2024年度介護報酬改定に対応するためにリニューアルしたLIFEが、本格的な稼働を開始しています。
10月10日には4月〜8月分のLIFE関連加算を遡って算定するための期間が終了し、通常のスケジュールでの運用が始まりました。
厚生労働省の各種通知やオンライン開催された「説明会」の内容等、最新情報を踏まえて”新LIFE”に関する情報をお伝えします。
”新LIFE”とは?2024年度介護報酬改定後の変更点
LIFEは、質の高い情報の収集・分析をさらに推進していくほか、入力操作の負担を軽減するために24年度に入って段階的に新しいシステムに移行されました。
24年度介護報酬改定以前のシステムと比較したときの、主要な変更点は以下の通りです。
- 入力操作やマニュアルの改善などによる利便性の向上
*新規利用登録手続きの簡便化
*「操作職員」だけでなく「管理ユーザー」も様式情報の入力のような実務的な操作が可能に
*様式情報の登録の際に、LIFEにデータを直接打ち込むほか、CSV 連携での登録を可能にするなどの変更を実施
* リハ・個別機能、栄養、口腔の一体的計画書の出力機能を追加 - アウトカム評価の充実(※詳細は後述)
- 入力項目に関する定義の明確化や、様式間で重複している項目の名称・評価指標の統一
- LIFEへのデータ提出を要件とする加算について、データ提出や評価のタイミングを統一(提出タイミングを「少なくとも3カ月に1度」にする、科学的介護推進体制加算について月末にサービスを利用開始した利用者のデータ提出に猶予期間を設ける(※下記画像参照)
- フィードバックの見直しとそれに伴う提出データの変更(※下記画像参照)
「アウトカム評価の充実」を目的として要件の拡充・変更が図られた加算
24年度改定では、基本的な方針の一つとして「自立支援・重度化防止に係る取組の推進」が掲げられました。
そのための施策としてアウトカムを評価する加算である「褥瘡マネジメント加算」(介護医療院は褥瘡対策指導管理)、「排せつ支援加算」、「ADL維持等加算」について、評価の対象となる条件の拡充などの変更が行われています。
これに伴い、各加算における入力項目等も変更されています。
各加算における変更項目のうち「アウトカム評価の充実」を目的として行われた変更点は以下の通りです。
| 加算等の名称 | 対象サービス | 変更点 |
| 褥瘡マネジメント加算
褥瘡対策指導管理 |
看護小規模多機能型居宅介護
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 地域密着型介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護医療院 |
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| 排せつ支援加算 | 看護小規模多機能型居宅介護
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 地域密着型介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護医療院 |
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| ADL維持等加算 | 通所介護、地域密着型通所介護、
認知症対応型通所介護 特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
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フィードバック帳票の変更
各事業所がサービスの見直しなどに活用するフィードバックの形式も、11月26日から段階的に変更されます。
(*関連情報:vol.1329科学的介護情報システム(LIFE)の令和6年度報酬改定に対応したフィードバックの掲載開始について/24年11月22日発出)
主な変更点は以下の通りです。
- ブラウザ上でフィードバックデータが確認できるようになる(24年度改定以前のフィードバックデータはExcel形式)
- 利用者の状態変化を前回比だけでなく、推移で確認できるようになる<
- 事業者フィードバックにおいて全国の状況と自施設・事業所の状況を比較する際に「サービス種類」や「都道府県」、「平均要介護度」といった要素でデータを絞り込むことができるようになる
(【画像】科学的介護情報システム(LIFE)第1回説明会(介護施設・事業所向け)資料「説明Ⅰ(共通)」より)
厚労省は、この変更によって各施設・事業所が取り組みの効果を確認したり、利用者の特徴を把握することができるようになると説明しています。
なお、リニューアル後のフィードバック画面の操作方法や活用方法等の詳細は、今後、マニュアルや動画が公開されるほか、別途説明会が実施される予定です。
【2024年度介護報酬改定対応版】LIFEでのデータ提出・フィードバックの活用を要件とする加算
LIFEを通じたデータ提出やフィードバックデータの活用を算定要件とする加算の種類は
- 施設サービス
- 通所系サービス
- リハビリテーション関連サービス(通所リハビリ、訪問リハビリ、介護予防通所リハビリ、介護予防訪問リハビリ)
に分けられます。
それぞれの分類に応じた加算の一覧は以下の通りです。
(【画像】科学的介護情報システム(LIFE)第1回説明会(介護施設・事業所向け)資料「説明Ⅰ(共通)」より)
LIFEでのデータ提出・データ活用を算定要件とする加算:施設サービス
LIFE関連の各加算の概要や提出が必要な様式を以下にまとめます。
※算定要件等やデータ提出の範囲など詳細は、厚労省から発出されている告示や留意事項通知または「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)利活用の手引き」(LIFEウェブサイトの操作マニュアル内に掲示)をご参照ください。
| 加算名 | 概要 | 様式 | データ提出の時期・頻度 |
| 科学的介護推進体制加算 (Ⅰ)(Ⅱ) |
入所者ごとのADL、栄養状態、口腔機能、認知症の状況等のデータ提出や活用などを評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 個別機能訓練加算(Ⅱ)(Ⅲ) | 機能訓練指導員の配置、計画的な機能訓練の実施等を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 評価対象者のADL利得値が一定以上の場合を評価 | 特定の様式なし
※利用者のADLデータを入力 |
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| リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)(Ⅱ)
短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ) 理学療法注6注7、作業療法注6注7、言語聴覚療法注4注5 |
入所者ごとのリハビリテーション実施計画書の内容等の情報を提出・活用
/入所者に対して医師や医師の指示を受けた理学療法士等が入所して3カ月以内に集中的なリハビリを実施した場合を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
※短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)は老健に入所した月から3カ月間、少なくとも月に1回 |
| 褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)(Ⅱ)
褥瘡対策指導管理(Ⅱ) |
施設入所時と入所以降の定期的な褥瘡の有無確認・リスクを評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 排せつ支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | 排せつに介護を要する入所者等に対する継続的な評価、データを提出・活用等を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 自立支援促進加算 | 多職種共同で継続的に入所者ごとの自立支援を行った場合を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)
薬剤管理指導の注2 |
入所者の服薬薬剤の総合的な評価、主治医との連携などを評価 |
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以下の月の翌月10日まで
※介護医療院は算定開始月または入所月と処方内容に変更があった月のほか少なくとも3カ月ごと |
| 栄養マネジメント強化加算 | 入所者ごとの継続的な栄養管理を強化して実施した場合を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 口腔衛生管理加算(Ⅱ) | 歯科衛生士による口腔衛生管理等を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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LIFEでのデータ提出・データ活用を算定要件とする加算:通所系サービス
| 加算名称 | 概要 | 様式 | 頻度 |
| 科学的介護推進体制加算 | 入所者ごとのADL、栄養状態、口腔機能、認知症の状況等のデータ提出や活用などを評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 個別機能訓練加算 (Ⅱ) | 機能訓練指導員の配置、計画的な機能訓練の実施等を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| ADL維持等加算 (Ⅰ)(Ⅱ) |
評価対象者のADL利得値が一定以上の場合を評価 | 特定の様式なし
※利用者のADLデータを入力 |
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| 褥瘡マネジメント加算 (Ⅰ)(Ⅱ) | サービス利用開始時と開始以降の定期的な褥瘡の有無確認・リスク評価の実施等を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 排せつ支援加算 (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ) |
排せつに介護を要する入所者等に対する継続的な評価、データを提出・活用等を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 栄養アセスメント加算 | 管理栄養士が介護職員等と共同して栄養アセスメント(低栄養状態のリスクや課題の把握など)を実施した場合を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 口腔機能向上加算(Ⅱ) | 口腔機能が低下している利用者等への口腔清掃の指導や実施、摂食・嚥下機能に関する訓練の指導や実施を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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LIFEでのデータ提出・データ活用を算定要件とする加算:リハビリテーション関連サービス
| 加算名称 | 概要 | 様式 | 頻度 |
| 科学的介護推進体制加算 | 入所者ごとのADL、栄養状態、口腔機能、認知症の状況等のデータ提出や活用などを評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| リハビリテーションマネジメント加算 (ロ)(ハ) | 利用者の状態や生活環境等を踏まえた計画の作成、適切なリハビリテーションの実施、評価、計画の見直しを行い、質の高いリハビリテーションを提供することを評価。 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 介護予防通所・訪問リハビリテーションの月減算の免除に係る要件 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 栄養アセスメント加算 | 管理栄養士が介護職員等と共同して栄養アセスメント(低栄養状態のリスクや課題の把握など)を実施した場合を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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| 口腔機能向上加算 (Ⅱ) /(Ⅱ) イ ・ ロ | 口腔機能が低下している利用者等への口腔清掃の指導や実施、摂食・嚥下機能に関する訓練の指導や実施を評価 |
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以下の月の翌月10日まで
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なお、LIFEへデータ提出する方法は、事業所で導入している介護記録ソフトがLIFEとのデータ連携に対応しているかどうかで変わります。
対応ソフトを導入している場合は、様式等を作成する際に入力したデータをCSVファイル形式で出力し、LIFEに取り込むことができます。
紙で運用している場合や利用しているソフトがLIFE未対応である場合は、LIFEの画面からデータを入力して提出します。
LIFE加算の新たな算定・LIFE導入のために必要な対応
今後、新LIFEのシステム利用を開始する場合は、まず国民健康保険団体連合会が提供する電子請求受付システム(介護)の ID・パスワードを使って利用登録や認証等の作業が必要です。
24年度に入り、新LIFEへの段階的な移行が進められてきましたが、8月以降は、LIFE関連加算を算定するためのすべての様式情報の提出ができるようになっています。
※24年4~7月分の加算を遡って算定するためのデータ提出の受付期間は10月10日に終了しました。
新規登録手続きに関する詳細は、「LIFE導入ガイド」(LIFEウェブサイトの操作マニュアルとして掲示)をご確認ください。
(【画像】科学的介護情報システム(LIFE)第1回説明会(介護施設・事業所向け)資料「説明Ⅱ(共通)」より)
LIFEの利用や関連加算の算定に関するQ&A
最後に、厚労省がよくある問い合わせとしてまとめている内容を掲載します。
①一定期間サービス利用がない場合について
【質問】
- 介護施設・事業所の利用者が入退院をした場合など、一定期間サービス利用がなかった場合、どのようにデータ提出を行えばよいか?
【回答】
※本回答は、算定要件として「サービス利用を開始した日の属する月」や、「サービスの提供を終了する日の属する月」のデータが提出必要となる加算(「科学的介護推進体制加算」、 「褥瘡マネジメント加算/褥瘡対策指導管理(Ⅱ)」等)についての見解。
- 30日未満のサービス利用中断があった場合、加算の算定要件である、サービス利用終了時やサービス利用開始時の情報提出は必要ないものとして差し支えありません。
- 30日以上のサービス利用中断があった場合、加算の算定要件であるサービス利用終了時の情報提出が必要であるとともに、その後サービスの利用を再開した場合には、加算の算定要件であるサービス利用開始時の情報提出が必要です。
※30日以上のサービス利用中断が決定した時点で、「サービス利用終了時」として入院までの期間で最新の評価データをLIFEへ提出。
※この際、加算の算定上提出が必要となる項目全てに対して評価が出来ていなかった場合、評価が出来ている項目のデータをLIFEへ提出することで、加算の算定が可能。
※退院後しばらく期間があいてからサービス利用を再開した場合、サービス利用を再開した時点で 「サービス利用開始時」としてLIFEへデータを提出。
※退院後、サービス利用再開がない場合、サービスの利用があるまではデータ提出を行わない。
- サービス利用者が死亡した場合、死亡した月における情報を「サービス利用終了時」の情報として提出します。
※ 死亡により把握できない項目が有った場合は、把握できた項目のみ提出して差し支えない。
(【画像】科学的介護情報システム(LIFE)第1回説明会(介護施設・事業所向け)資料「説明Ⅲ(介護施設・事業所)」より)
②区分変更申請時のデータ提出について
【質問】
- 利用者が要介護度の区分変更申請を行っている場合、どのようにデータ提出すればよいか?
【回答】
- 当該利用者については、要介護度が確定し次第、速やかにデータを提出します。
- ただし、データの提出が困難であった理由について、介護記録等に明記しておく必要があります。
- なお、要介護認定の申請期間中については、算定要件を満たしていれば、遡って算定を行うこと
③要支援/要介護切り替え時のデータ提出について
【質問】
- 介護施設・事業所の利用者が要支援から要介護に変更となった、 あるいは要介護から要支援に変更になった場合、 どのようにデータ提出をすればよいか?
【回答】
- 利用者の要介護度が要介護から要支援に変更となった場合、あるいは要支援から要介護に変更となった場合、LIFEにおいて再度利用者登録が必要です。
- 要介護度が確定する以前に登録されたデータは、要介護度の確定後に登録した新たな利用者情報に紐づけて再度登録してください。
④データ提出頻度の切り替えタイミングについて
【質問】
- 令和6年度介護報酬改定で、データ提出頻度が3か月に1回に変更されたが、報酬改定以前からデータの提出を行っていた場合、どのタイミングで提出頻度を切り替えればよいか?
【回答】
- 科学的介護推進体制加算を算定する際に提出が必須とされている情報について、令和6年度介護報酬改定で「少なくとも6か月に1回」から「少なくとも3か月に1回」に見直されました。
- このため、25年4月(一部サービスは24年6月)以降は、少なくとも3か月に1回データを提出することが必要です。
- なお、24年4月以降サービス提供分については24年度介護報酬改定に対応した様式情報を提出します。
⑤データ提出タイミングの調整について
【質問】
- 新規利用者がサービスの利用を開始した時などに、データ提出期間を調整することで、他の利用者と提出タイミングを合わせてもよいか?
【回答】
- LIFEの活用が要件となっている各加算では、事務連絡「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに 事務処理手順及び様式例の提示について」において、 LIFEにデータ提出を行う頻度が定められています。
- 例えば、科学的介護推進体制加算では以下のように定められています。
利用者等ごとに、アからエまでに定める月の翌月10日までに提出すること。
(中略)
ア 本加算の算定を開始しようとする月においてサービスを利用している利用者等(以下「既利用者等」という。) については、当該算定を開始しようとする月
イ 本加算の算定を開始しようとする月の翌月以降にサービスの利用を開始した利用者等(以下「新規利用者等」 という。)については、当該サービスの利用を開始した日の属する月(以下、「利用開始月」という。)
ウ ア又はイの月のほか、少なくとも3月ごと
エ サービスの利用を終了する日の属する月
- 定められた提出頻度を満たす範囲で、データ提出タイミングを調整することは可能です。
- 例えば、1月・4月・7月・10月に科学的介護推進体制加算のデータ提出を行っている事業所において、6月に新たな利用者Aがサービス利用開始した場合、
– サービス利用開始した6月のデータ提出を7月10日までに実施
– 事業所としてのデータ提出月である7月のデータ提出を8月10日までに実施
というように、事業所における運用に合わせて、利用者Aのデータ提出間隔を調整することができます。
⑥原則必須の考え方について
【質問】
LIFEシステム画面に表示される「原則必須」とはどのような意味か?
【回答】
- LIFEシステム画面に表示される「原則必須」は、事務連絡「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」において、 加算算定のためにLIFEへの提出が定められている項目を指します。
- ただし、やむを得ない場合と判断される場合には、空欄として提出することが認められます。
※ 「やむを得ない場合」は以下が該当します。
– 通所サービスの利用者について、情報を提出すべき月において、当該月の中旬に評価を 行う予定であったが、緊急で月初に入院することとなり、当該利用者について情報の提出ができなかった場合
– データを入力したにも関わらず、システムトラブル等により提出ができなかった場合
- 提出する情報についても、例えば、全身状態が急速に悪化した入所者について、必須項目である体重等が測定できず、一部の情報しか提出できなかった場合等であっても、事業所・施設の 利用者又は入所者全員に当該加算を算定することが可能です。
- ただし、情報の提出が困難であった理由について、介護記録等に明記しておく必要があります。