2027年度の介護保険制度改正に向け、地域包括支援センター(包括)の業務負担軽減が一つの焦点となっています。 10月9日の社会保障審議会・介護保険部会で、厚生労働省は、その具体策として介護予防ケアマネジメントを居宅介護支援事業所(居宅)が直接担う新たな仕組みを提案しました。 これに対し、委員からは居宅のケアマネジャーへのフォローを求める声も挙がっています。
10月9日の同部会では、包括の相談体制を強化するための方策が議題に上がりました。
身寄りのない高齢者の増加に伴い、生活支援や財産管理、身元保証といった需要は今後ますます増える見込みです。 しかし、包括の現場では業務が多岐にわたる上、職員不足も重なり、本来期待される「地域の社会資源の開発」といった役割を十分に行えていないことが指摘されています。
(【画像】10月9日開催の社会保障審議会介護保険部会資料「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」より(以下同様)
厚労省の調査では、包括の職員が業務の中で地域の活動にかける時間は全体の約2割にとどまる一方、介護予防支援と介護予防ケアマネジメントにかかる時間は3割超を占める結果も出ています。 介護予防ケアマネジメントは包括が一部を居宅に委託することもできますが、この委託の調整自体に時間や手間がかかることも課題となっています。そこで、厚労省はこの課題を解消し包括の負担を軽減するため、「介護予防ケアマネジメントを居宅が直接実施」する案を提示しました。
厚労省の提案について東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、「包括は年々業務が追加されており、介護予防ケアマネジメントを居宅が直接実施できる体制はぜひやるべき。ただ居宅のケアマネの業務がかなり増えるため報酬で対応する必要がある」と強調しました。 一方で、ケアマネを代表する立場として出席した小林広美委員(日本介護支援専門員協会副会長)は、「人材不足で居宅のケアマネは要介護者の支援でいっぱいになっている」と現状の厳しさを述べた上で、「シャドーワークや更新研修の在り方を考える必要もある」と訴えました。
包括同様に居宅でも人材確保は課題であり、本施策の具体化に向けてケアマネらの確保対策や業務プロセスの効率化などを含めた議論が必須となりそうです。
ルポライター・社会福祉士。ブリッジ・ジャパン(マーケットニュース執筆)、日本放送協会(N H K)、C Bニュース(医療、介護、障害分野での執筆)などを経てフリーランスに。ライフワークではハンセン病問題を継続取材。