たくさんの登録ヘルパーが所属する訪問介護事業者の皆様は、法律を遵守しながら行う従業員の労務管理に苦労しているのではないでしょうか?
この記事では、訪問介護事業所の経営者・管理者の皆様に向けて、労務管理のルールと労務管理を効率化する方法などについて解説しています。
ぜひ最後までお読みください。
労務管理とは、賃金や労働時間などの労働条件、安全衛生や福利厚生を管理する業務を指します。
従業員に係る職場環境を管理し、人材の生産性の向上、労災などのリスクの回避を目的として実施する業務になります。
訪問介護事業所における労務管理は、具体的には以下のような業務内容が挙げられます。
訪問介護事業所において適切に労務管理をする上で、以下のようなポイントに気をつけましょう。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
労務管理に関する規則、規程、書類等を作成して、適切に管理することが必要です。
特に、年・年度ごとに作成しなければならない書類や、社内の制度の変更に伴い更新しなければならない規程・書類などについて、作成・変更・周知・保管等の管理をすることが重要になっています。
訪問介護業界は人手不足の状態が続いていることから、
といった問題が発生しやすい状況です。
そのため、適切な労務管理のために、長時間労働になっている従業員がいないか、有給休暇が取得されているかをチェックしましょう。
ライフステージの変化等に伴い、育児休業や介護休業を取得しやすいように法整備が進んでいます。
これらの休業等に関して従業員からの相談に対応することも労務管理のひとつとなります。
適切に対応するためには、現行の法制度と給付や社会保険の手続き、社内の制度の理解が必要になります。
訪問介護事業所は、登録ヘルパーという特殊な雇用形態があります。
他の雇用形態とは違うルールで賃金を計算することがありますので、就業規則等を整備し、ルールを明確化することで労務に関するトラブルを減らすことができるでしょう。
ここからは、訪問介護員への賃金支払いに関するルールなど、訪問介護事業所の労務管理を行う際に知っておきたい以下のルールについてご紹介していきます。
訪問介護員の移動時間や待機時間の労働基準法上の取り扱いについては、厚生労働省が「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(平成16年8月27日)や「訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて」(令和3年1月15日)で示しています。
移動時間とは、事業所・集合場所・利用者宅の間を移動する時間のことです。
使用者が業務に従事するために必要な移動を命じ、その時間の自由利用が従業員に保障されていないと認められる場合は労働時間に該当するため、賃金を支払う必要があります。
例えば、下記のどちらかの移動時間であって、その時間が通常の移動に必要な時間程度である場合は、労働時間に該当します。
待機時間は、使用者が急な需要等に対応するために事業所等で待機を命じ、その時間の自由利用が従業員に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するため、賃金を支払う必要があります。
労働基準法には、休業手当について以下のような記載があります。
(休業手当) 第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
(休業手当)
第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
例えば、利用者様からサービスのキャンセルや日程変更を受けた際に従業員を休業させる場合、他の利用者宅での勤務の可能性など、代替業務を行わせる可能性等を十分に検討し、最善の努力を尽くしたと認められない場合には、休業手当の支払が必要となります。
従業員の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働安全衛生法が定められています。
労働安全衛生法では、事業者に対して、仕事が原因で従業員が事故に遭ったり病気になったりしないような取り組みを行う義務を定めています。
それでは、具体的に行わなければならないことをいくつかご紹介します。
(健康診断) 第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
(健康診断)
第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
第66条には健康診断について規定があり、事業者は、労働者を雇い入れた際とその後年1回、医師による健康診断を行わなければならないとしています。
(心理的な負担の程度を把握するための検査等) 第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
第66条の10にはストレスチェック制度について規定があります。ストレスチェック制度は、労働安全衛生法の改正に伴って2015年12月1日より施行され、常時使用する労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施することが事業者の義務となりました。
ただし、労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務となっています。
労働施策総合推進法の改正に伴い、職場におけるパワーハラスメント対策について、2022年4月から中小企業においても義務化になりました。
また、2022年6月1日施行の改正男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法により、職場におけるセクシャルハラスメントや、妊娠・出産・育児等に関するハラスメントの防止対策も強化されています。
ハラスメント対策については、近年、問題になるケースが増えてきています。ハラスメント対策を行っていない場合、賠償責任を追及される可能性もありますので、注意が必要です。
労務管理に関する業務は、「ITツールの導入」や「専門家への業務委託」などで効率化を図ることができます。
効率化が図れる業務として、以下のような業務が挙げられます。
ここまで、訪問介護事業所における労務管理のポイントや知っておきたいルールなどについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
様々なルールを理解し、遵守した上で、適切な労務管理を行い、従業員の採用・定着に繋げましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【監修者情報】 トリプルグッド社会保険労務士法人は、トリプルグッドグループのメンバーファームとして、トリプルグッド税理士法人、トリプルグッド司法書士法人、トリプルグッド行政書士法人、トリプルグッド法律事務所、トリプルグッドウェルスマネジメント株式会社、トリプルグッド株式会社など、さまざまな専門家が連携し、ワンストップでのサービスを提供。介護特化部門を擁し介護事業者の支援に力をいれている。