訪問看護ステーションを運営している中で、人材の採用や業務効率化のための設備導入など、支出する金額が多くなってしまう瞬間は必ずあります。
「職員が育児休業に入るので代わりの人材を確保したいが、人件費が増えてしまう。」や「従業員のために設備を入れたいけど資金の確保が難しい。」などのお悩みを持つ事業者の方は多いでしょう。
そのような皆様に向けて、この記事では、訪問看護ステーションの人材採用や設備導入、育児休業などの体制整備で活用できる補助金・助成金について解説しています。
補助金・助成金とは、国や地方公共団体の施策に基づいた取り組み等を行うことで、交付・支給される資金です。
補助金と助成金は、受給のしやすさに違いがあります。補助金は施策に対しての予算が決まっているため、事業所の取り組み内容や先着順などによって審査が行われ、申請しても交付を受けられない場合があります。一方で助成金は、継続的な施策として実施されているため、支給条件を満たせば交付を受けられる可能性が高い資金となっています。
まずは、ハローワークで手続きを行う補助金・助成金について見ていきます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは、有期雇用の職員や派遣の職員などを正規雇用の職員または直接雇用に転換した場合に支給される助成金です。
【支給条件】
など
【支給金額】
一人当たりの支給金額は以下のようになっています。
※()は生産性の向上が認められる場合
次に、各都道府県の労働局で手続きを行う補助金・助成金について見ていきます。
両立支援等助成金とは、職業生活と家庭生活が両立できるような職場環境を整える事業者を支援するための助成金です。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)、介護離職防止支援コース、育児休業等支援コースがあります。このうち、育児休業等支援コースについて詳しく見ていきます。
育児休業等支援コースは、「育休取得時・職場復帰時」、「業務代替支援」、「職場復帰後支援」の3つに分かれています。
育児休業等支援コースの「育休取得時・職場復帰時」は、「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って職員の育児休業の取得と職場復帰に取り組み、実際に職員が育児休業を取得した中小企業事業主に給付される助成金です。
休業取得時、職場復帰時ともに1事業主あたり2人まで支給可能です。
※()は生産性要件を満たした場合
育児休業等支援コースの「業務代替支援」は、育児休業取得者の業務を代替する職員を確保し、かつ育児休業取得者を原職等に復帰させた中小企業事業主に給付される助成金です。
新規雇用、手当支給等をあわせて、1事業主あたり年度10人まで支給されます。
※育児休業取得者が有期雇用労働者の場合に加算
育児休業等支援コースの「職場復帰後支援」は、育児休業から復帰後、仕事と育児の両立が特に困難な時期にある職員のために、子どもの看護休暇制度などの制度導入といった支援に取り組み、実際に制度が利用された中小企業事業主に支給される助成金です。
※子の看護休暇制度は10時間以上(有給)の取得、保育サービス費用補助制度は3万円以上の補助
保育サービス費用補助制度:実費の2/3
業務改善助成金とは、事業所内最低賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資などを行った場合、設備投資などに要した費用の一部を支給する助成金です。
助成率は以下のようになっています。
働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)とは、生産性を向上させ、労務・労働時間の適正管理を推進するような環境整備を行った中小企業を支援する助成金です。
以下のいずれにも該当する事業主
【対象経費】
支給金額は、最大340万円です。「成果目標」の達成状況に応じて、助成対象の取り組みを実施した際にかかった経費の一部が助成されます。
続いて、各都道府県の高齢・障害者業務課で手続きを行う補助金・助成金について見ていきます。
65歳超雇用推進助成金とは、高齢者の雇用の推進を目的に、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備など、高年齢の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した事業主に対して支給される助成金で、3つのコースがあります。
高年齢者無期雇用転換コースとは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主に対して助成を行うコースです。
労働者1人につき以下の金額が支給されます。
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースとは、高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務制度の導入または改善、法定外の健康管理制度(胃がん検診等や生活習慣病予防検診)の導入など、高年齢者向けの雇用管理制度の整備を実施した事業主に対して一部経費の助成が行われるコースです。
【支給対象経費】
支給対象経費に下記の助成率で算出した金額が支給されます。
65歳超継続雇用推進コースとは、65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主に対して助成が行われるコースです。
支給金額は最大160万円です。定年引上げ等、内容や年齢の引上げ幅に応じて支給されます。
続いて、訪問看護事業所が活用できる補助金・助成金で、各都道府県の福祉・医療業務課が手続きを行っているものについてみていきます。
今回は東京都と大阪府の例をご紹介しますが、ご自身の事業所がある地域でどのような補助金・助成金があるのかについては、各自治体にお問い合わせ頂ければ幸いです。
東京都における新任訪問看護師育成支援事業とは、訪問看護未経験の看護職を雇用・育成する訪問看護ステーションに対して、人件費等が助成される補助金です。
※サービス提供体制強化加算の算定実績がない場合は、研修・カンファレンス・健康診断の実施など、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第10号をすべて満たすこと
大阪府における訪問看護連携システム導入支援事業とは、複数の訪問看護ステーション間で、連携強化や規模拡大などの促進・利用者様の情報共有を図るために、関係者間で情報を利活用できるシステムの導入経費(初期経費・利用料等)を助成する補助金です。
(端末1台当たり3万5,000円、1事業所当たり5台まで)
大阪府における事務職員等の雇用支援事業とは、訪問看護ステーションが機能強化あるいは中規模以上(常勤換算5人以上)へ規模の拡大を目的に事務職等を雇用する場合、その経費を助成する補助金です。
ICT補助金とは、厚生労働省の『ICT導入支援事業』の制度の一つで、介護現場におけるICT機器やソフトの利用を促進するために作られた補助金制度です。補助金制度の実施主体は都道府県となるため、ICT補助金の利用を検討する場合は、ご自身のステーションが所在する都道府県の情報を確認する必要があります。
ICT補助金について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
最後に、中小企業庁が実施している補助金・助成金について見ていきます。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合った、クラウドサービスなどのITツールの導入を支援する補助金です。通常枠とデジタル化基盤導入枠の2種類があります。
ここまで、訪問看護の事業所運営で利用できる補助金や助成金について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
訪問看護ステーションが利用できる補助金・助成金には、厚生労働省や中小企業庁などの国が実施しているもののほかに、地方公共団体が独自に実施しているものも多くあります。ご自身が事業所を運営している地域にどのような補助金・助成金があるのか適切に把握し、活用しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。