「急に従業員が退職してしまい、シフトが回らなくなった」 「採算性が悪化を続けている」―。 昨今の厳しい経営環境の中、こうした理由からやむを得ず、訪問介護事業の「休止」を検討されている経営者の方は少なくありません。
再開することを視野に入れて、一時的に事業を休止する際は、行政へ「休止届」を提出する必要があります。
この記事では、訪問介護事業の休止届の書き方や手続きについて、記入例を交えながら解説します。
さらに、事業の休止や廃止を選ぶ前に検討していただきたい「M&A(事業譲渡)」という選択肢についてもご紹介します。
1.訪問介護の「休止届」とは?
「休止届」とは、介護事業所がサービス提供を一時的に停止する際に、都道府県(または市)に届け出る書類で、原則として、厚生労働省が定めた様式「廃止・休止届出書」(別紙様式第一号(七))を使います。
休止届に記載する内容
- 事業所の基本情報
- 休止をはじめる年月日
- 休止する理由
- 届け出時点でサービスを受けている利用者に対する措置
- 休止を予定している期間
事業の休止と廃止の違い
休止は、将来的な事業再開を前提とした手続きを指します。このとき、事業所の「指定」は取り消されないため、体制が整った段階で「再開届出書」を出して営業を再開できます。
一方で、廃止は事業を終了し、指定の取り消しを届け出ることを指します。
2.訪問介護事業を休止するための手続き
訪問介護事業所を休止する際の手続きの流れは、以下の通りです。
①休止予定日の決定と関係者への事前連絡
休止日を決定したら、従業員、利用者やその家族、居宅介護支援事業所などの関係者に連絡します。また、利用者が代わりのサービスを利用できるように居宅介護支援事業所などと連携して、ほかの事業所を紹介するなどの調整をする必要があります。
②自治体が定める必要書類の作成
必要な書類は、管轄の自治体のウェブサイトなどで確認できます。
休止届出書以外に「管理票」や「利用者名簿・移行先リスト」などの提出が必要な場合もあります。
③提出先と提出期限の確認
管轄する都道府県(または市)の介護保険担当課に必要な書類を提出します。
提出期限は介護保険法で休止予定日の1カ月前と定められていますが、詳細は管轄する自治体の案内を確認してください。
届出の方法は郵送や電子申請・届出システムなど自治体が指定する方法で提出します。
書類を提出する際は、事業所に控えを保管しましょう。
訪問介護事業を休止するときの注意点
- 休止を申請できる期間は、自治体によって定められています。休止後、一定の期間が経過しても再開できない場合は廃止の手続きを求められることがあります。
- 電子申請・届出システムで休止届などを提出する場合は、事前にGビズIDの取得が必要です。
- 生活保護法による指定を受けている場合は、別途専用様式で休止届の提出が必要です。
(【画像】東京都【記入例】廃止・休止届出書(様式第一号(七))より)
年月日
書類の提出年月日を記載します。
法人番号
申請法人番号は、国税庁から指定される13桁の番号です。
法人番号が不明な場合は「国税庁法人番号公表サイト」でご確認ください。
サービスの種類
事業を休止するサービス種別を記載します。
同一の事業所番号で複数のサービス種別の指定を受けている場合は複数のサービス種別を記入できます。
※事業所番号が異なるサービス種別の廃止・休止を届け出る場合は、事業所番号ごとに休止届を提出する必要があります。
廃止・休止する理由
休止について、事業計画に基づくなど正当な理由があればそれを記載します。
現にサービス又は支援を受けている者に対する措置
事業を休止する場合、事業所には、利用者を他事業所に移行(紹介)する義務があります。
利用者名と紹介先事業所名が記載されている「移行先リスト」や「利用者名簿」を作成し、休止届と併せて提出します。なお、リストや名簿の様式について自治体の指定がない場合は、任意の様式を用意します。
休止届を提出する際、既に利用者がいない場合は、「利用者なし」と記載します。
休止予定期間
休止申請が可能な期間は自治体によって定められています。なお、自治体が定める最長期間よりも指定有効期間満了日が先に到来する場合は、休止申請できる期間は指定有効期間満了日までとされています
休止中の事業所は、人員、設備及び運営に関する基準を満たしていませんので、指定の更新を受けることができません。したがって、指定の有効期間満了をもって指定の効力を失うこととなり、廃止届を提出しなければならないことになります。
4.訪問介護を再開する時の手続き
休止している訪問介護事業を再開する際は、「再開届出書」を提出します。
省令では、提出期限が再開後10日以内となっていますが、自治体によって届出の期限や方法等について定められているため、詳細は各自治体のウェブサイトをご確認ください。
5.経営が行き詰まったときの選択肢|M&Aという方法も
事業の休止では、固定費が発生し続けたり、従業員や利用者が流出してしまうリスクがあります。
事業の「休止」という決断に至る根本的な経営課題を解決するためには、意欲のある第三者に「事業を譲り渡す(M&A)」という選択肢も存在します。
M&Aのメリットとして
- 従業員の雇用が守られる
- 利用者様へのサービスを継続できる
- 経営者に譲渡益が入る可能性がある
といったことが挙げられますので、休止を考えている場合は、M&Aという選択肢をご検討ください。
6.まとめ|「休止」だけが選択肢ではない
休止届を出すときは、従業員や居宅介護支援事業所へ連絡し、利用者へのサービス提供を継続するための調整などを行う必要があります。
もしも事業の再開が困難だと思っている場合や事業の将来性に不安を感じている場合は、M&Aを活用して利用者や従業員を守るという方法もご検討ください。
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