現在は“利用者負担ゼロ”であるケアマネジメントへの自己負担導入を巡る議論が、大詰めを迎えています。
12月1日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、前回(11月20日)厚生労働省が示した具体案をもとに意見が交わされました。しかし、「サービスの利用控えにつながる」といった反対意見が依然として大半を占めています。
部会としての取りまとめ期限である年末が迫る中、主張の隔たりは埋まっておらず、落としどころは見えていません。
住宅型有老は“一般的な在宅とは異なる”ケアプランの有料化案の根拠と方向性
介護保険サービスの“給付と負担の見直し”については、政府の「骨太の方針2025」においても、「年末までに結論を得る」ことが明記されています。
次期制度改正に向けたとりわけ重要なテーマとして、本部会では9月以降、3回にわたって俎上に載せられてきました。
このうち、争点となっているのがケアマネジメントへの自己負担導入です。
議論の膠着状態が続く中、厚労省が前回(11月20日)の部会で示した「仮に有料化する場合の具体的な導入案」は、以下の3点です。
【厚労省が提示した具体案(検討用たたき台)】
- 本人の所得状況を考慮して利用者負担を判断する。
- 一部の居住系サービス利用者を対象化 特定施設(特定施設入居者生活介護)以外の「住宅型有料老人ホーム」および「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の入居者に対して、利用者負担を求める。
- 事務費用の実費負担 ICTによる業務効率化が十分に進むまでの間、給付管理などの事務に要する「実費相当分」を利用者負担とする。
(【画像】第130回社会保障審議会・介護保険部会資料1※12月2日差し替え版より。以下同様)
このうち、住宅型有料老人ホームを対象とする理由について厚労省は、一部の有料老人ホームでは要介護者が集まって住み、要介護者へのサービス提供を行う機能があるとして「自宅等の一般的な在宅とは異なる」と説明しています。その上で、ケアプラン作成と介護サービス提供を実施し、一体的に利用者負担の対象としている「施設サービス」や「特定施設入居者生活介護」との均衡を図る方向性を示しました。
有料化の“一部導入案”踏まえても反対意見が多く議論は平行線
1日の会合でもこれまでと同様に反対派が多数となり、賛成派との議論は平行線を辿りました。この日の意見から双方の主張を見ていきましょう。
まず賛成の声では制度の持続可能性や他のサービスとの整合性を重視する内容が中心です。 「介護保険制度の持続可能性を確保する点から導入すべき。有料老人ホームでの利用料負担も施設間での公平性の観点から早急に導入を」(伊藤悦郎委員・健康保険組合連合会常務理事)
「低所得者への配慮を前提に他のサービスと同様、原則として導入すべき」(幸本智彦委員・日本商工会議所社会保障専門委員会委員)
このほか、「相談を受けてもケアプランができてサービスが提供されない限り、ケアマネがタダ働きとなっている。シャドーワークについても無償契約に基づくことが原因」(東憲太郎委員・全国老人保健施設協会会長)とする意見もありました。
利用者・家族、職能団体は依然として強く反対
一方、利用者や家族、職能団体の委員からは有料化について、たとえ一部であっても導入を認めないという意見が相次いで上がりました。
「利用料の発生でケアマネジメントを拒む人が出ないよう10割給付の堅持を」(和田誠委員・認知症の人と家族の会代表理事)
「障害者総合支援法での計画相談支援も利用者負担はゼロで、同法との整合性も留意すべき。また現場からは有料化によって“お金を払っているのだから”とより高い水準のサービスを求められる懸念があると聞く。中立性や公平性を保つことが難しいのでは」 (平山春樹委員・日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局局長)
さらに、「有料老人ホームは不動産契約に基づき家賃を支払う住まいで、施設ではない。施設や特定施設と均衡ということになると“内マネ”のサービス形態である完全囲い込みを有料老人ホームで容認するメッセージになりかねない」(江澤和彦委員・日本医師会常任理事)と危惧する声もありました。
部会では次回から最終取りまとめの議論に入る予定ですが、委員からは、「時間的な制約があるからといって拙速な議論に持ち込まず、歩み寄れる点を見つけるべき」との要望もあります。 丁寧な意見集約にまで今回は至ることができるのか、介護保険部会が担う役割も問われています。




