介護の採用~定着まで支援する株式会社Blanket秋本氏の経営哲学

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【今回インタビューした経営者プロフィール】

秋本 可愛 あきもと・かあい

株式会社Blanket 代表取締役

平成2年生まれ。大学生の時介護現場でのアルバイトを通し「人生のおわりは必ずしも幸せではない」現状に課題意識を抱き、2013年(株)Join for Kaigo(現、(株)Blanket)設立。「全ての人が希望を語れる社会」を目指し介護・福祉事業者に特化した採用・育成支援事業や人的課題を解決を目指す「KAIGO HR」を運営。

日本最大級の介護に志を持つ若者コミュニティ「KAIGO LEADERS」発起人。2017年東京都福祉人材対策推進機構の専門部会委員就任。第11回ロハスデザイン大賞2016ヒト部門準大賞受賞。第10回若者力大賞受賞。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。2021年よりNHK中央放送番組審議会委員に就任。

介護に若手人材が興味をもち、活躍するような支援がしたいと思い起業

現在の事業内容を教えてください

今期で9期目になる介護の人材不足へのソリューションサービスとして介護の採用、育成、定着の支援をしています。ご要望によっては、コンサルティングや採用ツール、ブランディング、人事制度を作ったりしており、幅広くサポートしています。

また、人の確保だけでなく、日本の未来は確実に高齢者が多くなるので、そこに向けて他の企業と一緒に事業開発もしています。

20代で起業されていますが、きっかけは何ですか?

大学を卒業してすぐ独立したのですが、介護に若手人材が興味をもち、活躍するような支援がしたいと思い起業しました。若手の介護コミュニティ「KAIGO LEADERS」を運営していく中で、職場の人間関係や組織課題に直面しました。そこから組織課題に関心をもちはじめ、職場そのものもよりよくしていきたいと思うようになったのがきっかけです。

介護業界を前向きに捉えられていないことこそが課題

これまで介護事業の経営・運営において抱えていた課題は何ですか?

介護は不人気な業界というネガティブな印象と業界人もそのように思っている人が多いということは課題に感じていました。その結果「介護だから人が採れない」と、採用活動を前向きに行えず、効果的な対策が実施できていないがゆえに、人が集まっていないという悪循環に陥っていると思いました。

採用の合同説明会や行政からの要望で採用イベントをプロデュースなどもしましたが、求職者をイベントに集めるだけでは意味がなく、介護・福祉事業者が求職者の方に興味をひかせることができていないということが顕在化しました。小規模の介護事業者は顕著ですが、採用担当がおらず片手間になり、採用も専門性が必要なのにあまり力を注げない環境であることがほとんどでした。

課題ついてはどのような取り組みをされていますか?

まずは小規模の事業者にも参加ができる機会として、厚生労働省の補助事業を通じて採用実践力を高めるプログラム「KAIGO HR RECRUITING LABO.」の企画・実施をしました。一昨年はリアルで開催し、昨年からはコロナの影響もあってオンラインで開催しています。

講義とグループワークを取り入れた全4回(2ヶ月で4回)のプログラムで、自社の採用計画をブラッシュアップすることや、課題に取り組んでもらうなど実践型のプログラムです。

具体的には、採用計画のたてかた、採用マーケティング、ターゲットにあわせた採用の考え方などについて、グループワークを通して学んでいきます。

実際に参加した法人から「応募数が増えた!」「全職種直接応募で採用できるようになった」など、参加する前より採用力があがっているという声を聞いていますので、着実に成果がではじめている実感があります。プログラムを通して前向きに採用活動ができる企業や成功事例を作っていくことを通じて、業界全体の採用活動の活性化に寄与できたらと思っています。

インタビュー風景

感情や体調も含めて配慮しあえるオープンな組織

経営におけるこだわり、大事にしていることは何ですか?

まず社外に対しては、同じ目線で採用のゴールを目指して伴走するというスタンスは大切にしています。

社内に対しては、オープンにできる組織づくりを心がけています。

具体的な取り組みとして、リモートの中でも、コミュニケーションが円滑にできるように、仕事のはじめにチェックインというのをやっています。チェックインというのは、仕事をはじめる上での気持ち、体調のことなどをslack上で共有しています。仕事だからプライベートをもちこんではいけないという考えもあると思いますが、体調や家族のことは仕事のパフォーマンスに大きく影響するので、共有しやすい風土づくりは意識しています。だから、感情や体調も含めて仲間が知ってくれていると安心で、配慮しあえたらよいと考えています。

組織についても、ひとりひとりの役割とミッションを明確にしていて、コミットしやすい、みえやすいようにしています。

その他福利厚生の一環として、オフィスに鍼灸師がきて受けられるようにしています。体のケアをし、社員の体の状況も聞くようにしています。

今後は介護やケアをいろんな産業とコラボして創り上げていきたい

コロナ後の世界と生き残るために重要だと思うことは何ですか?

以前の状態に100%戻るわけではないし、今後感染症以外の災害発生など、予測不可能な社会を生き抜かなければなりません。そんな中で、いかに柔軟に自分たちのこれまでの当たり前をアップデートし続けられるかが重要だと思っています。

実は、コロナの影響で研修がなくなったため、昨期の4月は前年対比で売り上げがかなり落ちました。そんな環境下で、自分の気持ちや会社の経営状況をオープンにして、みんなに相談しました。すると、社員が皆積極的に考え意見をくれ、事業のあり方もどんどん変化させ、結果的に前年の売り上げを上回る結果となりました。

その経験からも、やはり柔軟になりオープンになることに尽きると思います。

今後の方向性はどのように考えていますか?

まずは介護の採用、育成、定着をより多くの企業に対してサポートできるようにしていきたいですね。

中長期的には、これからの持続可能な社会をどう創造するかを考え、行動していきたいです。ますます介護やケアを必要とする人が増える中で、介護職だけで支えるのでは限界を迎えているため、いろんな産業の福祉化が重要だと考えています。様々な企業とコラボして、持続可能な社会のあり方を探求していきたいです。

例えば、ケアワーカーとコラボとして、どうやって社会全体としてケアの総量を高めていけるかの調査や、クリエイティブによって介護の新しい価値や情報を発信していけるよう、新規事業開発やPRにも力を入れていきたいですね。

今進めている新しい取り組みの一つを紹介すると、「#ケアワーカーをケアしよう」というプロジェクトを進めています。コロナの影響で医療従事者が大変だと世間でいわれていますが、同じくらい介護・福祉事業者も大変です。 私のまわりの介護職は外食禁止になっていて、心身ともにストレスを抱えています。

そこに対していろんな企業や個人から寄付を募り、ケアワーカーに支援品をお届けしています。コーセーさんやベアーズさんなどが取り組みに賛同いただき、合計6万人分の支援品が集まっていて、支援品をおくりはじめています。

誰もが介護に様々な立場として関わる時代の乗り越え方のエッセンスは福祉領域に詰まっているように感じています。だからこそ、福祉領域から新たな社会のあり方を提案していけるような取り組みを重ねていけたらと思っています。

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