【2024年度介護報酬改定】過去最多の虐待防止に職員のケアが必要―介護現場のリスクマネジメント巡る検討状況

2023.11.08
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社会保障審議会・介護給付費分科会では2024年度介護報酬改定に向け、全てのサービス事業者の対応が必要な”横断的なテーマ”の検討も進められてきました。

そのうちの一つが「高齢者虐待の防止/介護現場における安全性の確保、リスクマネジメント」です。虐待防止については、複数の立場から職員のサポートが必要であるとの指摘がされています。また、介護施設等には介護事故の発生時に市町村への報告が義務付けられていますが、報告された情報が自治体によって必ずしも活用されていないことが問題視されています。

虐待防止への取り組みの重要性は”基本的な視点”にも明記

”高齢者虐待防止等の取組の推進”は、10月にまとめられた「令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点」にも重要事項として明記されています。

リスクマネジメントの在り方とともに検討が行われた、第224回の介護給付費分科会の検討状況を振り返ります。

高齢者への虐待判断件数が前年度比+24.4%で過去最多

まず、前段の「高齢者虐待の防止」について、厚労省が示していた論点は以下の通りでした。

高齢者虐待をめぐる状況を踏まえ、高齢者虐待防止対策を促進する方策として、どのようなことが考えられるか。

介護サービス事業者への対応としては、2021年度介護報酬改定で運営基準が改正され、すべての介護サービス事業者を対象に、高齢者虐待防止措置が義務付けられました。

具体的には、虐待発生時の対応や発生防止のための委員会の設置、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることについて経過措置付きで義務付けられています。完全な義務化は2024年4月に迫っています。

しかし、2021年度時点での体制整備の状況はサービス種別によって異なっています。

(【画像】】第224回社会保障審議会介護給付費分科会資料5より。以下・同様)

また、検討材料として示されたデータによると、近年の養介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数や、虐待判断件数は高止まり傾向にあります。2021年度調査結果では、虐待判断件数が対前年度に比べ24.2%増加し、過去最多であったことも明らかにされました。

また、「身体拘束」についても検討の俎上に載りました。

国はこれまでに、介護・高齢者福祉における身体拘束廃止に向けた施策を継続的に行っています。

  • 平成12年の介護保険法施行時に、身体的拘束等の原則禁止を指定基準に規定し
  • 平成18年度に介護報酬上、身体拘束廃止未実施減算(5単位/日減算)を新設
  • 平成30年度に身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会の定期的開催と減算率の見直し(10%/日減算)

しかし2021年度の調査結果によると、下記のような課題が残っていることも明らかになっています。

  • 「養介護施設従事者等による虐待」を受けている高齢者のうち、2割から3割程度の高齢者が、「緊急やむを得ない場合」に規定されている手続きを経ていない身体的虐待に該当する身体的拘束等を受けている
  • 運営基準により身体的拘束等が原則禁止とされている介護保険施設・事業所について、身体的拘束等の適正化に関する体制整備の状況が、いずれの項目も8割~9割程度となっている

虐待発生の時間帯に基づく人員配置緩和の検討や職員のケアを―委員の意見

この日の検討で、全国老人福祉施設協議会の古谷忠之委員は、養介護施設従事者による虐待の主な発生要因について、「知識や介護技術の問題、ストレスや感情コントロールの問題が多い」点に着目しました。「虐待防止には認知症や介護への知識を深めるとともに、業務への負担軽減を図ることが重要」と指摘しています。

また、全国老人クラブ連合会の正立斉委員は、「虐待の発生事案の実態を把握し、いつ、どこで、誰が誰に、なぜ、どのように、といった詳細な情報を各サービス事業所に提供し、ケーススタディ等に役立てることが重要だ」と強調しました。

「例えば夜間に身体的な虐待などが行われているのであれば、(人員配置基準等の)議論の前提になるだろう。積極的に調べてほしい」と、介護報酬改定に向けた要件緩和等の検討を進める上で、虐待発生事案のより詳細なデータの収集・分析の必要性を提言しています。

他にも複数の委員から、高齢者虐待の発生防止に向け、介護職員のメンタルヘルスケアやカウンセリング環境の整備、擁護者への適時適切なサポートの重要性などについて触れる意見が出ています。

介護事故防止の実態収集も「活用していない自治体」は約3割

次に、「介護現場における安全性の確保、リスクマネジメント」の検討状況です。厚労省の示した論点は以下の通りです。

  • 介護現場の安全性の確保について、事故の発生予防・再発防止の推進の観点から、事故情報の一元的な収集・分析・活用や、介護保険施設以外の介護サービスにおける事故防止対策のために、どのような方策が考えられるか。

現行のルールでは介護施設等の運営基準等において、入所者に対するサービス提供により何らかの事故が発生した場合は、速やかに市町村に報告するよう定められています。

これに関連し、市町村に対する事故情報の集計・分析の有無に関する調査結果では、「介護事故の件数を単純集計している」が59.3%と最多。「集計や分析は行っていない」との回答も27.8%ありました。

活用方法については、「介護事故報告を提出した施設に対して指導や支援を行うために活用する」が49.6%だったものの、「活用していない」との回答も27.2%にのぼりました。

施設向けのアンケート調査結果では、介護事故防止や再発防止に関する市区町村からの支援について、「市区町村からの支援は得ていない」と回答した施設が59.0%と、約6割を占める結果が出ています。

こうした現状に対し、高齢社会をよくする女性の会の石田路子委員は、「介護事故についての報告がされているにも関わらず、集計されているだけでそれ以上のものが現場に返ってきていない」と指摘。「事故の情報は集計のみならず、集約・分析し、フィードバックし、さらには情報の公開も積極的に進めていく必要があるのでは」と意見を述べました。

また、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、「現行の事故報告の制度では活用が十分にできていない」と言及し、現行の報告対象を以下の通り変更する案を提示しました。

①死亡に至った事故→これまで通り報告対象とするべき

②医師の診断を受けなんらかの治療を受けたもの→医師の診断を受け、医師が重大事故と判断したもの

東委員は「介護現場や行政の負担も軽くなり、集計・分析・活用も格段に進む」ものとしています。

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