厚生労働省は7月20日に社会保障審議会 介護給付費分科会をオンラインで開催。2021年度の介護報酬改定に向けて、通所介護・通所リハビリテーションなど、個別のサービスについての議論が進みました。2018年度の介護報酬改定で創設された加算の見直しについて意見が集まっています。
利用者のADLの維持・改善の成果を評価するADL維持等加算は、2018年度の介護報酬改定で新設されました。算定率は非常に低く、(Ⅰ)(Ⅱ)を合計しても、通所介護で0.3%、地域密着型通所介護で0.1%となっています。
要件が煩雑で算定にかかる事務負担が大きいのに対して、利用者1人につき6単位/月(または3単位/月)と、単位数が低いことが理由のひとつです。委員からは、単位数の見直しについて、意見が集まりました。
算定のためには、機能訓練指導員がバーセルインデックス(Barthel Index)を用いてADLの評価を行う必要があります。全国老人福祉施設協議会の小泉委員は、科学的介護のためのデータベース「CHASE」にもバーセルインデックスの評価項目が含まれることに触れ、ADL維持・改善の成果に対する評価と、データの収集・提出の2つの局面から評価してはどうかと提案しました。
2018年度の介護報酬改定で新設された「生活機能向上連携加算」の算定率は、通所介護で3.9%、地域密着型通所介護で1.1%、認知症対応型通所介護で2.5%と低くなっています。理由として大きいのは、外部のリハビリテーション専門職との連携が難しいことです。
算定するには、リハビリを実施している医療施設や事業所のリハ専門職が通所介護事業所を訪問するなどの要件があります。リハ専門職の確保が難しい地域では特に、このような連携をするための提携関係を結ぶことは難しく、算定の大きなハードルになっています。
同様の加算で、訪問介護や小規模多機能では、リハ専門職が事業所を訪れずに、テレビ電話などWEB会議のツールを使って利用者の状況を把握し、助言を行うことが認められています。新型コロナウイルス感染症対策の観点もあり、通所介護についても同様に算定要件を緩和をしてはどうか、という意見が集まりました。
また、地域の専門職が施設・事業所の垣根を超えて活躍できる環境づくりのために、地域への貢献を評価するインセンティブを新たに設けてはどうか、という意見もあがりました。
2018年度の介護報酬改定の影響を調べた調査によると、通所リハビリテーションの収支差率はマイナス2.6%と全サービスの中で最も悪化しています。特に大規模な事業所の収支状況が悪化している状況です。
委員からは、事業所の大規模化を進める流れに逆行しているなどの意見があがり、通常規模型、大規模型(Ⅰ)、大規模型(Ⅱ)の基本報酬の差について、緩和・廃止を求める意見もありました。
今後も介護給付費分科会では、サービス種別ごとの議論が進みます。介護報酬に直結する議論の動向をチェックしておきましょう。
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年7月22日掲載のものです。
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