介護事業所が働き方改革に対応するための労務管理のポイントについて、第5回目は「賃金・賞与のポイント①介護事業所における賃金、賞与の経営的視点」を取り上げます。
賃金とは、使用者(会社側)が労働者に対して、労働に対する報酬として支払う対価のことをいいます。 労働基準法では「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています。
これまでもお伝えしてきた通り、私は、人事労務コンサルティングの場面で職員の「労働時間」「賃金」「利益への貢献」についてかなりの時間を要して検証します。
具体的には、「事業所の経営的数値(売り上げ、利益)」と「賃金」の関係についての検証です。
労働者側からすると、賃金や賞与をはじめとした「報酬」を「労働の対価」として受け取ります。会社の求めに応じ(=貢献)10時間労働したので、その対価として報酬を受け取るのです。
労働者は、この報酬について、自身の貢献に見合うものを受け取れているかどうかを重視します。
例えば、職場で事業所の利益に一番貢献しているにも関わらず、貢献度合いが低い職員と報酬が同じであると、モチベーションに影響しますし、法律や制度で定められているルールを逸脱している報酬(例えばサービス残業)であると、会社に不審を抱き、然るべき行動に移すことに繋がります。
私自身、賃金は、経営において、労使共に結果を示す1つのバロメーターであり、企業の精神であると考えています。だからこそ、会社側においても、労働者においても賃金に対する“在り方”がとても重要なのです。
介護事業所における人件費率(売り上げに占める人件費の割合)は60〜70%、中には80%近くの事業所もありほかの産業と比較して高くなっています。
賃金は、経営改善を図る上でアプローチすべき数字の中でも、蔑ろにできません。 そのため、その賃金には、経営状況が反映された数字と、会社の思い、経営方針、行動指針などの実践と達成の要素が盛り込まれていることが重要です。
「世間相場の賃金を払っていれば大丈夫」という考えでは、いずれ経営は行き詰まります。
そもそも、保険者の指定を受けている介護サービスにおいては、売り上げを伸ばすことには、ある種の限界があります。
株式会社オーバー代表取締役。拓社会保険労務士事務所代表。社会保険労務士、社会福祉士。 社会保険労務士事務所に入所。医療・福祉業界含め数多くの企業を担当。組織づくり、チーム運営、マーケティング、IT 活用、仕事と家庭の両立を軸とした人事労務コンサルティングで好評を得る。 平成28年会社設立。平成29年1月訪問看護ステーションシンプル、同年5月生活支援サービスチョイス、同年9月ライフパートナーワン・スタイル、居宅介護支援事業所ワン・スタイル、平成30年8月ライフサポートイメージ(訪問介護事業)を立ち上げる。