訪問看護ステーションの実地指導対策のポイントとは?チェックリストや必要書類もご紹介します

2023.01.30
2023.03.27
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訪問看護事業所は、事業所の適正な運営について、定期的に都道府県等による介護保険法の運営指導(実地指導)や健康保険法の個別指導を受けることになります。

運営指導・個別指導に向けた準備を進めている皆様は、「指導の対策って何をすればいいの?」や「運営指導・個別指導ではどんなことを聞かれるの?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。

この記事では、介護保険と医療保険の運営指導・監査について、準備する書類やチェック項目などを解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

目次
    行政指導(実地指導集団指導)と監査の違いとは?
    訪問看護ステーションの実地指導監査に必要な書類とは?
      訪問看護ステーションの実地指導の標準確認項目とは?
        訪問看護ステーションの実地指導のチェックリスト・自己点検票とは?
          訪問看護ステーションの実地指導対策のポイントとは?
            まとめ

              行政指導(実地指導集団指導)と監査の違いとは?

              介護保険法に基づく行政指導は、実施方法の違いにより「集団指導」と「運営指導(実地指導)」の2種類がありますが、どちらも「サービスの質の確保と保険給付を適正化すること」を目的として実施されています。

              一方、監査は、基準違反や不正等の疑いがある場合に、「不正等の内容を的確に把握すること」を目的として実施されています。

              このように行政指導と監査には、実施する目的の違いがあります。

              行政指導(運営指導・集団指導)と監査の関係性は以下の図のようになっています。

              訪問看護ステーションの運営指導(実地指導)とは?

              介護保険の運営指導(実地指導)とは、指定権者(都道府県等)が、原則事業所を訪問して、法令の遵守等を確認することを指します。

              利用者様の自立支援と尊厳の保持を念頭に、サービスの質の確保と保険給付の適正化を目的として、指定の有効期間中(6年間)に少なくとも1回以上、実施されることになっています。

              実地指導は2022年に名称が『運営指導』に変更されたのをご存じでしょうか。これは、オンラインツールの活用により、現地を訪問せずに実施する場合があることから、名称が変更となりました。

              都道府県等によって運営指導として実施される指導は「介護サービスの実施状況指導」、「最低基準等運営体制指導」、「報酬請求指導」となります。

              そして事業所の運営状況について確認が行われた結果、『指導なし』または、指摘事項の程度に応じて『助言』、『口頭指導』、『文書指導』といった指導等を受けることになります。

              (1)介護サービスの実施状況指導

              介護サービスの実施状況指導では、利用者様に対して適切なサービスを提供しているかを確認するために、実地で施設設備の状況や利用者様等に対するサービスの提供状況などをチェックされます。

              (2)最低基準等運営体制指導

              最低基準等運営体制指導では、運営体制(サービス種別ごとの基準等に規定)を満たしているかを確認されます。

              ※原則実地で行われますが、現場に行かなくても確認可能と判断された場合、オンラインツールを活用して実施されることがあります。

              (3)報酬請求指導

              報酬請求指導では、不正請求を防ぐために、適正に介護報酬を請求しているかを確認されます。

              ※原則実地で行われますが、現場に行かなくても確認可能と判断された場合、オンラインツールを活用して実施されることがあります。

              訪問看護ステーションの監査とは?

              介護保険の監査とは、不正や基準違反が認められる場合やそのおそれがある場合に、その内容を的確に把握することを目的として、指定権者(都道府県等)が、事業所の訪問または関係者の出頭を通して、法令の遵守等の状況を確認することを指します。

              運営指導から監査に切り替わるケースは、以下の4つのうちいずれかに該当した場合となっています。

              1. 人員、施設設備、運営基準に従っていない状況が著しいと認められる場合またはその疑いがある場合
              2. 介護報酬請求について不正または不正の疑いがある場合
              3. 不正の手段による指定等またはその疑いがある場合
              4. 高齢者虐待等があるまたはその疑いがある場合

              監査が実施され、不正や基準違反が認められた場合、その内容に応じて、事業者に改善を求める『改善勧告』や『改善命令』、行政処分である『指定の一部効力停止』『指定の全部効力停止』『指定取消』が行われることになります。

              訪問看護ステーションの健康保険法等における指導・監査とは?

              訪問看護ステーションが、医療保険(健康保険法)のサービスを提供している場合、地方厚生局等により、保険診療の質的向上と適正化を目的として、集団指導、個別指導が実施されることになります。

              また、介護保険(介護保険法)と医療保険(健康保険法)のどちらのサービスも提供している場合は、都道府県等の介護保険の担当部署と地方厚生局等の担当部署で連携し、実施されることがあります。

              個別指導の結果、指摘がない場合は「概ね妥当」、軽微な指摘で改善が期待できる場合は「経過観察」、再度指導が必要な場合は「再指導」、不正等が疑われる場合は「要監査」といった措置がとられることになります。

              健康保険法等に基づく監査は、診療内容および診療報酬請求に不正または著しい不当が疑われる場合に、その内容を的確に把握し、公正かつ適切な措置をとることを目的として実施されます。

              監査の結果、軽微な過失と判断された場合は「注意」、重大な過失や軽微な過失がしばしばある場合は「戒告」、故意または重大な過失がしばしばある場合は「取消処分」の措置がとられることになります。

              訪問看護ステーションの実地指導監査に必要な書類とは?

              介護保険の訪問看護の運営指導で確認される書類は、厚生労働省が『標準確認文書』として示しています。

              *参考:厚生労働省 確認文書

              確認文書
              重要事項説明書 (利用申込者又は家族の同意があったことがわかるもの)
              利用契約書
              サービス担当者会議の記録
              居宅サービス計画
              サービス提供記録
              主治の医師の指示及び居宅サービス計画に基づく訪問看護計画 (利用者又は家族の同意があったことがわかるもの)
              アセスメントシート
              モニタリングシート
              訪問看護報告書・勤務実績表/タイムカード ・勤務体制一覧表 ・従業者の資格証
              管理者の雇用形態が分かる文書
              管理者の勤務実績表/タイムカード
              介護保険番号、有効期限等を確認している記録等
              請求書
              領収書
              緊急時対応マニュアル
              サービス提供記録
              運営規程
              雇用の形態(常勤・非常勤)がわかる文書
              研修計画、実施記録 ・方針、相談記録
              業務継続計画
              研修及び訓練計画、実施記録
              感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための対策を検討する委員会名簿、委員会の記録 、指針、研修の記録及び訓練の記録
              個人情報同意書
              従業者の秘密保持誓約書
              パンフレット/チラシ
              苦情の受付簿
              苦情者への対応記録
              苦情対応マニュアル
              事故対応マニュアル
              市町村、家族、居宅介護支援事業者等への報告記録
              再発防止策の検討の記録
              ヒヤリハットの記録 、委員会の開催記録
              虐待の発生・再発防止の指針 、研修計画、実施記録 、担当者を設置したことが分かる文書

              訪問看護ステーションの実地指導の標準確認項目とは?

              訪問看護の運営指導当日に確認される項目は、厚生労働省が『標準確認項目』として示しています。それでは標準確認項目のうち一部を抜粋してご紹介しますので見ていきましょう。

              *参考:厚生労働省 確認項目

              【人員】

              • 利用者に対し、従業者の員数は適切であるか
              • 専門職は必要な資格を有しているか
              • 管理者は常勤専従か、他の職務を兼務している場合、兼務体制は適切か

              【運営】

              • サービス提供は事業所の従業者によって行われているか
              • 資質向上のために研修の機会を確保しているか
              • 性的言動、優越的な関係を背景とした言動による就業環境が害されることの防止に向けた方針の明確化等の措置を講じているか
              • 広告は虚偽又は誇大となっていないか

              訪問看護ステーションの実地指導のチェックリスト・自己点検票とは?

              自己点検票とは、介護保険法に定められる基準(人員基準・設備基準・運営基準)や介護報酬の算定についてのチェックリストです。

              都道府県等のホームページからダウンロードすることができますので、運営指導の前に必ず確認しましょう。

              ここでは、東京都が公開している訪問看護ステーションの自己点検票の項目を一部抜粋してご紹介していきます。

              【人員に関する基準】

              • 看護職員(保健師、看護師又は准看護師)は、常勤換算で2.5以上であり、うち1名は常勤である。
              • 専らその職務に従事する常勤の管理者を置いている。(ただし、管理上支障がない場合は、当該指定訪問看護ステーションの他の職務に従事し、又は同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事することは差し支えない。)

              【設備に関する基準】

              • 事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の事務室を設けている。
              • 同一敷地内に他の事業所、施設等がある場合は、必要な広さを有する専用の区画を設けている。
              • 指定訪問看護を担当する医療機関は、事業の運営を行うために必要な広さを有する専ら指定訪問看護の事業の用に供する区画を確保している。

              【運営に関する基準】

              • 管理者は、従業者の管理及び指定訪問看護の利用の申込みに係る調整、業務の実施状況の把握その他の管理を一元的に行っている。
              • 適切な指定訪問看護を提供できるよう看護師等の勤務の体制を定めている。
              • 原則として月ごとの勤務表を作成し、勤務体制を明確にしている。

              【介護報酬の算定】

              • 「末期の悪性腫瘍その他別に厚生労働大臣が定める疾病等の患者」及び主治の医師(介護老人保健施設の医師を除く。)が急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護を行う必要がある旨の特別の指示を行った場合(その指示の日から14日間に限る)について訪問看護費を算定していない。
              • 精神科訪問看護・指導料及び精神科訪問看護基本療養費に係る利用者に対しては訪問看護費を算定していない。

              訪問看護ステーションの実地指導対策のポイントとは?

              ここでは、訪問看護ステーションの運営指導において指摘・指導を受けないための対策をいくつかご紹介します。

              • 日頃から書類を整理し、事業所の清潔を保つ。
              • 基本報酬、加算の構造や算定要件を理解し、適切に報酬を算定する。
              • サービスの提供の記録・報告書に記入漏れやミスがないように日頃からチェックする。
              • 行政機関への報告漏れがないか日頃から確認する。
              • 更新した掲示物は、その都度差し替えて掲示する。
              • 更新したマニュアルや規程は、その都度差し替えてファイリングする。

              まとめ

              訪問看護における運営指導(実地指導)・監査について説明してきましたが、参考になりましたか。

              運営指導・個別指導に向けて日頃からの書類作成、整理、保管を意識し、指導の前には自己点検票や標準確認項目・文書などのチェックリストを使ってしっかりと準備しましょう。

              ここでご紹介した内容が、皆様の事業所運営のお役に立てば幸いです。

              最後までお読みいただきありがとうございました。

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