厚生労働省は2月、介護保険の給付対象である福祉用具の在り方について検討を始めました。新たに設置された検討会では、「貸与」を基本原則とする介護保険制度上の福祉用具の扱いについて議論するほか、財務相の諮問機関が介護報酬の引き下げを求めている福祉用具貸与のみを位置付けるケアプランの扱いも議題となっています。
厚労省は今回、介護保険制度における福祉用具の貸与・販売種目に関する課題や現状について検討し、根本的な「あり方」を検討する場を設けました。それが、2月17日に初会合が開かれた「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」です。
この検討会が開かれた背景には、財務相の諮問機関・財政制度等審議会が社会保障費を抑制するために、介護や福祉・医療のサービス提供側とは異なった立場から介護保険制度の改革について提言を続けていることがあります。
近年の提言では、以下のように福祉用具の在り方についても踏み込んだ検討や対応を求めています。
・杖や歩行器、手すりなど要介護度に関係なく給付対象となっている品目を貸与ではなく販売とすべき。また、それによって毎月ケアプラン作成時にかかる費用を不要とすることが考えられる。(令和2年11月25日・令和3年度予算の編成等に関する建議)
・ケアマネジメントのうち、福祉用具の貸与のみを行うケースについては、報酬の引き下げを行うなどサービス内容に応じた報酬体系とすることを、2024年度報酬改定において実現すべき。(令和3年5月21日・財政健全化に向けた建議)
また、財制審の提言の中には、ケアマネジャーはインフォーマルサービスの調整を行うだけでは報酬を受け取れないことから、「介護報酬算定のため、必要のない福祉用具貸与等によりプランを作成した」ケアマネジャーが一定数存在したという調査結果が出ていることについても指摘があり、これが問題視されています。
【画像】財政審で示された資料(上、2020年11月2日:下、2021年4月15日開催分より抜粋)
財制審の指摘を受け、2021年度介護報酬改定に向けた検討の場でも保険給付対象となる福祉用具を貸与から利用者による購入への運用の切り替えなどについて、対応が話し合われました。しかし、この議論を進めるには福祉用具の利用者の状態に応じた、”適時・適切な利用”や”安全性の確保”など考慮すべき要素が多く、今後の継続検討事項として持ち越されていました。
今回の検討会では、福祉用具の利用実態をしっかりと把握しながら、現行制度(貸与原則)の在り方や対応について改めて検討を進めていく方針です。
厚労省は初回の主な論点として
・福祉用具貸与と特定福祉用具販売の整理について、介護保険法施行時と現在の状況などのちがいを踏まえ、どのように考えるべきか。また、福祉用具貸与を利用している者に対するケアマネジメントについて、どのように考えるべきか。
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