介護事業の大規模化とは?メリット・進め方から成功事例まで解説

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人材不足の深刻化や物価高騰などを受け、介護事業の経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。このような状況下でも全国の利用者に安定してサービスが行き届くよう、国は、事業者の大規模化を推進しています。

この記事では、介護事業者が大規模化を進めるメリットや具体的な方法、実際の成功事例について解説します。また、リスクを抑えつつ効率的に規模を拡大する選択肢としての「M&A」についても詳しくお伝えします。

1.介護事業の大規模化が進められている背景

1-1.国が推進する介護事業の「協働化」と「大規模化」

現在、介護事業者が直面している課題は、冒頭の人手不足や物価高騰に留まりません。

世帯構造の変化に伴うニーズの複雑化や、設備・ICT機器等へのコスト投入の必要性の高まりなど、小規模事業者単独では対応が難しい局面が増えています。

こうした中で、国は介護サービスの供給体制を維持・強化するため、事業の「協働化」や「大規模化」を後押ししています。

なお、協働化とは、同じ地域にある事業所同士や同じ課題を持つ法人同士などが互いに独立性を保ったまま緩やかに連携する形態です。これに対して大規模化とは、特定の法人が介護サービスの売上規模を拡大したり、事業所を増設したりすることを指します。

自力での成長に加え、複数の法人間での合併や事業譲渡(M&A)等を通じて、組織そのものを大きく強固にしていく取り組みも含まれます。

1-2.なぜ今、大規模化が求められているのか

地域に小規模事業所が点在している状態では、採用コストや管理業務が各所で発生し、現場の負担が軽減されにくいという課題があります。大規模化を進めることで総務・経理・人事などのバックオフィス部門を集約できれば、効率的な事業運営が可能になります。

また、効率的な事業運営や間接コストの圧縮で経営基盤が安定することで、ICT機器の導入や処遇改善への積極的な投資もしやすくなります。

2.介護事業者が大規模化を進めるメリット

これからの福祉サービスにおける中長期的な課題やそれを乗り越えるための取り組みについて示す提言書「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」では、全国各地でその地域特性に応じた介護事業の大規模化を進めていくべきだとしています。

(【画像】「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」より)

それでは個々の法人にとって大規模化には、どのような利点があるのでしょうか。

以下、4つの視点で整理します。

①採用力の強化と人材の定着

  • 法人や事業所の規模が拡大することで、適材適所な配置がしやすくなります。
  • 同一法人内で訪問・通所・入所などの多様なサービスを展開している場合、職員の適性や希望に合わせた異動が可能になり、離職防止に繋がります。
  • 多様なキャリアパスが提示できるようになり、成長意欲の高い人材を惹きつけやすくなります。

②経営の効率化とコスト削減

  • 本部機能を一箇所に集約することで、間接部門のコストを大幅に抑制できます。
  • スケールメリットを活用することで、消耗品や備品の一括購入による単価引き下げなどの交渉が行いやすくなります。
  • 使える資金が増えることで、ICT機器や新しい設備の導入そのものがしやすくなります。それによって業務効率化が進めば、生産性向上のための取り組みも加速することができます。

③収益の安定化とリスク分散

  • 特定のサービスや事業所に依存しすぎない経営体制を構築できます。
  • 特定エリアに集中展開することで、スタッフの相互応援や利用者紹介の連携がスムーズになります(ドミナント戦略)。

④研修の実施しやすさの向上と加算の取得

  • 法人全体で質の高い法定研修や専門教育を実施しやすくなり、サービスの質の標準化が期待できます。また、人数や拠点が増えることによって研修の複数開催が可能になれば、職員にとってもスケジュール調整がしやすくなります。
  • 複数の事業所を横断して研修を実施することで、個別の事業所ではハードルが高かった「研修受講を要件とする加算」を取得しやすくなり、結果として収益向上が見込めます。

3.介護事業を大規模化する3つの方法

介護事業の大規模化を実現するには、大きく分けて「自社単独での成長」と「他社との統合」の2つのアプローチがあります。それぞれの特徴と、効率化を進めるための注意点を解説します。

3-1.同一拠点内でのサービスの規模拡大

自社単独での成長を目指す施策のうち、既存の事業所で利用者の定員を増やす方法です。

ただし、職員数や総実労働時間をはじめ、各種費用も増えるため、利用者の獲得人数が少ないと、逆に生産性が低下してしまうリスクもあります。

3-2.法人内での介護施設・事業所の増設

自社単独での成長を目指す施策のうち、介護施設や事業所など新しい拠点を増設する方法です。

認知度を高めたり、ドミナント戦略による地域シェアの拡大が狙えますが、同一拠点内でサービス規模を拡大するときと同様に、単純に施設等を増設するだけでは全体としての生産性は向上しません。

増設と並行して、業務の集約化や管理職等の兼務を進めるといった取り組みによって、費用の削減・運営の効率化を図る必要があります。

3-3.M&Aによる合併や事業承継

既存の他法人が運営する事業所を譲り受ける方法です。

ゼロから拠点を立ち上げる場合と異なり、既に働いているスタッフや、契約している利用者をそのまま引き継ぐことができるのが最大の利点です。

拠点開設に伴う採用リスクや稼働率向上までの期間を短縮できるため、短期間で大規模化のメリットを享受できます。

4.介護事業の大規模化による成功事例

厚生労働省が公開している事例集から、事業の大規模化や多角化によって、経営基盤の強化に成功した5つの事例を紹介します。

4-1.【専門性の活用】職員のスキルを活かして介護保険外サービスへ事業展開した事例

機能訓練に特化したデイサービスを運営する法人が、理学療法士らのスキルを活かして自費リハビリやマッサージなど保険外サービスに進出した事例です。

  • 取り組み:デイサービスを広い建物に移転し、中重度者のニーズにも対応できる自費サービスを同じ事業所で提供する業態に変更した。
  • 大規模化の効果:既存事業と合わせてスケールメリットを活かせるようになり、効率的な運営が実現。地域へのPR力も向上した。

4-2.【リスク分散】障害福祉サービスへの迅速な参入で収益を安定化させた事例

訪問介護事業所の開業直後のタイミングで、間髪入れずに障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護)へと事業を拡大した事例です。

  • 取り組み:訪問介護立ち上げから2カ月たったタイミングで障害福祉へ展開を決意。建物や人員を共有することで、追加コストを抑えながら多角化を実現した。
  • 大規模化の効果:入院や施設などへの入居による契約の終了が多い介護事業と比べ、利用期間が比較的長い障害福祉サービスを取り込んだことで法人の収益が安定した。スタッフが双方の現場を経験することで、スキルアップにつながったほか、柔軟な人員配置も可能になった。

4-3.【採用力強化】企業内保育所設置をきっかけに保育事業に進出した事例

有料老人ホームの運営法人が、自社スタッフ向けの事業所内保育所を開設したことをきっかけに、保育事業に参入した事例です。

  • 取り組み:スタッフの福利厚生からスタートした事業所内保育を地域に開放することで保育事業へ進出。その後の認可保育所や学童保育、配食サービスといった幅広い事業展開の礎を築いた。
  • 大規模化の効果:「子育てしながら働ける」という安心感が広まり、若い職員の採用・定着に寄与した。また、地域住民との接点が増えたことで信頼関係が深まり、自治体からの要望にも応えられる体制を構築につながった。

4-4.【多角的成長】現場の声を拾い上げ、10年で収益を5倍に拡大した事例

特別養護老人ホームと保育事業を運営していた法人が、10年間で介護・障害・教育事業へと積極的に多角化した事例です。

  • 取り組み:現場が把握した地域ニーズを基に、居宅介護支援、通所事業所、福祉専門学校などを順次立ち上げた。
  • 大規模化の効果:10年前と比較して職員数で約4倍、総収入で約5倍の成長を達成。特に居宅介護支援を起点とした情報収集により、地域ニーズに即した迅速な経営判断が可能になった。

4-5【M&A・合併】歴史ある法人の吸収合併でコストを最適化した事例

交流のあった法人同士が、一方の経営立て直しを機に合併。300人規模の法人を1,300人規模の大規模法人が吸収し、ガバナンスを再構築した事例です。

  • 取り組み:公設民営で長い歴史を持つ法人(職員数300人規模)を20年来の実績ある大規模法人(同1300人規模)が吸収する形で2法人が合併。合併後はセントラルキッチンの導入による食事コストの削減を図った。また、海外人材の受け入れ部署の新設や災害時の職員派遣など、組織の規模が大きくなったからこそできる取り組みも始めた。
  • 大規模化の効果:合併前の法人間の垣根を超えた人事異動により、職員が双方の文化や理念を知ることで運営体質の改善につながったほか、職員の仕事に対する意識改革が進んだ。また、財政規模が拡大し、単独では難しかった地域貢献が可能になった。

5.M&Aによる事業の大規模化を成功させるためのパートナー選びのポイント

介護事業には、介護保険制度に沿って細かい規制やルールが存在しています。

そのため、大規模化を目的としたM&Aを検討する際は、こうした介護業界特有の専門知識を持つ仲介事業者を選ぶとスムーズです。

業界や各サービスの実態に対する理解は、マッチングの精度や事業価値の算定、事業売買に関わる条件の摺り合わせに影響します。これは、売り手と買い手双方が納得できるM&Aを実現するためのポイントです。

介護業界のM&A仲介の経験や実績が十分あるかどうかや、業界内に十分なネットワークがあるかどうかで判断することができます。

そのほかに、信頼できる仲介事業者を選ぶためのポイントとして、

  • 成約後を見据えたサポートやサービスがあるか
  • 仲介手数料の透明性があるかどうか
  • M&A支援機関登録制度に登録している事業者であるか

などが挙げられます。

6. まとめ

深刻化する人材不足やコスト増を乗り越えるために、経営母体や事業の大規模化は、有力な選択肢です。

自社だけで拠点を増やすのは時間がかかりますが、信頼できる仲介事業者と共にM&Aを活用することで、リスクを抑えつつスピーディーに経営基盤を強化することが可能です。

「自社の場合は、どのような大規模化が最適なのか?」「まずは他社の成功事例をもっと詳しく知りたい」とお考えの方は、ぜひ一度、介護業界に特化した当社のM&A支援サービスへご相談ください。

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