近頃では、DX(デジタルトランスフォーメーション)というキーワードが広く使われるようになっています。2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が、DXは「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ものであると定義してから、既に18年の月日が流れました。
日本では、18年に経済産業省が作成した「DXを推進するためのガイドライン」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
20年には、情報処理促進法に基づき経営者に求められる企業価値向上に向け実践すべき事柄が「デジタルガバナンスコード」として策定されました。対象は、企業規模、法人・個人事業主の別などにかかわらず広く一般の事業者とされています。当然に、介護事業所も含まれます。
また、22年には、「デジタルガバナンス・コード2.0」が発表され、改訂ポイントがわかりやすく示されています。私が注目しているのはDX認定・DX銘柄の認定において、「ITシステム・デジタル技術活⽤環境の整備に関する⽅策」として、「DX推進のための投資等の意思決定において、コストのみではなくビジネスに与えるインパクトを勘案すると同時に、定量的なリターンの⼤きさやその確度を求めすぎず、必要な挑戦を促進している」ことが重要視されている点です。
さて、みなさまの事業所ではDXの推進に取り組んでいますか。
実は、介護事業所は、とてもDX化が導入し易い業界だと考えています。特に労務DXに手を付けていない介護事業所は、今後より利益の確保が難しくなると断言できます。
DX化に着手しやすいという根拠は、次の3つです。
①勤務シフトが定形的である ②報告書類に記載すべき内容が決まっている ③小規模事業所が多い
勤務シフトが定形的なので、出退勤の記録を簡単にデジタル化できます。その結果、勤怠集計や給与計算といった定型業務の処理時間を大きく減少させることができます。
Office SUGIYAMA グループ代表。採用定着士、特定社会保険労務士、行政書士。1967年愛知県岡崎市生まれ。勤務先の倒産を機に宮崎県で創業。20名近くのスタッフを有し、採用定着から退職マネジメントに至るまで、日本各地の人事を一気通貫にサポートする。HRテックを精力的に推進し、クライアントのDX化支援に強みを持つ。著書は『「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版)』『新採用戦略ハンドブック(労働新聞社)』など