必要があります。
従業者として配置する場合は、専従である必要はありませんが、サービス提供時間帯に通所介護事業所と密接かつ適切な連携を図ることができる体制が求められます。また、病院や訪問看護ステーションなどと連携して配置する場合は、営業日ごとに利用者様の健康状態を確認でき、サービス提供時間帯を通じて密接かつ適切な連携を図ることができる体制が求められます。
地域密着型通所介護で利用定員が10人以下の場合、看護職員または介護職員の勤務時間数の合計をサービス提供時間数で割った数が1以上となるように、看護職員または介護職員を配置することが認められています。つまり、介護職員を「1以上」配置していれば、看護職員を配置しないことが認められているということになります。
【看護職員の資格要件】
介護職員は、介護職員の勤務延べ時間数を、事業所のサービス提供時間数で割った数が、利用者数が15人までの場合は「1以上」、利用者数が16人以上の場合は「15人を超える部分を5で除して得た数を1に加えた数以上」となるように配置する必要があります。
勤務延べ時間数とは、サービス提供時間内に勤務する時間数を指します。労働基準法に定められる確保すべき休憩時間は、勤務延べ時間数に含めることができます。
機能訓練指導員は1人以上を配置する必要があります。
また、通所介護の他の職務を兼務することが認められています。
【機能訓練指導員の資格要件】
※はり師、きゅう師を機能訓練指導員として配置する場合には、「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、またはあん摩マッサージ指圧師」を配置した介護事業所等で6カ月以上機能訓練指導に従事した経験が必要になります。
介護職員は、勤務延べ時間数で計算した人数を配置しなくてはいけないので、計算式と具体的な計算例を見ていきましょう。
【利用者数が16人以上の場合、配置する介護職員の勤務延時間数の計算式】
{(利用者数-15)÷5+1}×サービス提供時間数 ≦ 介護職員の勤務延時間数
となるように配置します。
【利用者数20人、サービス提供時間が7時間の場合の計算例】
{(20-15)÷5+1}×7時間=14時間
ですから、「サービス提供時間に7時間勤務する職員を2人配置する」や「サービス提供時間に7時間勤務する職員を1人と4時間勤務する職員を2人配置する」といったような配置が必要になります。
通所介護では、人員基準を満たせない場合には、人員基準欠如減算に該当するか確認しましょう。
該当する場合は、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」を提出し、人員基準欠如減算を算定します。
人員基準欠如が解消した際も、同様の届出を提出する必要があります。
通所介護の人員基準欠如減算とは、事業所の「看護職員」または「介護職員」の配置数が人員基準で定められている員数を下回った場合に適用になる減算です。
人員基準欠如減算に該当する場合は、人員基準欠如が生じた翌月または翌々月から、人員基準欠如が解消されるに至った月まで『利用者全員について基本報酬の70%を算定する(30%減算)』ことになります。
また、人員基準欠如減算に該当すると、栄養アセスメント加算、栄養改善加算などの一部の加算が算定できなくなるというデメリットもあります。
もし、人員基準欠如に該当していることに気づかず、営業を続けていた場合はどうなるのでしょうか。
指定権者(都道府県または市)が定期的に実施する運営指導(実地指導)では、人員基準を満たしているかどうかを必ずチェックします。
運営指導で人員基準に違反していることが明らかになると、これまで算定していた介護報酬を遡って計算し直し、報酬の返還を求められることや、悪意があると判断された場合は行政処分を受けることがあります。
人員基準に違反しないためには、スタッフの採用・定着の仕組み作りがとても重要です。
スタッフの採用を強化し、定着してもらうには、「スタッフが退職する理由」を把握して、それに対して「待遇や職場環境等の改善」を図ることが必要になるでしょう。
介護労働安定センターが発表した「令和3年度介護労働実態調査」によると、介護職員の「前職をやめた理由」のうち「職場の人間関係に問題があったため」が20.4%で1位、次いで「収入が少なかったため」が17%、「自分の将来の見込みが立たなかったため」が16.9%となっています。
それに対して、以下のような取り組みが考えられます。
【待遇や職場環境等の改善の取り組み例】
通所介護の人員基準では、管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員といった職種について、それぞれ配置する人数等が定められています。
そして、人員基準に違反した場合は、減算の対象となる場合や行政指導・行政処分の対象となる場合があることをお伝えしてきました。
ここでご紹介した内容が、スタッフを採用・定着させるための取り組みを考えていただくきっかけになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。