小池百合子東京都知事、英国労働党のダン・ジャービス氏、米国保健省長官(当時)のトーマス・プライス氏・・・・。国内外の著名政治家がこぞって視察に訪れ、英国の日刊新聞「The Times」も取材に訪れた特別養護老人ホームが東京の下町・新富町にあります。社会福祉法人シルヴァーウイングが運営する「新とみ」がそれ。職員の負担軽減を目的に30種類以上もの介護ロボットを導入、新しい介護の在り方を追求し続けています。理事長の石川公也さんに介護ロボットの活用法、今後のビジョンについて伺いました。
【画像】石川公也氏
社会福祉法人シルヴァーウイングは、東京都中央区新富町の特養「新とみ」のほか、練馬区の特養「みさよはうす土支田」、練馬若年性認知症サポートセンター、新宿区の特養「みさよはうす富久」など計5つの施設を運営、常勤116名、非常勤71名のスタッフを抱えています。
前述の名だたる政治家や海外メディアが視察に訪れる目的は一つ。シルヴァーウイングが採用している介護ロボットの使用実態を知ることです。実際、同法人では移乗支援を目的とした装着型の「HAL」(CYBERDYNE)や「マッスルスーツ」(イノフィス)、移動支援を目的とした搭乗型の「スカラモービル」(アルバジャパン)、リハビリ支援の免荷式リフト「POPO」(レイマック)、コミュニケーション支援の「PALRO」(富士ソフト)、「Pepper」(ソフトバンク)など、実に幅広い領域で30種類以上の介護ロボットを活用しています。
理事長を務める石川公也さんが介護ロボットの導入推進に舵を切ったのは2013年。東京都産業労働局「課題解決型雇用環境整備事業」に採択されたことがきっかけでした。この事業で、まずは介護記録の電子化に着手。リアルタイムでバイタル情報、介護サービスの記録等を共有できるようにして、朝、夕の申し送り等の情報も社内メールで全職員に周知するようにしました。職員にとっては、記録などの間接業務に労働時間の約3割を割いていましたが、この部分の業務負担を合理化できたと言います。
「介護ロボットには、大きく分けて、排泄・移乗・見守りなどの業務負担を軽減するタイプ、利用者の歩行など自立を支援するタイプ、利用者のコミュニケーションや癒しに役立つタイプの3つがありますが、当法人ではこれらを併用しながら、新しい介護の在り方を模索してきました」と石川さん。
(しんむら・なおこ)一般社団法人ハイジアコミュニケーション代表理事・理事長。公衆衛生学修士。医療健康ジャーナリスト。慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。日経BP社に長く勤務し、シニア女性誌を発行する出版社ハルメクを経て、2020年4月から現職。ヘルスケア領域を中心に各種コンテンツの企画構成・取材・執筆を行いつつ、ハイジアとしては研究機関や大学の研究支援活動の一環として、コホート調査の運営なども請け負う。