第199回社保審・介護給付費分科会で、2021年度介護報酬改定の単位数など、改定案の内容が明らかになりました。【特定施設入居者生活介護】の介護報酬改定について、単位数や算定要件の詳細を一覧でお知らせします。
要介護1:現行 536単位 ⇒ 改定後 538単位
要介護2:現行 602単位 ⇒ 改定後 604単位
要介護3:現行 671単位 ⇒ 改定後 674単位
要介護4:現行 735単位 ⇒ 改定後 738単位
要介護5:現行 804単位 ⇒ 改定後 807単位
要介護1:現行 535単位 ⇒ 改定後 542単位
要介護2:現行 601単位 ⇒ 改定後 609単位
要介護3:現行 670単位 ⇒ 改定後 679単位
要介護4:現行 734単位 ⇒ 改定後 744単位
要介護5:現行 802単位 ⇒ 改定後 813単位
要支援1:現行 181単位 ⇒ 改定後 182単位
要支援2:現行 310単位 ⇒ 改定後 311単位
※単位数はすべて1日あたり
新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として、全てのサービスについて、2021年4月~9月末までの間、基本報酬に0.1%上乗せとなります。
介護に関わる職員の認知症対応力を向上させていく観点から、特定施設入居者生活介護では人員配置要件について、一部改正されます。
・算定要件の一つである、認知症ケアに関する専門研修(※1)を修了した者の配置について、認知症ケアに関する専門性の高い看護師(※2)を加算の配置要件の対象に加える。
※1:認知症ケアに関する専門研修・認知症専門ケア加算(Ⅰ)…認知症介護実践リーダー研修・認知症専門ケア加算(Ⅱ)…認知症介護指導者養成研修
※2:専門性の高い看護師・認知症看護認定看護師・老人看護専門看護師・精神看護専門看護師・精神科認定看護師
中重度者や看取りへの対応の充実を図る観点から、「看取り介護加算」が「看取り介護加算Ⅰ・Ⅱ」になり、算定要件の見直しと、31日以前の評価が追加されます。また、看取り期において夜勤または宿直により看護職員を配置している場合の新たな評価区分が設けられます。
死亡日45日前~31日前… 72単位/日(新設)
死亡日30日前~4日前… 144単位/日(変更なし)
死亡日前々日、前日… 680単位/日(変更なし)
死亡日 …1,280単位/日(変更なし)
・「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うこと
・看取りに関する協議の場の参加者として、生活相談員を明記する
死亡日45日前~31日前… 572単位/日
死亡日30日前~4日前… 644単位/日
死亡日前々日、前日… 1,180単位/日
死亡日 …1,780単位/日
加算Ⅰの算定要件に加え、看取り期において夜勤または宿直により看護職員を配置していること
ICTの活用等により、外部のリハ専門職等が事業所を訪問せずに、利用者の状態を把握・助言する場合の評価区分が新設されます。現行通り、外部のリハ専門職等が事業所を訪問する場合は、「生活機能向上連携加算(Ⅱ)」(200単位/月)が適用されます。単位数の変更はありません。
生活機能向上連携加算(Ⅰ)…100単位/月(新設)
・訪問・通所リハビリテーションを実施している事業所またはリハビリテーションを実施している医療提供施設(病院にあっては、許可病床数200床未満のもの又は当該病院を中心とした半径4キロメートル以内に診療所が存在しないものに限る)の理学療法士等や医師からの助言(アセスメント・カンファレンス)を受けることができる体制を構築し、助言を受けた上で、機能訓練指導員等が生活機能の向上を目的とした個別機能訓練計画を作成等すること
・ 理学療法士等や医師は、通所リハビリテーション等のサービス提供の場またはICTを活用した動画等により、利用者の状態を把握した上で、助言を行うこと
・加算ⅠとⅡの併算定は不可・加算Ⅰは3月に1回の算定が限度
より利用者の自立支援等に資する個別機能訓練の提供を促進する観点から、新たな評価区分が設けられます。
個別機能訓練加算 ⇒ 個別機能訓練加算(Ⅰ):12単位/日(現行のまま)
個別機能訓練加算(Ⅱ):20単位/日(新設)
・加算Ⅰを算定している利用者について、個別機能訓練計画の内容等の情報を厚生労働省に提出し、機能訓練の実施に当たって当該情報その他機能訓練の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用すること(CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用)
・加算ⅠとⅡの併算定は可能
介護職員等による口腔スクリーニングの実施を評価する観点から、現行の「栄養スクリーニング加算」が見直され、「口腔・栄養スクリーニング加算」が新設されます。
<現行>栄養スクリーニング加算:5単位/回⇒<改定後>口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ):20単位/回(新設)口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ):5単位/回(新設)
算定要件は以下①②の2点です。このうち、加算Ⅰは①②のいずれも適合すること、加算Ⅱは①または②のどちらかに適合することが求められます。加算Ⅱは、併算定の関係で加算Ⅰが取得できない場合に限り取得可能です。また、加算Ⅱの算定は6月に1回が限度です。
① 当該事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の口腔の健康状態について確認を行い、当該利用者の口腔の健康状態に関する情報を、当該利用者を担当する介護支援専門員に提供していること
② 当該事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の栄養状態について確認を行い、当該利用者の栄養状態に関する情報(当該利用者が低栄養状態の場合にあっては、低栄養状態の改善に必要な情報を含む)を、当該利用者を担当する介護支援専門員に提供していること
CHASE・VISITへのデータ提出とフィードバックの活用により、PDCAサイクルの推進とケアの質の向上を図る取り組みを推進する観点から、「科学的介護推進体制加算」が新設されます。
科学的介護推進体制加算…40単位/月(新設)
①入所者・利用者ごとの心身の状況等の基本的な情報を、厚生労働省に提出していること
②サービスの提供に当たって、①に規定する情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること
なお、2021年度より、CHASE・VISITを一体的に運用するにあたって、科学的介護の理解と浸透を図る観点から、以下の統一した名称が用いられる予定です。
科学的介護情報システム「LIFE(ライフ)」(Long-term care Information system For Evidence)
特定施設入居者生活介護が「ADL維持等加算」の対象サービスとして追加されます。
<現行>ADL維持等加算(Ⅰ):3単位/月 ⇒<改定後>30単位/月
<現行>ADL維持等加算(Ⅱ):6単位/月 ⇒<改定後>60単位/月
①利用者(当該事業所の評価対象利用期間が6月を超える者)の総数が10人以上であること
②利用者全員について、利用開始月と、当該月の翌月から起算して6月目(6月目にサービスの利用がない場合はサービスの利用があった最終月)において、Barthel Indexを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省に提出していること(CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用)
③利用開始月の翌月から起算して6月目の月に測定したADL値から利用開始月に測定したADL値を控除して得た値に、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じて一定の値を加えたADL利得(調整済ADL利得)の上位及び下位それぞれ1割の者を除く評価対象利用者のADL利得を平均して得た値が、1以上であること
・加算Ⅰの①と②の要件を満たすこと
・評価対象利用者のADL利得を平均して得た値(加算Ⅰの③と同様に算出した値)が2以上であること
加算Ⅰ・Ⅱの併算定はできません
サービスの質の向上や職員のキャリアアップを推進する観点から、新たな評価区分の新設と区分の統合が行われます。
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)…22単位/日(新設)
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)…18単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅲ)…6単位/日
・加算Ⅰは、介護福祉士が70%以上、または、勤続10年以上の介護福祉士が25%以上のいずれかに該当し、サービスの質の向上に資する取組を実施していること
・加算Ⅱは、介護福祉士が60%以上であること
・加算Ⅲは、介護福祉士が50%以上、または、常勤職員が75%以上、または、勤続7年以上の職員が30%以上、のいずれかに該当すること
入居者の実態に合った適切な評価を行う観点から、「入居継続支援加算」について、「たんの吸引等を必要とする者の割合が5%以上15%未満」の場合の新たな評価区分が設けられます。
入居継続支援加算 ⇒ 入居継続支援加算(Ⅰ):36単位/日(現行のまま)
入居継続支援加算(Ⅱ):22単位/日(新設)
・社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第1条各号に掲げる行為(※1)を必要とする者の占める割合が利用者の100分の5以上100分の15未満(5%以上15%未満)であること
・ 介護福祉士の数が、常勤換算方法で、利用者の数が6またはその端数を増すごとに1以上(※2)であること
※1…①口腔内の喀痰吸引、②鼻腔内の喀痰吸引、③気管カニューレ内部の喀痰吸引、④胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、⑤経鼻経管栄養
※2…テクノロジーを活用した複数の機器(見守り機器、インカム、記録ソフト等のICT、移乗支援機器)を活用し、利用者に対するケアのアセスメント評価や人員体制の見直しをPDCAサイクルによって継続して行う場合は、当該加算の介護福祉士の配置要件を「7またはその端数を増すごとに1以上」とする
処遇改善加算や特定処遇改善加算の職場環境等要件について、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、以下の取り組みがより促進されることが求められます。
・職員の新規採用や定着促進に資する取り組み・職員のキャリアアップに資する取り組み・両立支援・多様な働き方の推進に資する取り組み・腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取り組み・生産性の向上につながる取り組み・仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取り組み
職場環境等要件に基づく取り組みの実施について、当該年度における取り組みの実施が求められます。
小規模事業者を含め事業者がより活用しやすい仕組みとする観点から、平均の賃金改善額の配分ルールについて、以下の見直しが実施されます。
・「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」
⇒「より高くすること」に見直し
つまり、「2倍以上」という制限がなくなり、より柔軟な配分が可能となります。
介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)については、上位区分の算定が進んでいることを踏まえて廃止されます。その際に、2021年3月末時点で同加算を算定している介護サービス事業所については、1年の経過措置期間が設けられます。
引用:第199回社保審・介護給付費分科会「資料1令和3年度介護報酬改定の主な事項」、「参考資料1令和3年度介護報酬改定における改定事項について」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。